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STEAM教育とは?意味や目的・実践例など、わかりやすく解説 (1)

「STEAM教育」という言葉を聞いたことはありますか?
今世界中で注目されている、今後のIT社会を生き抜く人材を育成するための教育概念です。

子ども達のために大切だと聞いたことはあるけど、詳しいことは分からない…。

興味はあるけど、何となく難しそうで気おくれしてしまう…。

聞き慣れない言葉に、このように思われる方もいるのではないでしょうか。
そんな方に向けて、本記事では、STEAM教育の意味や目的、従来の教育との違い、そして具体的な実践例や課題などを分かりやすく解説しています。

今後ますます重要となっていくSTEAM教育について、理解を深めていきましょう。まずは、STEAM教育とはそもそも何かを説明していきます。



STEAM教育とは何か?

STEAM教育とは何か?

【文献 1、2、3 pp.4-9.】

STEAM教育の意味

STEAM教育の「STEAM」は、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art(芸術・教養)、Mathematics(数学)の5つの単語の頭文字から成り立つ言葉です。
STEAM教育とは、学習者がこれら5つの領域を横断した体験を通して、自ら問題を発見・解決しながら主体的に学んでいく教育をいいます。
今後の社会を生き抜く人材を育成するために重要な教育方針であり、世界中で推進されてきています。

AIやIoTなどの急速な技術の進展により社会が激しく変化し,多様な課題が⽣じている今⽇においては,これまでの⽂系・理系といった枠にとらわれず,各教科等の学びを基盤としつつ,様々な情報を活⽤しながらそれを統合し,課題の発⾒・解決や社会的な価値の創造に結びつけていく資質・能⼒の育成が求められている。

STEAM教育等の各教科等横断的な学習の推進|文部科学省

STEM教育との違い

STEM教育とは?
STEM教育という言葉をご存知でしょうか?
STEM教育は、STEAM教育の前進となる教育概念で、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の頭文字を組み合わせてできた言葉です。
2000年代の初めに、アメリカで理数系科目の強化と科学技術リテラシーの向上を目的として提唱され始め、その後オバマ元大統領の演説によって一躍有名になり、やがて世界中に広がっていきました。
このSTEM教育に、「A」の概念が加わったものがSTEAM教育です。
続いて、「A」について詳しくみていきましょう。

「A」は単に「芸術」だけではない?
近年、世界中で創造的な領域への関心が高まってきています。
多くの企業や教育機関で、機能性や効率を重視する従来のアプローチが限界を迎え、これまでにない発想で革新的なアイディアをもたらす人材が求められています。
そこで、アートやデザインといった領域が重要視されているのです。
2013年、全米きっての美術大学であるロードアイランド・スクール・オブ・デザイン(RISD)の学長であったジョン・マエダ氏は、「STEMからSTEAMへ(from STEM to STEAM)」を標語に掲げ、当時主流であったSTEM教育に、広義のアートを加えた教育政策を提言しました。この背景には、当時アメリカでSTEM領域の重点化が図られる一方で、人文やアートの予算が削減される傾向だったこともあります。
また日本においては、文部科学省はSTEAM教育における「A」を、単に芸術といった狭い意味でなく、リベラルアーツ(教養)という広い視点を内包すると定義しています。

STEAMの各分野が複雑に関係する現代社会に⽣きる市⺠として必要となる資質・能⼒の育成を志向するSTEAM教育の側⾯に着⽬し,STEAMのAの範囲を芸術,⽂化のみならず,⽣活,経済,法律,政治,倫理等を含めた広い範囲(Liberal Arts)で定義し,推進することが重要である。

STEAM教育等の各教科等横断的な学習の推進|文部科学省

STEAM教育は、単に理数科目を重視するのではなく、芸術や教養といった広い視点も含めて、人間としての資質・能⼒の育成を目的としていることが分かりますね。

ここまで、STEAM教育の意味とSTEM教育との違いについて解説してきました。続いて、今STEAM教育が注目を集める理由について説明します。


STEAM教育が注目される理由は?

STEAM教育が注目される理由は?

【文献 4、5、6、22】

STEAM教育の背景

近年、人工知能(artificial intelligence: AI)やビッグデータ、IoT(Internet of Things)といった科学技術が目まぐるしく発展し、社会は劇的に変化しています。このような科学技術が高度に発展した未来社会は「Society5.0」と呼ばれます。(参考:Society 5.0とは|内閣府)

科学技術の発展により、近い将来AIやロボット等によって多くの仕事が代替可能となることが予測されています。特に、特別な知識やスキルが求められない職業や、データの分析や秩序的・体系的操作が求められる職業に関しては、人工知能等で代替できる可能性が高い傾向にあります。
その一方で、芸術分野や哲学など抽象的な概念を扱う職業や、他者を理解して協調する能力やサービス志向性などが求められる職業に関しては、人工知能等での代替は難しいと言われています。(参考:NRI未来創発|野村総合研究所)

このように、人間と機械の得意分野は異なっていることが分かります。そのため機械が出来る分野では機械を活用し、人間にしかできないところは人間が担うことで、総合して価値を生み出していくことが重要になります。

