アブない人々の思い出 〜その1

暑い。しんどい。双極性障害の私は、大雑把に寒い時期が躁(ハイ)、暑い時期は鬱(ロー)になる。今年は梅雨前くらいまで元気いっぱいだったのだが、案の定、梅雨に入り、日照時間が減るとだんだんしんどくなり、梅雨明けの今は死んでる。

双極性障害という自覚はずっとあり、数年前から自分の心身変化を細かく記録しているんだが、毎年この時期は低浮上で対処のしようがない。自覚はあっても、脳の器質的な癖みたいなものなので、根治はほぼ、不可能とみえる。

同一人物の私なので、その時々の記憶はきちんとあり、連続した私ではあるのだが、その私から見て「同じ俺なのか?」と訝しくなるような変化が起きる。躁状態のときは、一種、何に関しても過度な興味を持ち、異常に活発になる。

3月頃の記事をお読みいただくと分かるのだが、衝動性が上がり、やたら買物したり、人間関係にも興味を持ってSNSで新たな人とつながったり、いろいろ手を広げる。当時の私は中古バイクを衝動買いして直したり、iPad入手して自作漫画を作ろうとか、いろんな意欲に燃えていた。しかし鬱になった今は興味が出ない。

「鬱」というのは酷い状態で、日常生活に必須の、健常者ができそうな簡単な作業もしづらくなる。例えば、買物に行くのが難しい。私は実家暮らしだが、自炊しているため、食料品が欲しいな、と思ってもよほど具合がよくないと行きづらい。

もっとも困るのは掃除、洗濯など、衛生に関すること。ADHDぽく、モノが多いので、処分したいところだが、捨てたいと思っても、脳がパンクして片付けという作業に取り掛かることができない。さらにつらいのは入浴がいちばんしんどく、2−3日はすっ飛ばしてしまう。髪の毛が長いので、痒い限界でシャワーする。

日の大半は床から起きられないので、布団か座椅子でゴロゴロとし、スマホでゲームかまとめサイトなどを見るしかなくなる。机に向かう、というのも体が重たくて、今日は強い精神刺激薬を入れたので、こうしてようやくPCから記事を書く状態にもってきた。(なのでこれは、Macbookで入力している)

精神状態としても、鬱なので、いぜん面白かったことが、あまりボンヤリとしか感じられなかったりする。今日はリハビリを兼ね、机に向かって面白いことを思い出して無理に書く練習なので、なるべく面白くなればと願っている。

時系列がバラバラだが、子供の頃に遭遇した、いろんな「ヤクい」人々のことを思い出して羅列したい。ヤクい(厄い)、というのは、拙作漫画「晴子の居た世界」の主人公、晴子の口癖なのだが、元は晴子が「サザンアイズ」という漫画のファンで、その主人公の口癖を彼女が真似ているという設定だ。

さらにどうでもいい情報なのだが、私自身はサザンアイズをきちんと読んだことがない。私の漫画の変人な主人公が好きであろう、という想定なだけだ。おまけに、そのサザンアイズの主人公も、ヤクいという口癖を途中で辞めているらしい。他に一部地域での方言だか流行語にもなったようだが、とにかくマイナーな言葉だ。

私は子供の頃から、奇妙なモノ・コトが好きで、その単語の意味を知る前から、いわゆる「猟奇的」な何かを好んでいたふしがある。一部読者には懐かしいかもしれないが、マヤとかムーといったオカルト雑誌、猟奇事件の本など。そういう何か。本稿では、まあ猟奇的かはさておき、私が子供の頃に遭遇したヤクい人々を紹介する。

まず小学生時代。「森くん」という友人が居た。実名だが、多い苗字なのでまあ大丈夫だろう。もうひとり、現在も付き合いのある「森くんB」が居るが、たまたまなのか、森という名の人はわりとヤクい人が多い。皆さんの周りはどうですか?

この森くん、残念ながら中学くらいから引っ越したのか消息不明だが、付き合いがあるほうの森Bくんとも含め、本当に奇妙なことが好きな少年だった。わりと明るいのだが、子供ながらに奇怪なことが好きだった。親御さんの影響だろうか?

