'らしさ'を大事に:野毛大道芸と飲み屋街

   横浜市には、日本に誇れる大道芸のイベントがあります。
   日本三大大道芸のひとつとされる野毛大道芸は、横浜市野毛町で1986年から毎年開催されている、野毛の風物詩である大イベントです。
   野毛町は、横浜市の桜木町駅から徒歩10分ほどの場所にあります。野毛町は大道芸開催当時から飲み屋が多くあることで有名な町です。ファミリー向けのマンションも多くあり、住んでいる人も様々です。
   取材は10月28日に野毛町内会館で行い、会長の田井さんと事務の飯島さんにお話を伺いました。
   飯島さんはパフォーマーのブッキングも行っています。野毛大道芸のパフォーマーを選考する基準を伺うと、「野毛らしさ」に合っているかどうかを意識していると仰っていました。

野毛らしさ

   野毛町には2021年10月現在、約600の店があり、その多くが飲み屋となっています。午後4時には店に多くのお客さんが入り、賑わいを見せていました。
   もちろん野毛にあるのは飲み屋だけではないのですが、町の雰囲気に合うパフォーマーを選考しているようです。
   そして大道芸当日は、大道芸が行われるその横でお客さんがお酒を飲みながら見物するのが定番です。(コロナ禍で屋外観覧はできていませんが…)
   また、野毛大道芸は毎回午後4時半には終了することになっており、それはその後お客さんに飲み屋で飲んでもらうという目的があります。

野毛の成功要因

   田井さんによると、大道芸を行っている自治体は多いそうです。その中で野毛大道芸が今でも日本三大大道芸の一つである理由はなんでしょうか。
   田井さんは野毛大道芸の成功要因として、下記のことを挙げています。
    1つ目は「オンリーワン」であること。先述したように「野毛らしさ」を生かした大道芸となっています。
   2つ目は、後述しますが「みんなが好き」だということです。
   そして最後に「たまたまハマった」そうです。野毛大道芸初開催の前年には、「青空画廊」という大道芸とは別系統のイベントを行いましたが集客が悪かったそうです。
その地域の雰囲気とマッチしているか、が大事であることが分かります。

今後は…


  そんな野毛大道芸も、ボランティアで行っている運営メンバーの高齢化が進み、今後の在り方に悩んでいます。
   そもそも、野毛大道芸は周辺の飲み屋の売上向上のために開催されていました。2004年に東急東横線の横浜駅〜桜木町駅間が廃止されてみなとみらい方面への相互直通運転に切り替わった時は、人が大きく減ったそうです。ですが今は大道芸がない日でも飲み屋街は栄えており、なんなら今までで1番の栄えようで、田井さん曰く「バブル」だそうです。
   それに野毛大道芸は1度の開催で2000万円、後援もありますが、それでも町には大きな負担です。
   いずれは野毛大道芸の存続意義が問い直されることになるかもしれません。

みんな「好きだから」大変だけど毎年やっている

   田井さんはそう言います。

   過去には意見の対立があり実行委員会が分裂したこともあります。トップが退任し大道芸に反対していた人がトップになったりと色々ありましたが、今は協力しあっています。いろいろあってもみんな野毛大道芸が、野毛が好きだから大道芸が続いています。話を聞いていて、それは地域の魂のようにも思えました。
   個人的考えとしては、今後もずっと商店街が栄え続ける保障はありません。田井さんの「バブル」という言い方にも含みがあるように感じます。野毛をブランド化し続けるという視点から見ても、大道芸はずっと続いてほしいなと思います。

最後に


   地域らしさを生かしたイベントの一例をご紹介させていただきました。今回の取材では地域の魅力と人々の繋がりを感じられた一方、運営の高齢化という目下の課題もお聞きし、野毛大道芸の裏側も話していただきました。        
   これまでもいくつもの困難がありながらも毎年行われてきた野毛大道芸の、末永い存続を望みます。

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