主に二次創作の小説を書いています! ただ今スパイファミリーにハマり中。 気ままに気まぐ…

主に二次創作の小説を書いています! ただ今スパイファミリーにハマり中。 気ままに気まぐれに。〈注意〉捏造のオンパレード。ネタバレあり。作中に登場する人物、国、組織、道具などありとあらゆるもの全て著者の想像の産物です。なんでも許せる方向け。いろんな小説の影響を受けています。

最近の記事

眠りの森のいばら姫 5/5

東国、バーリント 現場に着くと、やはりKGBの極秘部隊がフォージャー家のマンション前で息を潜めていた。どうやら周辺にも広範囲にわたって仲間がうろついているようだ。 「行くぞ」 黄昏は周囲の動きを確かめながら、KGB極秘部隊Cグループのリーダー、ジュピターに続いた。 夜中の二時を回っているため、近隣住民の姿はない。ジュピターはピッキングでほとんど音も立てずにフォージャー家の玄関の鍵を開けると、「サターンは、ポイントBを。マーズはポイントCを捜索しろ」小声で言う。 サターン

    • 眠りの森のいばら姫 4/5

      インド、ボンベイ フランキーとフィオナは、MI6の諜報員の協力で名簿を操作してもらい、無事パーティー会場に潜入することができた。 会場はかなり広くゴージャスな造りで、グラスのぶつかる音、シェイクする音、着飾った女性たちが舞うボリウッドダンスのミュージック、客たちのおしゃべり、笑い声など、ざわめきが混じり合っている。フランキーは目の上の彫りが深く、鼻筋の通った爽やかなイケメンフェイスを装着し、黒色のスーツに黒の蝶ネクタイを合わせていた。フィオナは、ネイビーのスリットが入ったワ

      • 眠りの森のいばら姫 3/5

        東国、バーリント、郊外 翌日、ガーデンが所有する隠れ家にて、二人はアダムを地下室から一階へ運びあげ、目隠しをしたままユーリが警告を与えた。研究員であることもあり、青白い肌に痩せ細った体をしていたため、死人が遺体安置所で息を吹き返したように見える。 「こちらの質問に対して、ふつうの会話レベルの声で正直に答えれば、手荒な扱いはしない。嘘をついたり、ごまかしたり、わめいたり、愚かにも逃げようとしたりすれば、まずは左手から」 ユーリは、アダムに聞こえるよう銃弾を装填する。「撃っ

        • 眠りの森のいばら姫 2/5

          東国、郊外 アーニャは、すんなりと車に乗り込むことに成功した。 男たちの心の声は、ずっと聞こえてきていたが、ロイドが複雑に思考しているのと同じような感じで、内容自体はちんぷんかんぷんだった。バッグからこっそり万年筆を取り出すと、時計回りに二回上部を回す。カチッと小さな音がして、発信機付きの盗聴器が作動した。 アーニャがこの秘密を知ったのは、じぃじにもらってからすぐのこと。授業中に天冠をいじって遊んでいたら、カチッと音がして、目を輝かせた。「これはさいしんのスパイグッズかも

        眠りの森のいばら姫 5/5

          眠りの森のいばら姫 1/5

          西国放送局『本日、西バーリントにて、爆破事件が起きました。少なくとも二十四キログラムのダイナマイトが使用され、スーダム通りのアパートで爆発。上の階と正面が破壊されました。この爆発により二名が死亡、二十五人が負傷。国際テロリストによる犯行とみて、捜査を続けています』 イギリス、ロンドン WISE局長ヘンリー・シュナイダーは、夜九時少し前に、MI6本部ビルに到着し、エレベーターですぐさま長官室へ案内された。落ち着いたブラウンのスーツはたくましい肩のラインにぴったりだが、首が太

          眠りの森のいばら姫 1/5

          秘密警察(SSS)編 4/4

          ロイドが何者かに尾行される話+西国でスパイ任務を終え、帰国したユーリにばったり遭遇する話。秘密警察(SSS)編の最終章です。 東国、バーリント ロイドは精神科医の仕事を終え、新たに任務が入っているかを確かめに向かう道なかだった。異変に気づいたのは、ショーウィンドウに映り込む不自然な人影が視界に入った時。観光マップを片手に、こちらを盗み見ているようだった。サングラスを掛け、中折れ帽を目深にかぶっている。黒いスーツを着た、中性的な佇まいだった。性別だけでなく、年齢も分からない

          秘密警察(SSS)編 4/4

          秘密警察(SSS)編 3/4

          ユーリが西国のスパイになる話です。二つ目の任務! 西国、バンベルト ユーリは、二つ目の任務を果たすべく、バンベルトで開催される安全保障会議に潜入していた。会場は、西の高級ホテル。 NATO首席分析官の部屋の金庫から安全保障に関する極秘文書を盗み出すことが、今回の任務だが、それは夕食会の隙に遂行することになっていた。 お偉い方にほどよくお酒が回ってきた頃、ユーリは気配を消して席を立ち、自室に向かう。窓から外に出て、わずかな淵を伝いながら、ターゲットの部屋に潜入する。サイド

          秘密警察(SSS)編 3/4

          秘密警察(SSS)編 2/4

          ユーリが西国のスパイになる話です。ドキドキの初任務! 西国、西部連邦軍基地 ユーリには、西国のスパイになるための特別な訓練は特に必要なかった。文書の読み方、鍵の開け方、手渡しの方法、西国の方言など任務遂行に必要な技術は、全て身についていたからだ。新たに教えられたことといえば、文書を撮影するカメラの使い方くらいだった。 機密文書の写真を撮るだけ。人を殺すわけではない。朝飯前だ。すんなりと終わらせることができるに違いない。そう確信していたのだが――。 (くそっ、ピッキング