森Bの証言なのだが、彼からみても「森くん」は変わっていて、Bと森くんは、自作すごろくの題材に「地獄めぐり」なるものを作っていた。特に残虐性のある子ではないんだが、そのすごろくでは、止まった各地で人が残虐な目に遭うイヤなすごろくである。(ノリとしては、漫画太郎先生みたいな感覚だと思ってください)

よくいえば「好奇心が強い」ってだけだと思うんだが、なんかインパクトある出来事として、森くんが「猫の死体がある」といって、半白骨化してウジが湧いているそれを見せにつれてってくれたことがある。小学生のすることだし、まあそういうものが物珍しい、という程度であり、決して異常なそれではない。

ほかに、これはやはり彼の親御さんが「そういう人」だったんじゃないかと想像するが、高学年になった頃、まだグロ耐性の弱い私に恐ろしいビデオの話をしてくれた。マニアの間では有名なのだが「ギニーピッグ」というエログロナンセンスな作品があり、それを口伝で聞かせてくれたのだ。いますよね、そういう子。

ネットで「本物」のグロ動画が見られるようになり、歳も取ってそういうのを見ても特になんとも思わなくなってしまった私だが(それもどうかと思うが)、当時はもっと純粋で、彼の語るそのビデオの内容が非常に恐ろしく恐怖した。

いわく、人間が縛り付けられて「眼球に針を刺す」だとか「○した体を何体もバラバラに切り刻む」など、およそ悪趣味なものだった。今では立派な異常者になってしまった私だが、小中学くらいまでは非常に純粋だったので、その話を真に受けて、本当に恐ろしくてたまらなかった。森くん自身は「すげえよね」と嬉々として話してくれてたんだが、何考えてんだ彼は。

※ 慣れというのは恐ろしいもので、後に私もレンタルビデオでそれを見たり、さらに悪趣味なものを見たりするようになって、まあ作り物だし、大人になるにつれてあまり抵抗を覚えなくなってしまった。今ではむしろ常人より感覚が鈍麻しているように思う。また、世間でもWebやSNSの台東により、子供の頃からそういうものを見て慣れてしまった人が相対的に増えてしまったのではないかと少し憂う。

繰り返すが、当時の森くんはただのホラー好きであり、とりたてて異常性を持った人だとは思えない。特にニュースになったこともないので、猟奇犯罪者になったという後日談もありません。

次にいこう。これは中学時代の教師のことだ。ちょっと私自身の「変化」についても述べておきたくなったので、先に補足しておこう。私は高校に上がるくらいまで、非常に純粋で、成績優秀で、生真面目な子供だった。勉強のできる子として、他の生徒がなぜか私の名を知ってる程度に。人格も大人しく、異常性も薄かった。

そんな私だったが、大学くらいから、周りの悪友に助長されたり、ロックをやるようになったり、元々持っていた「異常の種」みたいなものが発芽してしまい、今ではたぶん当時の森くんよりも猟奇的な存在になってしまった。当時の私を知る同級生が、今の私を見たらビックリするくらい変わったと思う。

で、中学教師の件。これは、当時の私はあまり意識してなかったのが、よくよく考えたらあの教師は異常な人だな。と思ったことである。まだ昭和くらいなので、今の常識からみたらあぶねーな、という感じだが、当時はわりと、ああいう人は居た。

いちおう担当科目を書いておくと、理科の担当だった。私のクラス担当ではない。色白で少しやつれており、年齢不詳の感じで、当時認識してなかったがおそらく独身だったのだろう。ふつうの時はふつうなんだが、エピソードを思い出すとけっこうヤバイ人だったのではないかと考える。

背丈はふつう。そんなにでかくも小さくもない印象。肉体的な威圧感は無いのだが、たまに妙なところでブチギレる、なんというか精神的にアブない人だった。当時の私は「優等生」なので、特にこの教師からダメージを受けたことはない(一般に、勉強できる大人しい子は教師に攻撃されづらい)

なかなか文章化が難しいのだが、特にゴツいとかじゃなくて精神的にアブないやつ、というのは、私としては単純なパワー系よりもよほど厄介だと普段から思っている。ようするに何をするか分からないし、力だけに頼ってないからだ。

この人のブチギレエピソードで印象的なことがふたつある。一つは、同じクラスの旧友で、一匹狼タイプの不良生徒、彼がどやしつけられたことだ。授業が始まるとき「起立・礼・着席」という謎の習慣があるのだが(現代でもあるんだろうか)、そのタイミングでこの教師がいきなりブチギレた。

というのは、不良の友人が、教師に礼するのがイヤだったのだろう、おそらく頭を下げずに突っ立っていたところ、その教師が「〇〇!貴様!ポケットに手つっこんどるやつがあるか!」と突然怒鳴ったのである。その友人についてはちょっと変わり者で、別の思い出もあるんだが、今回は割愛。それよりそんなことで怒鳴るな先生。

もうひとつのエピソードは、たぶんクラスが違うんだけど、たぶん学年トップくらい悪い(強い?)と目されている不良生徒が暴れた時のこと。前後の経緯はよく分からないんだが、彼自身は屋内で喫煙したり、授業中に出入りしたり、まあ漫画みたいな行動をしていた。

