TCR 10 Sympathy for the devil

「翠、本当あんた巧くなったね。ってあたしが
仕込んだから当然か。いままでの男のなかで
一番イイよ」
「そう」
「あたしのこと鬼畜だと思ってる?」
「いや、いいよ。ママをほっとくとすぐ手首切ったり薬を瓶ごと飲んじゃうもん。救急ヘリ呼んだりさ、結構大変なんだよ」
「ふふ。あんたってあんたのパパそっくりよ」
「え? 誰なの」
「Oswald'sって知ってる?」
「ああ、北欧のスラッシュメタルバンドでしょ。
結構好きなんだ。ちょっとクラシックみたいなとこもあって。スウェーデンだっけ」
「あんたのパパはあのバンドのギターよ」
「えっそうなの。知らなかった。早く言ってよ」
「よく知ってるね、ああいうの」
「うん、たまたまね。僕はメタルはあんまり聴かないんだけどさ。北欧ならポストロックとか好きだし」
「15年前、あたし六本木のクラブに勤めてたの。
いまは立川だけど。そんときの客だよ。たまたま
来日してたのよ」
「そうなんだ。だから僕ギターが好きなのかな。
不思議だね。遺伝ってやつかな」
「あいつはいま30ちょいかな。あたしとそんな
変わんないよ」
「うん、いまもわりと人気はあるしね」
「あんたはいま線が細いけどさ。そのうちあいつみたいにいい男になるよ。結構ゴツめじゃん? あいつ」
「あんなに刺青だらけになるのかな、あはは」
「スウェーデンには妻子もいるからね。あんたにとっては異母兄弟がいるね」
「そうなのか。うちって親戚づきあいとかないからそういうのよくわからなかったな」
「Oswald'sの曲にMotherfuckerってのがあるよ」
「知ってる。好きだよ。激しいのに切ないエモいやつだ。ピアノがいいんだよね。Motherfuckerか。まさに僕だな」
「地獄に堕ちるね」
「よく言うね、まったく」
「あたしが悪魔みたい? わたしのことはルシファーとお呼びください少しは節度を持たねばなりませんからね」
「Stonesじゃん」
「ふふ」


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?