見出し画像

ブライダルチェックでまさかの排卵障害

夫と2人で行った初回のブライダルチェックの数日後、ピルの消退出血が始まったので採血のためにクリニックをひとり再訪問。

少しして採血に呼ばれた。前回とは違う看護師さんだったけれど、今回の看護師さんもとても採血がうまくて助かった。「血管細いですね」とまた言われた。どれだけ細いんだろう…人と血管の太さを比べたことがないので全く実感が湧かない。

しばらくした後に検査結果が出たというので呼ばれた。今回は採血だけで、次回また夫と2人で来た時に結果を聞くものだと思っていたので、まさか今日全部の結果を聞けるとは!とややびっくり。

採血で得られた結果を順番に説明され、どれも正常値。ただ「AMH(抗ミュラー管ホルモン」の値が通常よりも高く、私は「多嚢胞性卵巣症候群(たのうほうせいらんそうしょうこうぐん/polycystic ovary syndrome : PCOSと略す)」と診断された。

多嚢胞性卵巣症候群…?

今まで言われたことはありませんか?と先生に聞かれ、知りませんと伝える。聞いたこともない。詳しい説明はわかりやすいHPがたくさんあるのでそちらにお任せするのだが、簡単にいうと、成長途中の卵胞が卵巣にとどまったままになってしまう病気のようだ。

内診の時に、超音波検査の画面を見ながら先生が何か数えているなぁと思っていたら、左右それぞれの卵巣の中に何個卵胞があるかを数えていたらしい。通常は片方あたりで10個未満だそうだが、私の場合は左右それぞれ13個あった。前述の「AMH」の値も、33歳だと中央値が3程度、ピルを飲んでいると25%ほど数値が下がるらしいが、私は9を超えていた。

聞いた瞬間びっくりして固まった。私が、病気?
ただ、思い当たることはたくさんあって、生理がダラダラ続いていつが終わりかわからない、という日々が、初潮からピルを飲み始める前までほぼずーっと続いていた。いわゆる「過長月経」や「月経過多」と呼ばれる状態で、何度か婦人科にも行ったがはっきりとした原因がわからないまま、ここ数年はピルで凌いできたという感じだった。この月経についてはまた別の機会に書きたいと思う。なんせ、めちゃくちゃ辛かったから。毎回思い出すだけでも泣けてくる。

今回クリニックでの問診の際に、ピルを飲む前はずっと過長月経だった、という話をしていたので、先生からは「これが原因のようですね」と言われ、びっくりはしたが、原因がわかった安堵の気持ちも強かった。

この「多嚢胞性卵巣症候群」は、いわゆる排卵障害で、不妊症とまでは言わないが通常の人よりは妊娠はしにくいとのこと。ずっと出血が続いていると、いつ排卵したかがわかりにくいので、子供を望む場合には、不妊治療の第一歩としてよく聞く「タイミング法(排卵日をある程度特定して性行為すること)」から始めて、実際同じ病気でも妊娠する人もいるので安心してください、とのことだった。子供を望んでいない時期は、ホルモンのバランスを整えてくれるピルはとても有効です、とも言ってもらえて安心した。飲んでてよかった…。

まだびっくりした状態でクリニックを出た。

とりあえずお手洗いに寄った。
動揺しすぎて、改めて考えていたらなぜか涙が出た。少し落ち着いて、成城石井でちょっといいオレンジジュースを買って帰った。電車の中では、さっき知った「多嚢胞性卵巣症候群」を検索し、いろんな記事を読んだ。この日は雨だったのだが、駅から家までの道、傘を深めにさして泣きながら家まで辿り着いた。

夜、夫が帰宅し、すべて伝えた。

正直、なんと伝えたらいいのかわからず、でもまぁ今日聞いたことを素直に全部伝えるしかないもんな、と開き直った。

なぜ伝えるのに不安に思ったのか?を後から考えると、やはり本心では子供が欲しいと思っている夫に、「私は子供ができにくいです」と伝えるのは、たとえ私が子供をあまり望んでいなくてもやはり心苦しい。その根底には、「女性として欠陥のある私」「もしかしたら愛情が薄れてしまうのでは?」「離婚…?!」などの不安な気持ちがあったと思う。

そんな私の感情はよそに、夫は「生理不順の原因がわかってよかったね!!」と言ってくれた。よかった。私も本当にそう思う。夫と話して、まずは検査に行こう、とならなかったら、この病気もわからなかっただろう。そこから、詳しくどんなことが私の体の中で起こっているのか説明した。静かにゆっくりと聞いてくれた。

寝る前、どうしても気になって聞いてみた。
「もし子供が欲しくなっても出来にくいということだけど、悲しい気持ちにならなかった?」と聞いたら、「まず不順の原因がわかったことが何より良かったと思うし、そもそも子供は必ずできるわけじゃないからね」と言ってくれた。そうだよね、病気でなくても100%できるわけじゃないもんね。

お互い「ありがとう、愛してるよ」と言って寝た。


と言いながら、私はなかなか寝付けず色々考えた。
なぜ涙が出るのか?自分でも不思議だし、本当は子供が欲しいと思っているのか?とも思ったが、一番は健康に生きている私が病気?という衝撃がある気がする。この様子を何かに例えられないかな、と考えていたが、結局良い例は見つからなかった。

「妊娠・出産」というのは、女性にとって「年齢制限付きのオプション」みたいなもので、同時に「とても喜ばしく、多くの人が望むもの」であると思う。

そもそも「年齢制限付き」のオプション自体が世の中には他にあまりないということに気付く。例えば「医者になりたい!」であれば、できれば現役で医学部に入って…などあるが、かなり努力すれば今からでもなれなくはない。ハードコンタクトレンズ…とかかな?確か、ある程度若くないと作れないと聞いたことがある。でも世の中にはソフトコンタクトレンズやメガネもあるから、替えは利く。ワーキングホリデーもあるけれど、30歳をすぎたら自分のお金でどうにかして海外に行くことはできる。

少し調べたら、職業でいうと、年齢制限(上限)のある職業は、プロボクサー、将棋の棋士、大相撲の力士、競馬の騎手などに代表される公営競技の選手、各種公務員があった。そうか、私はもう騎手になれないのか…とここで知る。上記の職業は、万人がなりたくてもなかなかなれる職業じゃない。

そうなると、女性でほぼ全員が「この年齢までにしか出来ません!以後、出来なくなります!」ということって、やはり妊娠・出産くらい…?
そう思うと、自然と涙が出てくるのもなんとなく納得する。なにせほとんどの女性は、10代の初め頃から40代半ばくらいまで、月経によってずーっと「自分は母親予備軍です」と勝手に刻みつけられているから。ある種の裏切りのような気持ち?勝手に始まって、勝手に病気になって。誰も頼んでいない。一方的に選択肢を剥奪された感じ。

選べるはずのことが選べなくなるかもしれない、という恐怖や不安、悔しさに泣いているのかもしれない。

など、ぼやぼやと考えていたら、気付いたら寝ていた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?