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ファンと一緒にブランドを育てるSNSマーケティング実践法⑤(全文無料公開)

さて、今回は無料公開の第5弾ということで、

【企業にダメージを与える SNSの炎上パターンと防御策】

の章をお送りしていきます。

◆個人のうかつな発信が、所属企業のイメージを失墜させる


企業でも個人でもSNSの活用が活発化していますが、不適切な発信をすることによって、企業がダメージを受ける事件が増えています。
企業がどんなに注意を払っていても、従業員の安易な発信により企業に矛先が向くことも少なくありません。一部から出た批判が広がり、「炎上」となってしまうこともあります。 
この章では、「炎上」の代表的な発生パターンを3つご紹介します。自社の従業員に注意を促すためにも、ぜひどんなリスクが潜んでいるのかを知っておいていただきたいと思います。

【炎上事例︱1】

2011年3月11日、東日本大震災が発生しました。それからしばらく、多くの企業がテレビCMを控えました。テレビCM枠はACジャパンが占め、バラエティ番組の多くが災害報道に切り替わりました。
そんなとき、都内のTSUTAYAのある店舗が、ツイッターで次のように発言します。

「営業再開しました!テレビは地震ばっかりでつまらない、そんなあなた、ご来店お待ちしています!」

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社会的にSNSリテラシーが向上した今となっては、瞬時に「これはマズいだろ」とわかりますよね。しかし、2011年当時は、SNSの拡散力や影響力を理解している人は今ほど多くありませんでした。案の定、ツイートは炎上します。

企業の真価とは、アクシデントやトラブルへの対処の仕方によって問われると言われます。こうしたことが起きてしまった場合、企業は誠意をもって対処しなければなりません。ところが、同店は批判を受け、次にこう発信したのです。

「先ほどは不謹慎な発言してしまい申し訳ございませんでした! 気分を害された方たいへん申し訳ありませんでした!!!!!!!」

発信者本人は、申し訳ない思いを「!」の数で強調したかったのでしょう。しかし、社会的には真摯に謝罪する場面で「!」の連発はふさわしいものではなく、むしろ軽薄な印象を与えてしまいます。

当然ながら火に油を注ぐ結果に。

事態はネット上の炎上にとどまらず、店舗のガラスが割られたり、直接抗議が来てしまったりと、店舗側は対応に追われました

店長が実名を出し、正式な謝罪文を公表することでようやく収束したのです。 
ツイートした店員は、軽い気持ちで発言をしたことと思います。大震災は東北での出来事であり、東京圏とは別世界で起きたことという感覚だったのかもしれません。

東北の被災者の方々、また東北にいる家族・友人を心配する方々の気持ちを思いやる想像力が欠如した状態で、来店客を呼び込もうとする気持ちが先走ったことが失敗につながってしまいました。



従業員によるプライベートアカウントでの不適切な発言

次は、従業員が個人のアカウントで不適切な投稿をした結果、雇用している企業に批判が寄せられるパターンです。

「飲酒運転しちゃった」
「ケンカをふっかけられたんで、相手をボコボコにしてやった」


――など、身内しか見ていないものと思い、違法行為や暴力的・非倫理的な行為を告白。それをたまたま見つけたユーザーが当人の過去のツイートなどをたどっていき、所属先が判明する、というパターンです。
所属先企業には、「このような人間を雇用している企業は信用できない」といったクレームが寄せられ、その批判はやはりネット上で拡散していきます。世の中で起こっている炎上で圧倒的に多いのが、このタイプです。

【炎上事例︱2】

2011年、国内のとあるスポーツブランドのショップに、有名なプロアスリートが来店しました。すると、その店に勤務する女性社員が個人のツイッターアカウントでこんなツイートをしたのです。

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「そういえば今日、〇〇が来た。ビッチを具現化したような女と一緒に来てて、何かお腹大っきい気がしたけど結婚してんの( ^ ω ^ )??」

同行していた女性はその選手の妻でした。
この侮辱発言でツイッターは大炎上。本社に批判が殺到し、スポーツ誌でも大きく取り上げられる事態に。その会社は公式サイトにお詫び文を掲載することとなりました。
そしてツイートした女性社員は自主退職に追い込まれたばかりか、ネット上に本名や顔写真、彼氏と見られる男性と撮ったプリクラなど、さまざまな個人情報がさらされることになったのです。こうした情報を消すサービスも出てきていますが、すべてを消すことはできません。その女性の名前や写真は、今もネット上に残っています。一度炎上してしまうと、個人にとっても会社にとってもネガティブな情報が、半永久的にネット上を漂うことになるのです。


