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閼伽流山

小学校1年生の頃、閼伽流山へ遠足に行った。
閼伽流山(あかるさん)とは、長野県佐久市香坂にある標高1,028m山である。
戦前までは佐久地方の代表的な観光と信仰の山であり天台宗明泉寺がある。
閼伽(あか)はサンスクリットで「聖なる水」であり、かつては清水が湧出しており、琵琶湖周辺の景色に似ていたらしい。
また、この山の中腹に不動明王を本尊とする明泉寺があった事から名付けられたという説もある。
頂上には展望台があり、晴れた日には遠く北アルプスや八ヶ岳連峰を望むことができ、その日も朝から快晴で雲ひとつない絶好の登山日和だった。
小学1年生の私にとって、登山というものは大人の冒険心に溢れていて、とても魅力的なイベントであった。
特に男の子なら誰もが冒険ごっこの延長線上にあったのかもしれない。
岩村田小学校から徒歩で1学年全員で閼伽流山を目指した。
東方向へ皆で列を作り歩いていく。
やがて林道のような道に入り、林の中には人の背丈ほどもある草花が生い茂り、木々の間からは清らかな水が流れていた。
そして時折、野鳥の声が聞こえてくるのだ。
やがて、道が大きく二手に分かれたところに出た。
左側の道は緩やかな上り坂になり、右側の道は下り坂になる。
先生の指示により左側の道を進む。
しばらく進むと、少し開けた場所に巨石が立ちはだかり、その山腹の観音堂の脇には無数の石仏が祭られていた。
それは何とも不思議な光景で、まるで古代遺跡のようにも見える。
さらに奥へと進んで、振り返ると視界が開けて広大な佐久盆地が現れ、対岸には白い雪に覆われた山脈が見える。
そして大きなお堂が見えてきた。
明泉寺である。
その手前には小さな滝があって、その下には大きな洞窟があった。
そこは子供心にも何か神秘的な雰囲気を感じた場所であった。

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