授業中でなかった気もするが、とにかく彼がその教師に襲いかかったのか、教師と組み合っていて、その教師は不良の彼の頭をグーで数回ゴツンゴツンとぶん殴っていた。現代だと普通に警察沙汰だと思うが(不良生徒側が先に攻撃したかは不明、すでに開戦状態だったため)教師も教師でかなりの武闘派だった。

私は基本的に「人を殴る」ということが「習慣化」されていないため、よほど意図的に、戦う、とか、殺意を持つ、という状態に自分を持ち込まないと「自然に手が出る」ということはない。

子供の頃なので、そういう視点でその教師を観察してなかったのが惜しまれるが、「ふだんの印象」として、そんなに暴力慣れしているようなイメージの人でもない。と思う。ただ、先述したように、急にキレる、みたいなことがあるので、一部には恐れられていたのか、ちょっとわからないが、学校一の不良の頭をゴツゴツ連打していたのは事実で、あの感じからすると「場慣れ」してそうにしか思えなかった。

※ 回りくどく書いたので分かりづらかったかもしれない。「暴力慣れしてる人」まあいわゆるDQNなり半グレ、暴力団員など、と、「よほどのことがないかぎりそういうことと無縁な人」があると思うんだが、その教師は、普段のイメージの割には暴力・喧嘩慣れしてそうだった、という意味。

時代が変わってきてて、今なんて、誰でもすぐ撮影できるし、手を出せば学生も教師も逮捕される。し、訴訟されたりお金を払うことになるため、まあアウトローな人じゃないとあまり人を殴ったりせんと思うのだが。ともかくその教師は普通に殴っててちょっと驚いた。

あと、その殴られてたほうの不良が、一般生徒の私からしても、なかなか迫力ある男で、教師の中にはそいつに手出しされてもビビって涙目になってるような者も居たのだ。「教師」だとか「大人」という立場もあるが、胆力という意味で、くだんの教師はなかなかキレ者だったと見える。さらに彼の異常性を描く。

この件は、当時の私にはあまりピンと来てなかったが、大人になってふと思い出すにつれ、「やっぱやべーなあの人」と痛感した出来事だった。下品な話になる。

これは授業中のことだ。こういう変な出来事というのは、インパクトがあるため、今もその場の変な空気をなんとなく覚えている。理科室だったと思う。モルという単位だったか、生物だか大きな数値を扱っていた。

くだんの教師が、何かの数字に関する質問で、女子生徒をあてて「〇〇万個」と答えさせた。〇〇は覚えてないだが、例えば200万個だとする。彼女は普通にはっきりした声で数値を答えたのだが、教師が「200?」と、わざと聞き返した。そこで生徒は続きの「万個」と答えた。わかりますか?

わりと自然に思える流れだったのと、純粋だった私は当時とくに気にも留めていなかったと思う。ただ「妙なところで区切るな?」と違和感があって、なんとなく覚えていた。女子生徒のほうも自然に返していたように思う。たぶん。

が、いちおう解説しておくと、この教師は、ふつうに明瞭に聞こえた数値の「〇〇万個」という単語を、わざと「○○…?(の続きは?)」と誘導尋問し、女子生徒に「万個=manco、一般に女性器を意味する単語」をクラスで言わせたのだ。私の邪推ではなく、大人になってから、こういう特殊なセクハラをする人種を見かけることが幾度かあったので、彼は意図的にそうしたと思う。

当時の私がもうちょっとカンがよければ、この厄い教師の他の異常エピソードももっと観察していたのだが。まあふつうに考えてけっこうアブない人だった。

私もたまに、セクハラをするが、他人が誰かにセクハラするのを見る、というのはなかなかインパクトがある。こんなこともあった。

これは成人してから、会員制スポーツクラブに通っていた時のこと。スタジオで音楽に合わせて筋トレするようなレッスンがある。アラサーくらいの、女性インストラクターが主導して、いろいろコツとかを話しながら楽しく筋トレするやつだ。

クラスの時間が終わると、常連客がインストラクターと雑談したりする。これも、いっけん自然な流れの巧妙なセクハラなのだが、居合わせて「えっ?」と思ったので驚いた。というのは、話の流れでインストラクターが「お尻の穴に力を入れて」という説明をしていた。体幹トレーニングか何かで、腹筋というか、まあ事実ケツを締めるという話で、それ自体は自然なものだ。

…だったのだが、またここで、常連客の男が、何を思ったか「どこに力を?」と、わざわざ聞き返したのだ。この時も、まあ雰囲気としては自然なので、インストラクターは「お尻の穴に」と普通に答えていたと思う。客観的にも変な感じはしなかった。が、世の中には、女の人に妙なことを言わせることに喜びを得る人、というのが居るらしい。

※ 中学教師の件にせよ、この件にせよ、私が目撃して違和感を覚えたのですが、おそらく私の邪推ではなく質問者側にはセクハラの意図があると思います。私自身は「そういう趣味」は無いので、あしからず。

