TCR 3 前前前世

「お待たせ〜〜! 翠」
「葵、遅かったじゃん」
「つい西府のLINDBERGH CAFEで話しこんじゃってさ、ごめんごめん」
「飛行機好きだねー」
「あったりまえじゃん。あたしのこのミニ飛行機もリンドバーグ号だもん」
「翼よ、あれがパリの灯だ、面白かったよ。貸してくれてありがとう」
「翠の好きな紅の豚もよかった〜! あたし達って本当に1万年前のカルチャー好きだよね」
「なんか惹かれるんだよねー。前前前世じゃないの」
「ぜんぜん?」
「RADWIMPS だよ、今度貸すね。映画もある。アニメだよ。君の名は。ってやつ」
「あーそれ知ってる。絵が綺麗なやつだ」
「そうそう」
「1万年前はああいう世界だったんだね」
「いまみたいに海で世界が繋がってないんだよね。モノレールじゃなくて電車だし。ちょっと不便そうだよね」
「なんか神社なんかもさ、地上にあったんだ」
「いまみたいに大國魂神社が府中本町のRound1の屋上に移転したなんて昔の人が聞いたらびっくりするんじゃない」
「大きなボーリングのピンの模型の横なんてね。
海の底には何があるのかな」
「2500年頃に宗教弾圧で1回破壊されてるからね。いまあるやつも新しく造り直したものだし。確か鳥居と戦没者の慰霊碑は残ってたんじゃないかな」
「海の中ってもう生物は棲めないもんね。あたし達も絶対潜っちゃダメって教わったしね」
「そうだね。軍艦多摩に乗ってた人達の慰霊碑とかあるって聞いた。海軍だね。慰霊碑の裏には彼らの名前がびっしり刻まれているんだって」
「なんで昔の人って戦争なんてしたんだろう」
「やむを得ない場合もあったみたいだけどね」
「好きな音楽聴いてさ、好きな飛行機とかバイクに乗るだけじゃダメなのかな」
「難しいよね。僕らもまだ14歳だもん。二度と戦争なんてしないようにさ、いろいろと知っていかなきゃいけないんだ。誰かの言葉を鵜呑みにするのではなく自分の頭でジャッジしてさ」
「そうだね。あたし達ってやることいっぱいあるね」
「うん。まだまだ先は長いもんね。楽しんでいこうよ」
「今日はあたしの飛行機に乗って帰りなよ。これ2人までいけるよ。水上バイクは吊るしていこうよ」
「えー葵の運転怖いなー」
「まっかせなさーい! えっへん」
「やばそう」
「ほら! 乗った乗った!」
「しょうがないなあ」

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