春になると思い出す正夢。
わたしは、無人駅のホームにひとりで立っていた。
日差しが柔らかくて風のない、春の日だった。
しばらくすると、1両しかないローカルな雰囲気の電車が、ゆっくりとホームに滑りこんできて、止まった。
ドアが開いた。先客は、小さな子どもひとりだけだった。がらがらの車両なのに、子どもがわたしに手招きをしてきて、隣に座るように促してきた。わたしは特に躊躇することもなく、その子の隣に座った。
するとその子は、手に持っていたマドレーヌのようなお菓子を半分に割り、片割れをわたしにくれた。わたしは