どんどんシモのほうに脱線してきたが、スポーツクラブでもうひとつ、衝撃を受けたことがあったので、ついでに書いておこう。読者がウンザリしてたらすみません。

「噂には聞いていたが」こういうことがあった。というのは、ここは月額1万円くらいだったか、そこそこ普通のクラブで、設備もしっかりしている。片田舎なので、施設が広く、ちょっとした銭湯みたいな場所もついている。

あるとき、私がそこのサウナに入ると、男の客が独りだけいて、股間を屹立させていた。たまたま他の客が居なかった、というのは覚えているが、なにぶん古い記憶で、他があやふやだ。私は「見なかったことにして出た」のか、はたまた、二人きりだったときに、相手が途中からそうなったのか、いまいち覚えていない。

まあ私にその趣味はないので、その男と長時間、サウナで過ごしたとか、何らかのコンタクトがあった、ということはない。参考までに書いておくと、私は小柄で、あまり男くさいというよりは中性的な雰囲気なので「その道の人」に関心をもたれることがあるタイプではあるようだ。

しかし、この時、彼が「私を対象に発情した」のか、私がサウナに入るより前からスタンバイしていたのか…という部分がはっきり思い出せない。銭湯とかに行くにしても、股間を固くしている男に遭遇することは滅多にないため、その男とたまたま同室で、ふと見たらそうなっていた…のかもしれない。

まあともかく、トレーニーに偏見があるわけではないが、彼はゲイだったのだと思う。居るところには居るらしい。という話。

ゲイ関連でもう一件、思い出したのでこれを最後に紹介して締めよう。

「自分のスキルを電話で売ります」というSNSサイトがあり、小遣い稼ぎのつもりで「どんな話でもきく素人カウンセラ」をやってみた時のこと。なかなか売れないのだが、珍しくアプリに予約が入った。

細かいことは端折るが、アプリに顔写真と簡単なプロフを載せ、利用者は1分何円、で課金、すると何割か私に入ってくる。というサービスだ。「他人だからこそ言える」みたいな感じをアピールしてスタンバイしておくもの。人によっては英会話とかプログラミングを教えたりもする。

で、なんか大人しそうな感じの中年男性が「本当に人に言いづらいのですが…」という感じで電話してきた。最初は少年時代にいじめを受けたというモノだった。が、それが、男同士で性的暴行をされた…という内容になってきた。たぶんそれ自体は事実らしく、私も「それは大変でしたね」みたいに普通に聞いていた。

が、途中から描写が非常に具体的になってきて、相手はどうやら「気持ち悪いとは思いながらも、体が反応してしまって…」とか言いつつ、なんだか妙に興奮している様子なのである。私のほうが気持ち悪くなってきたのだが、どうやら、彼は私にそういう体験を話すということで快感を得ているらしかった。

これは複雑なのだが、はじめは真面目なカウンセリングの「てい」で電話を掛けてきた。また態度も丁寧なので、こちらも真摯に聞いていた。また、時間が長いと、けっこうな給与になる。結果的に1時間くらいで数千円になったと思う。

が、彼自身、最初から「そういう目的(私に男同士の猥談を聞かせることで興奮したかった)」のか「カウンセリングしている流れで興奮してしまった」のか、私にもよくわからない。

念の為、書いておくが、私はゲイの傾向は無いため、同性にそういう対象として見られるのはさすがにちょっと気持ち悪かった。わりと何があっても冷静であろう、というタイプなので「仕事」と思って、最後まで聞いていたのだが、なかなか複雑な心境であった。

いちおう普段から、奇妙な体験は、こういう記事のネタになる、と考えて面白がるほうなので、この時も、電話をブツ切りにせず、そのうち相手が課金切れ(払った時間しか話せない)で終わったかどうかした。また「評価」制度があるため、邪険に扱うと次の仕事に響く。

けっきょく彼は、私の対応に★5の高評価を付けてくれたのだが、予想外の経験で戸惑った。おそらく同じアプリで、英会話を女性に教えたときも、1時間くらいで数千円になったので、悪くはないバイトだが、複雑な気分である。

同性愛者、に対する強い偏見は無いつもりでいるが、自分がその対象になる、という経験は珍しいので、正直それは面食らった。また、webやら漫画の世界では、わりと当たり前に居るようだが、身近に実在するというのもけっこう衝撃的だった。

本稿では書ききれないので、このあたりにさせて頂くけれど、私自身、これまでのいろんな奇妙な考えとか体験をひけらかせば、人さまの驚くようなところが多いだろう。

しかし、まあ本当にいろんな人が居るものだ。ネタは尽きないが、エッセイを書くいいリハビリになったので、今回はこのあたりで。なんとも下品な話に偏ってしまって恐縮です。

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