【炎上事例︱3】

北海道のホテル従業員が投稿したツイートも瞬く間に広まりました。その従業員はとある男性アイドルが宿泊していることを、興奮気味に発信したのです。

「やばい。やばい。うちのホテルに〇〇くんが泊まったんだが、これから泊まった部屋に行ってくる」
「使用済みタオルhshsしといた」

※hshs(ハスハス)=匂いをかぐというニュアンスを含んだ、興奮したときの呼吸音を表すネットスラング。

さらには、友人と見られるフォロワーからの

「〇〇くんが使った空き缶がほしい」
というコメントに対して
「ペットボトル取っておいたから会うときに持って行く」
と返信。また、部屋にあったお酒やタバコの吸い殻まで写真に収め、投稿したのです。 
未成年ではないので男性アイドルが法律違反をしていたわけではないにせよ、アイドルはイメージが命。ファンをはじめ、炎上の仕掛け人たちからの攻撃は避けられませんでした。
「ヤバい」と思った従業員はすぐにツイッターアカウントを削除するも、先ほどの事例と同様、個人情報がさらされてしまったのです。企業の社員教育が甘かったということで、ホテル側も謝罪をするはめになりました。


いたずら・悪ふざけ投稿 
三つめの炎上発生パターンは、常識外れな悪ふざけ投稿です。寿司屋でお客さんが醤油差しの注ぎ口を直接舐めたり、コンビニの冷蔵庫の中に入ったりする様子をSNSや動画サイトに投稿する事例が頻発しています。

【炎上事例︱4】

2016年、28歳の男性が、コンビニで販売されているおでんを指で突く行為を動画で公開しました。この「おでんツンツン男」は、器物損壊と威力業務妨害の疑いで逮捕されるに至っています。
このケースにおいては、企業側に落ち度はなく、事故に巻き込まれただけの完全なる被害者です。しかし、これにより企業イメージがプラスになることはありません
コンビニでおでんを買おうとした人が、あの動画を思い出して何となく気持ち悪くなり、買うのをやめてしまうこともあり得ます。そうすると売上ダウンにもつながることになります。不特定多数の個人がお客となる業態では、なかなか予測・予防が難しい炎上パターンです。

ネット上では 「炎上仕掛け人」たちが目を光らせている

◆ツイートからわずか 1 時間で個人情報が丸裸にされる

有名人でもない一般個人のSNS投稿が、どのように炎上に発展し、世間に広く知られ、企業まで巻き込むことになるのか。その経緯についてご説明します。
前提として、炎上経験者の多くは、投稿内容の公開レベルを「限定公開」、つまり特定の友人にしか見られない設定にしています。しかし、フォロワーの中に一人でも強く問題視する人がいたり、炎上させたいという悪意を持つ人がいたりしたら、投稿のスクリーンショットとともに、瞬く間に広まっていきます。 
このとき拡散を得意とするのが「2ちゃんねらー」たち。彼らは情報収集力に長けており、ときに異常なほどの結束力を見せます。 
2ちゃんねらーの恐ろしさがわかるのが次の事例です。


ある女子大生がツイッターにこんな投稿をしました。

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「テスト、カンニングしたら楽勝だったよ」
彼女のフォロワーは49人。さほど多くありません。
このツイートが14時49分時点。その2分後に、2ちゃんねらーがそのツイートを発見。当人の知らぬところで、そのツイートが取り上げられ、スレッド(掲示板上で共通の話題の投稿をまとめたもの)が立ちます。

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「こういう場合、リツイートすべき?」
「いや、まだだ。情報が出そろってからにしようぜ」

彼らは、その女子大生に関する情報収集へ動き出します。情報収集手段としての王道は、別のSNSでのアカウント検索。多くの人は、SNSの箱が変わっても同じアカウント名を使用することが多いからです。こうして、女子大生はmixiやブログなどを暴かれ、幼稚園~大学までの経歴、住所、バイト先、部活など、ことこまかに調べ上げられてしまいました。これらの個人情報が出そろったのは15時33分。ツイートから 1 時間も経たずにこれだけの情報をつかまれてしまうのです

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ここからは「祭り」と言われるフェーズに入ります。別サイトへの拡散や、「電凸」という関係各所への抗議電話が一斉に始まるのです。
電話での抗議を受けた大学側は、突然のことで「現場を押さえていないから、処分はできない」と回答。
すると、その大学の反応までもがネット上にさらされます。こうして大学には、さらなる批判が押し寄せ、関係者は通常業務を中断して対応に追われることになるわけです。
この頃になると、本人の周囲が気付き始め、「カンニングしたの?炎上してるよ」と本人に告げます。そこで急いでアカウントを削除しても、後の祭り。ほぼ全ての投稿を魚拓(スクリーンショットによるアーカイブ)という形で記録されているため、拡散は続いていくのです。