さらに我々は今、戦争や紛争、新型コロナウイルス感染症の感染爆発、干ばつや洪水などの自然災害といった様々な未曽有の事態に直面しています。そのため今後の社会において、あらゆる社会的課題や、前例のない問題に解決策を見出す能力もまた重要といえるでしょう。

STEAM教育による人材育成

これからの社会を生き抜くために、AIやロボットを使いこなせる人材や、前例のない問題に解決策を見出せる人材が重要であることは先に述べました。
このような人材は、まさにSTEAM教育の目指す方針と合致します。
実際に文部科学省は、Society5.0に向けた人材育成において、STEAM教育を取り入れていくと発表しています。また統合イノベーション戦略2019におい
ても、STEAM教育の推進について言及しています。

これからの社会の中で生きていくために必要な力の育成に向け、各教科での学習を実社会での課題解決に生かしていくための教科横断的な教育であるSTEAM教育を推進し、具体的な社会課題と紐付けながら学習する環境を確保する。

統合イノベーション戦略 2019|内閣府

STEAM教育が、今後の社会を生き抜く人材を育成するために重要な指針であることがうかがえます。
STEAM教育は次世代で活躍する人材育成の鍵となることが分かりました。
世界中で注目を集めるのも納得がいきますね。

次回は、STEAM教育がどのようなものか、その特徴を詳しくみていきます。



【参考文献】

  1. STEAM教育等の各教科等横断的な学習の推進, 文部科学省, https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/mext_01592.html

  2. 21世紀の教育・学習, 経済産業省, https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/mirainokyositu/pdf/001_09_00.pdf

  3. ヤング吉原真理子ほか. 世界を変えるSTEAM 人材, シリコンバレー「デザイン思考」の核心. 朝日新聞出版, 2019.1.30

  4. NRI未来創発, 野村総合研究所, https://www.nri.com/-/media/Corporate/jp/Files/PDF/news/newsrelease/cc/2015/151202_1.pdf

  5. GIGAスクールとSTEAM教育, JSTEM 日本STEM教育学会, https://www.j-stem.jp/features/column_20221006/

  6. 統合イノベーション戦略 2019, 令和元年6月 2 1 日 閣議決 定-内閣府, https://www8.cao.go.jp/cstp/togo2019_honbun.pdf

  7. 長野大学紀要, 第34巻第 1 号 27-39頁 2012, 27, 27 *社会福祉学部講師 我が国の戦後教育史における学習指導過程の特徴

  8. Society 5.0 に向けた人材育成, 文部科学省, https://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/detail/__icsFiles/afieldfile/2018/06/06/1405844_002.pdf?_fsi=GYvFjkEo

  9. 【編集部体験】6/24新発売のSTEAM本掲載のアクティビティをやってみた!, STEAM JAPAN, https://steam-japan.com/practice/7169/

  10. トイザらス、遊びながら学べる「STEAMトイシリーズ」を7月15日に発売, こどもとIT, https://edu.watch.impress.co.jp/docs/news/1423386.html

  11. お茶大こども園ラボ, 幼児期の教育・保育探求プロジェクト開発, https://www.learning-innovation.go.jp/verify/z0051/

  12. 「未来の教室」と EdTech 研究会 2 第1次提言(案) 3 (2018年6月4日時点版), 経済産業省, https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/mirainokyositu/pdf/004_02_00.pdf

  13. STEM/STEAM教育をどう考えればよいか, 諸外国の動向と日本の現状を通して, 大谷忠 東京学芸大学大学院, https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssej/45/2/45_93/_pdf/-char/ja

  14. 高等学校学習指導要領, 文部科学省, https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2018/07/11/1384661_6_1_2.pdf

  15. 国立研究開発法人 科学技術振興機構 次世代人材育成事業, https://www.mext.go.jp/a_menu/jinzai/gakkou/1309941.htm

  16. 科学の甲子園-国立研究開発法人 科学技術振興機構 次世代人材育成事業, https://koushien.jst.go.jp/koushien/

  17. 兵庫型STEAM教育について, 兵庫県教育委員会, https://www.mext.go.jp/content/20210716-mxt_kouhou02-000016510_01.pdf

  18. 未来の教室, 経済産業省, https://www.learning-innovation.go.jp/about/

  19. 「未来の教室」ルーム 経済産業省「未来の教室」・「STEAMライブラリー」交流サイト, https://foresta.education/learning-innovation

  20. 20学校教育情報化の現状について, 初等中等教育局情報教育・外国語教育課, https://www.mext.go.jp/content/20210908-mxt_jogai02-000017807_0003.pdf

  21. 国際数学・理科教育動向調査(TIMSS2019)のポイント, https://www.nier.go.jp/timss/2019/point.pdf

  22. Society 5.0とは, 内閣府, https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/

  23. L.ダーリング-ハモンド著.深見俊崇訳.パワフル・ラーニング, 社会に開かれた学びと理解をつくる. 北大路書房,2017.5.10

【画像出典】

  1. NovelAIhttps://novelai.net/


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