          秘密警察(SSS)編 2/4

          秘密警察(SSS)編 1/4

          ユーリが西国のスパイとなる話です。 アメリカ放送局『ソ連が警戒しているのは、アメリカのミサイル配備です。米欧州軍のジャクソン最高司令官は、ソ連が攻撃すれば、核戦争は不回避だと述べています』 ソ連放送局『ヒステリックに反共産主義を掲げ、アメリカは軍事行動を正当化しています』 東国、バーリント、国家保安局 ユーリ・ブライア。二十歳。表向きは、東国の外務省勤務。だが、裏では秘密警察として、市民の監視及び国内外における諜報活動、反体制分子や外国のスパイ狩りに奔放していた。

          秘密警察(SSS)編 1/4

          10ダルクと子守唄 9/9

          スパイファミリーの小説。テーマは家族愛。最終章です。 翌日。朝風呂を終えたロイドが、包帯が巻かれた手で、がしがし髪の毛を拭いていると、アーニャが走ってきた。 「ちちー!」 しわしわになった制服を見て、ロイドはギョッとした。着替えさせてから寝かせるべきだったか、と内心少し後悔する。 しかし、そんなことはお構いなく、アーニャはロイドの両足に抱きつくと、上目遣いでロイドを見上げた。 「アーニャ、ちちのことあいしてる!ちちは?」 ロイドは微笑みながら、もちろん愛してるよと頭

          10ダルクと子守唄 9/9

          10ダルクと子守唄 8/9

          スパイファミリーの小説です。テーマは家族愛。 50m前方、人の気配。 ロイドは立ち上がった。 精悍な体つきの男が壁に沿って、こちらに向かってきている。真っ暗な空間に、街頭の小さな光しかないため、顔ははっきり分からないが、その腕の中にはアーニャがいるようだった。ピンク色の頭が分かりやすい。ロイドは、やがて近づいてきたその人物を見て、目を見張った。 昨日の夜、バーで隣に座った男だった。 男は、濁ったスカイブルーの瞳と傷だらけの両手を見るやいなや、平手打ちをした。 パンッと乾

          10ダルクと子守唄 8/9

          10ダルクと子守唄 7/9

          スパイファミリーの小説です。テーマは家族愛。 86と数えた時には、お迎えが来てくれていたようだった。ぽんと肩に手を置かれ、目を開ける。 「アーニャちゃん、遅くなってごめんよ」 アーニャはスカイブルーの瞳を見て、目を輝かせた。 「ちちとおなじいろのめっ!」 男は図体に似合わず、優しい笑みを浮かべると、アーニャを持ち上げて、そのまま縦抱きをした。ロイドがいつもしている抱き方だった。 (はじめまして、アーニャちゃん) 男が歩き始めると、アーニャの頭の中に、心の声が流れ

          10ダルクと子守唄 7/9

          10ダルクと子守唄 6/9

          スパイファミリーの小説です。テーマは家族愛。 イーデン校への潜入はたやすい。今まで何度も潜入してきたため、経路もそつなく確保していた。目印は、あの車だ。慣れているとはいえど、やはり校内はかなり広い。捜索場所を頭の中で絞りながら進む。ロイドは防犯カメラを避けるため、地上へは降りず、猫のごとく校舎から校舎へと飛び移りながら移動していた。 最も怪しいと踏んでいた知恵の塔の付近に着くと、ようやく地上へ降り立つ。防犯カメラを意識しながら建物に近づき、ぐるりと周りを回った。車は見当たら

          10ダルクと子守唄 6/9

          10ダルクと子守唄 5/9

          スパイファミリーの小説です。テーマは家族愛。 「アーニャちゃん、アーニャちゃん」 微睡の中で、優しい声が聞こえる。 これは、ゆめ? 恐る恐る目を開けると、黒髪でヘーゼルの瞳をもつ男性が心配そうに、アーニャの顔を覗き込んでいた。 「目が覚めて良かった。突然ごめんね」 テノールボイスが耳に心地よい。全体的にすらりとしていて、引き締まった顔立ちをしている彼は、まさに大人っぽく紳士的な“ダミアン”だった。ダミアンというのがもったいないくらいに。 「じなんににてる。でもじな

          10ダルクと子守唄 5/9

          10ダルクと子守唄 4/9

          スパイファミリーの小説です。テーマは家族愛。 イーデン校、知恵の塔 目を開けると、グレーの天井。 布団からゆっくり体を起こす。制服は着たままだった。 アーニャは、打ちっぱなしの壁に囲まれた殺風景な空間を見回す。右上に監視カメラ、正面には男たちが視界に入った。 「おはよう、被験体007」 男たちは、檻の外からこちらを見ていた。心臓がドクドクと脈打つ。 「元気にしていたか」と、前髪が三日月型に巻かれている眼鏡の男が付け足すと、その隣にいる坊主の丸い眼鏡を掛けた男が、「久

          10ダルクと子守唄 4/9

          10ダルクと子守唄 3/9

          スパイファミリーの小説です。テーマは家族愛。 翌日。時刻は20時を過ぎた頃だった。 ロイドは、朝から嫌な予感がしていた。 ランチを入れた紙袋の底が破れたり、何もないところで2度躓いたり、重要書類を一部アジトに忘れてきてしまったり。スピリチュアルなことは信じない主義だが、任務中に絶対に起こり得ないミスが立て続けに起こると、どうしても不安になる。その上、悪いものほど当たる確率が高いのだ。 ロイドが帰宅すると、ヨルがリビングで立ち尽くしていた。嫌な予感が、胸騒ぎに変わった。

          10ダルクと子守唄 3/9