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【本当に英断⁉】高校野球の500球ルール、指導者は恥ずべきこと⁉

 前回の日記に続いて高校野球の投球数の話!今回は「500球ルール」についてです!

 ご存じの方も多いと思いますが、現在の高校野球には500球ルールという球数制限があります!各投手の1週間(7日間)の投球数が500球を超えてはならないという制限ですね!投手の肩や肘を酷使から守るために導入されたルールです!

 かつての登板過多が横行した時代の反省から導入された、選手ファーストの素晴らしいルールなのですが。

 私は思うのです…

このようなルールの導入は、指導者にとって恥ずべきことでは⁉

【500球ルール導入の経緯】

 まずは500球ルールの導入に至った経緯をおさらいしましょう!

 きっかけは2018年夏のことです。この夏の甲子園優勝校は大阪桐蔭。そして準優勝は秋田の金足農でした!東北の県立校が快進撃で決勝まで上り詰めた「金農旋風」!記憶が鮮明に残る方も多いでしょう!

 この金農旋風の立役者となったのが、エースの吉田輝星投手(現日本ハム)でしたよね!吉田投手は甲子園決勝で5回に降板するまで、1回戦から1人で投げ続けました。

 それだけではありません。甲子園の前の秋田大会でも全5試合を1人で投げ抜いていたのです。

 同年夏の吉田投手の投球数は以下の通りです。
【秋田大会】
7月15日(2回戦vs秋田北鷹)
140球(先発9回完封)※初戦

7月18日(3回戦vs能代)
147球(先発9回完投)

7月20日(準々決勝vs秋田商)
87球(先発7回完封)

7月23日(準決勝vs由利)
130球(先発9回完投)

7月24日(決勝vs明桜)
132球(先発9回完封)
※秋田大会合計636球

【甲子園】
8月 8日(1回戦vs鹿児島実)
157球(先発9回完投)

8月14日(2回戦vs大垣日大)
154球(先発9回完投)

8月17日(3回戦vs横浜)
164球(先発9回完投)

8月18日(準々決勝vs近江)
140球(先発9回完投)

8月20日(準決勝vs日大三)
134球(先発9回完投)

8月21日(決勝vs大阪桐蔭)
132球(先発5回)
※甲子園合計881球

その投球数は秋田大会で636球、甲子園で881球。ひと夏で計1517球を投じていたのです。

【2020年に導入】
 エースが1人で投げ抜くというのは美談にもなりがちですが、登板過多による肩や肘への負担もエース1人に大きくのしかかることになります。

 肩肘を酷使すれば靭帯や腱、骨が摩耗し、損傷してしまいます。そして十分な登板間隔もないまま連投が続けば、損傷箇所が回復できなくなってしまいます。

 これを問題視した高野連は金農旋風から2年後の2020年から、「1週間の投球数は500球まで」という上限を設定しました!これまで投球数が無制限であったがゆえに、登板過多で故障に泣いた投手が数多くいたことを考えると、選手に寄り添った画期的なルールです!

では上記の吉田投手の投球数を500球ルールに当てはめてみますと~?
【秋田大会】
7月15日=140球
7月18日=147球
(1週間で287球)
7月20日= 87球
(1週間で374球)
7月23日=130球
(1週間で364球)
7月24日=132球
(1週間で496球)

【甲子園】
8月 8日=157球
8月14日=154球
(1週間で311球)
8月17日=164球
(1週間で318球)
8月18日=140球
(1週間で458球)
8月20日=134球
(1週間で592球)
8月21日=132球
(1週間で570球)

 秋田大会は決勝で7月18~24日の1週間で4試合合計496球と上限に残り4球まで迫りましたが、それでも500球を超えるケースはありませんでした。

しかし甲子園では、準決勝と決勝で500球を超えています。準決勝は8月14~20日の1週間で4試合合計592球と92球オーバー。500球ルール導入後であれば、準決勝は42球しか投げられないはずでした。

決勝も8月15~21日の1週間で4試合合計570球と70球オーバー。こちらも制度導入後であれば、決勝は62球しか投げられなかったことになります。

 金農旋風は500球ルールの導入前でしたが、2020年のルール導入以降は、このような登板過多を抑止できるようになったわけです!

