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白鯨 【散文詩】



絶望してはじめて悲しみに追いついた。わたしたちは軽率に、不用意に、自分を追い詰めすぎている。もっと楽に生きれたらどれだけいいかを、楽に生きている人が教えてくれないことは、叫びに一番近い色で絵を描いたって、絵はさっぱり声を出さないことを教えてくれない絵描きによく似ている。ただ信じられるものが欲しいなら海の先端を瓶に詰めろ、それを 波 と名付けて大事に育てたら、海の破片の広がりを夢と勘違いして、きみは静かで揺れる波を抱きしめて眠ることができる。人体の80%は水でできているから、体内では爪のないくじらが自由に泳ぎ回っていますが、魚を食べると体が喜ぶのは、そのせいでしょうか。

一度でもいいから長生きをしてみたい、長生きってしたことがないからさ。わたしの肺と肺を行き来する空気がいつか嵐になって街を通り過ぎたら、きみはわたしを殺しますか、それとも見逃してくれますか、さよならですか、おめでとうですか。本当のことを言うと、毎朝起きるたびに死んでいたことを忘れてしまうんです。だから命の美しさそのものに、わたしはなりたかった。



きみのために風は吹いている そう思えるのはきみのかけがえのない生活が、日々が、 言葉となって浮かんでくるからだと思う きみが今生きていること、それを不器用でも表現していることが わたしの言葉になる 大丈夫、きみはきみのままで素敵だよ 読んでいただきありがとうございます。 夜野