TCR 4 Kiss You(世界は宇宙と恋におちる)

「今日も海綺麗だね。凪いでる」
「うん」
「すごく輝いてる」
「そうだね」
「あたしさ」
「何?」
「昨日先輩にコクられたの」
「ええーっそうなの? やったじゃん」
「刑部先輩」
「ああ、あの人遊び人でしょ。やばくない? 白鷺先輩とつきあってなかったっけ。あの人達有名だもんね、校内で。美男美女でさ」
「別れたんだって」
「ふうん」
「どうしようかな」
「葵も黙ってればすごく可愛いからね」
「黙ってればってなんだよ」
「まあ好きならつきあっちゃえばいいんじゃない」
「好きかなあ」
「超イケメンじゃん。クラスの女子みんなファンなんじゃないの。でもつきあうとやっかまれたりするのかな」
「なんか面倒くさいね」
「そだね」
「翠って童貞なの?」
「いや? したことあるよ。いまは彼女とかいないけど」
「見栄はってない〜?」
「いやいや本当本当」
「えー。誰としたの」
「それは秘密です」
「教えてよ〜幼なじみじゃん。あたしの知らない人?」
「逆に葵はしたことあるの?」
「ばりばりの処女だよ。悪いか」
「だよね〜なんか色気ないもん」
「何それー! いいもん刑部先輩とやっちゃおうかな」
「好きなの?」
「うーん。ぶっちゃけよくわかんない。話もそんなあわないし」
「じゃあ僕なんかいいんじゃないの」
「あたしとしたいの?」
「まあね」
「翠ってそんな顔して結構エッチなんだ」
「そりゃいつもエッチな動画みてるしね」
「巧いの?」
「普通だよ」
「翠なら怖くないかも」
「怖いんだ、するの」
「だってさあ。みんなどんどん恋してセックスしてさ、みんな変わってくの。友達よりデートだとかさ。メイクも服装も変わって聴く音楽さえ男の趣味でさ。あたし、そういうのが怖い。変わるのが。痛そうってのもあるけど」
「僕達は14歳だ。変わってくよ。変わらないものなんてこの世界にはない」
「キスしてみていい?」
「いいよ」
「……やっぱ怖くないね、翠って女の子みたいな顔してる」
「よく言われるんだよねー」
「翠ならいいかな」
「ドキドキとかないんだ。ちょっとつまんないね。世界は宇宙と恋におちる、ぐらいじゃないとね」
「何だっけそれ」
「1万年前の歌だよ」


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