『クラシックを現代に生きる音楽に』Hungarian Rhapsody No.2(with Cateen Cadenza)YouTubeプレミア公開ー2020.12.1

私の敬愛するピアニスト、角野隼斗さんは言った。

『クラシック音楽を現代に生きる音楽にしたい。かつてショパンやリストの時代に、過去の作品と合わせて自分の曲やアレンジ、そして時には即興で演奏して観客を熱狂させたように、自分も自由に音楽を奏でて観客を楽しませられる存在になりたい。』

と。

角野隼斗さんがそう発言されてから、新しいアルバムの収録曲がYouTube動画として正式公開されるのは初めてのことだった。公開は2020年12月1日21時。満を持してのプレミア公開。高まりすぎるほど高まる期待のなかで動画は始まった。……聴いた直後から1日経った今でも、凄いものに触れた衝撃で脳も全身も半分放心状態だ。心はどこへ行ったんだろう。それ程に凄いものに触れた。これは、【角野隼斗さんが冒頭の言葉を、音楽(と映像)で体現した歴史的な瞬間】だと強く思った。

音楽的な知識のほとんどない自分が語るのは限界があるけど、それでもこの素晴らしい作品を無知なりに無謀にも語ってみたくなり、これを書いている。予めお断り申し上げますが、もろもろ間違っていたらすみません。

最初は<Lassan>。始まりから角野隼斗さんのはっきりした美しい音の魅力に引き込まれる。力強さの中に郷愁なのか民族的な情緒があって心惹かれる。トムジェリの映像と合っているのが素敵だ。中盤で角野隼斗さんが冒頭と同じフレーズを弾くのだが、その音が荘厳(?ピタッと来る言葉が見つからない)に響き渡り、その後の深みのある音に繋がっていくあたりがたまらない。かっこよくて力強いのに繊細。終わりにかけて、愁いを帯びた音が静かにゆっくり語りかけるような深みに胸打たれる。(鍵盤の抑え方がラボで海の幽霊の解説の時と同じように見えるけど、これは普通にこういう弾き方をするものなのでしょうか。無知ゆえ分からないけど、凄い演奏効果!)

次は<Friska>。打って変わって、ひたすら楽しい音のダンスにこちらの身も心も踊りだしたくなる!! 角野さんも笑顔が溢れていて見ているこちらも嬉しくなる。影絵的に指揮をするかてぃんさんや小さなかてぃんさんが現れるなど映像がこれでもかと遊び心に溢れていて、見ているだけでウキウキする。夜中のおもちゃ箱を覗いた(トイストーリー的な感じで)みたいに、めくるめく楽しい世界がどこまでも広がっていく。でも、演奏は本当に物凄い。美しい音が美しい緩急をつけて綺麗に響きわたる。後半は躍動感が凄くてさながらおもちゃの運動会のよう。明るく可愛い演奏と映像に、心が幸せで満ち、天高く舞い上がっていく。

満を持しての<Cadenza>。
最初のフレーズを奏でた後から美しい浮遊感のある音が鳴り、キラキラしたメロディーの中にも「来るぞ来るぞ」と期待感が高まっていく。からのジャズ。そしてラテン調! そこに飛び出すかてぃんさんの踊り! かと思うとめくるめく速弾き! 「くらえ!」とばかりに楽しくて圧倒的なかてぃんさんワールドが炸裂する(もちろん真正面からくらってKOされている)。ヴィルトゥオーゾ的な所もふんだんにあり、瞬く間に変わる曲想についていくのがこちらも必死。目が離せないというか、もうこのあたりからは完全に音楽の世界に心を持ってかれている。静かで美しいパッセージを挟み、長調に変わって優美で華々しく美しい音が高らかに響き渡る。最後は壮大で盛大なフィナーレ!

と、書いたのですが正直な所、事実誤認があるかもしれない。自信は本当に自信満々なほど全くない。けどそんなことはどうでもいいかもしれない。なぜなら言葉では表せないから。実際の演奏が凄すぎて。

カデンツァ部分の角野隼斗さんのありとあらゆる魅力が凝縮されまくった素晴らしさといったら!!! 次々と新たな魅力が押し寄せてきて、その圧倒的で膨大で怒濤のような魅力の塊を前に、もうただただ聴いて見ていた。時間も空間も忘れ、純粋に音と映像のなかに浸りきるだけの存在になっていた。大感動でもはや失神寸前、息も絶え絶えになりながら全力の拍手を送るという、もうなんだか訳の分からない心境だった。しかもそれが震えるほど幸福だ。本当に凄すぎるものをお作りになったと畏敬の念を抱いてしまう。

言うならば、すさまじい引力。とてつもない磁場。ふれたことのない未知の力。あらがえない魅力。そんなものが働いていると思えるほどに、聴くたびに魅了される全く新しい音楽体験。クラシック音楽という既存のジャンル、そんな枠には到底おさまらないほどの超大作だ。


大人になって時間がしばらく経つと、素敵なものに出逢うことが少しずつ難しくなる。大抵のことを知り、類型化で理解できてしまう事も増えてきて、手放しで魂が震えるような感動や、美しくて素敵で本気で大事にしたくなるものには、なかなか出逢えなかったりもする。
だけど、この音楽は本当に本当に素敵なものだ。
私の言葉は信じなくてもいいけれど、この音楽は信じて欲しい。聴いてみて欲しい。角野隼斗さんの音楽は絶対にどういう形であってもあなたの心に響く。この世にある素敵なものを思い出させてくれる。


『クラシック音楽を現代に生きる音楽にしたい。かつてショパンやリストの時代に、過去の作品と合わせて自分の曲やアレンジ、そして時には即興で演奏して観客を熱狂させたように、自分も自由に音楽を奏でて観客を楽しませられる存在になりたい。』

その言葉はこの動画を見ただけでも、もう現実のものになっている。

音楽家、角野隼斗さんがこの音楽を生み出してくださった事に心から感謝したい!!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?