【昨夏甲子園の場合は?】
 それでは500球ルールの導入によって、甲子園での投球数はどのように変わったでしょうか?例として、昨夏の甲子園優勝校・仙台育英の投球数を見てみましょう!

【宮城大会】
7月 8日(1回戦vs柴田)
高橋48球
古川59球

7月14日(2回戦vs仙台商)
高橋56球(1週間で104球)
湯田57球

7月19日(3回戦vs仙台高専名取)
湯田33球(1週間で89球)
佐藤30球

7月23日(準々決勝vs日本ウエルネス宮城)
高橋72球 ※中8日
古川39球 ※中14日

7月27日(決勝vs聖和学園)
高橋48球(1週間で120球)
古川77球(1週間で116球)
※準決勝vs仙台南は不戦勝

【甲子園】
8月11日(2回戦vs鳥取商)
高橋60球
古川19球
仁田20球
斎藤蓉11球
湯田 7球

8月15日(3回戦vs明秀学園日立)
湯田31球(1週間で38球)
古川53球(1週間で72球)
斎藤蓉31球(1週間で42球)
高橋46球(1週間で106球)

8月18日(準々決勝vs愛工大名電)
斎藤蓉71球(1週間で102球)
古川52球(1週間で105球)

8月20日(準決勝vs聖光学院)
高橋37球(1週間で83球)
湯田84球(1週間で115球)
仁田61球 ※中8日

8月22日(決勝vs下関国際)
斎藤蓉100球(1週間で171球)
高橋45球(1週間で82球)

 上記の通り、エースが1人で投げ抜く時代とは状況が大きく変わりましたよね!

 宮城大会5試合と甲子園5試合の計10試合で古川翼、斎藤蓉、高橋煌稀、佐藤悠斗、仁田陽翔、湯田統真の6投手を起用。負担を分散させながら日本一へと上り詰めました!1週間での投球数は斎藤蓉投手が8月16~22日に2試合合計171球を投じたのが最多。上限の500球まで随分と余裕があります!

 1週間で500球までというルールができたことで、そのルールに対応できるよう投手を複数用意してきたわけです!ルールに見合ったチーム作りをしてきたからこそ、全国制覇を達成できたのでしょう!

【本当に英断なの?】
 500球ルールの導入前に比べると、投手個々の負担は大きく減りました!やはり500球ルールの導入は、投手の肩や肘を守る上で英断だったのでしょう!

でも…本当にそうなのでしょうか?

これは本当に「英断」と言えるのでしょうか?

 まず前提として、指導者というのは選手を守るべき立場にあるはずです。指導者が本当に選手のことを大切に思っているのであれば、投手起用だって過度な負担が掛からないように配慮するはずです。わざわざルールによって投球数に上限の線引きを設けなくても、指導者が「良識」で判断して投手起用を運用していくはずです。

 しかし、実際は違いました。指導者が勝利至上に走り、肩肘の限界を超えるまでエースを酷使するケースが数多くあったわけです。将来を嘱望されながらも、チームの勝利の犠牲にされてきたエースが星の数ほどいたわけです。指導者によって将来を閉ざされてしまったエースが数え切れないほどいたわけです。悲しいかな、それが実態だったのです。

 そんな実情に歯止めを掛けるために導入されたのが500球ルールです。つまり、このようなルールが導入されたということは、指導者には良識があるという「性善説」が成り立たないと、高野連に判断されてしまったということではないでしょうか?

本来なら「良識」に委ねるべきことなのに、上限を設定しないと勝利のために常軌を逸脱した投手起用をする指導者がいる。そう見なされてしまったということではないでしょうか?

このようなルールが導入されたということは、指導者にとっては恥ずかしいことではないでしょうか?決して胸を張れることではないと思います。

 500球ルールによって、全ての投手が酷使から守られることを願うばかりです。

 と、素人ジョシは思うのでした!


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