このような事例では、トラブルを起こした過去が実名とともにネット上に残るわけですから、就職活動などにも影響を及ぼすことになります。何気ない発信が、その後の人生を大きく狂わせることにもなるのです。


こうしたリスクは企業においても同様です。

雇用する従業員が炎上対象となった場合、企業にも火の粉が降りかかります。抗議の電話やメールに対して、事態を把握しないままに煮え切らない対応をしたり、ましてや無視したり不遜な態度をとったりすると、それまでもがネット上にさらされます。クレーム電話への受け答えが録音され、ネット上に投稿された事例もありました。その対応が真摯さや誠意を欠くものであった場合、「企業姿勢」への糾弾が始まります。攻撃対象が個人から企業へ移っていくのです。そしてその経緯は、ネット上でさらされ続けることとなります。

企業としては、自社が炎上に巻き込まれるリスクも踏まえた上で、対応方針を決めて従業員に周知させることも重要といえるでしょう。

炎上を防ぐために、炎上してしまった後に 企業がやらなければならないこと

◆攻めたつもりが、守る立場に追いやられないために

企業がひとたび炎上に巻き込まれると、対応に追われて通常業務の遂行ができなくなるばかりか、対応を誤った場合は企業イメージを損ない、売上にもマイナス影響を及ぼしてしまいます。自社の炎上は何としても避けたいものです。しかし、何が火種になるかは予測がしづらいものです。尖った面白いコンテンツを作って仕掛けたつもりが、その感覚が世間に受け入れられず、意図せず攻守逆転してしまうケースもあります。


炎上に対して企業がやらなければならないこと。

それは、
「事前に防ぐこと」

「事後に誠実に対応すること」
この2つだけです。


当たり前のように聞こえるかもしれませんが、私の感覚でいうと、できている企業はそう多くないと思います。
「自社に限って、そんなことが起こるはずがない」
という慢心から事前の対策を怠る企業。
そして、炎上後に
「これ以上ダメージを大きくしたくない」
という自己防衛の意識が働き、少し事実を隠すつもりが、つじつまが合わなくなり嘘に嘘を重ねてしまう企業
――こう聞くと、他人事のようには思えないのではないでしょうか。
では、企業ができる対策についてご紹介しましょう。


◆社員教育によりSNSリテラシーを高める

事前の対策は「教育」につきます。
炎上には3つのパターンがあることをお話ししました。

多くの企業は

①「公式アカウントからの不適切な発言」
を不安視しています。そのため、私たちのようなSNSマーケティング専門企業に対しては、
「ソーシャルメディアポリシーやSNS運用マニュアルを作りたい」
といった相談がたびたび寄せられます。


もちろんそうしたルール作りも大切ですが、炎上案件で圧倒的に多いのは
②「従業員によるプライベートアカウントでの不適切な発言」です。
限られた予算を使うのであれば、社員教育に費用を割く方が賢明だといえるでしょう。 
日常生活とSNSは、切っても切り離せない関係になってきました。ならばSNSを禁止するのではなく、上手に付き合っていく方法を考えた方がいい。そんな考え方が浸透し、最近では企業だけでなく、高校生へのSNSリスク講座のニーズも増えてきています

「教育」といっても、発信内容の善悪の判断は、個人の道徳観によるところが大きいといえます。人の倫理観を正すのは難しいこと。
しかし、方法論を学べば、情報を知らなかったことで起こる炎上は避けることができます。そのために、私たちが提供する講座では、
「なぜ炎上したのか」
「どうすれば避けられたのか」

といったことを、実際の事例にもとづいて紹介しています。


例えば細かいところで言うと、個人が画像をアップする前に、不都合なものが写り込んでいないかチェックすること。背景に写ったダンボールの文字から所属企業を特定されたり、車のミラーに写った背景で住所を特定されたりと、思わぬところから情報が漏れていくからです。
軽いノリのつもりが、SNSの拡散力で一気に広がってしまう。その一度の炎上が、個人や企業の運命を左右するという意識を持ってもらうことが大切です。


◆さまざまな人の視点でのチェック体制を整える

企業の場合、「公式アカウントからの不適切な発言」に近い事例で、CMや広告に不適切な表現が含まれていたとして炎上するケースもあります。
例えば、女性に対しての差別的な内容になっていたり、過度に性的なものを彷彿とさせる表現が含まれていたり。
炎上してから見ると
「これは明らかにアウトでしょ」
というものも多いのですが、制作過程で誰も指摘することなく進んでいく事態が起きています。 
そこで湧いてくる疑問は
「どこかで止まらなかったのか」
ということ。
おそらく、CMプランの決定に関わった人が全員男性であったり同世代であったり、視点が画一的だった可能性があります。チェックがザルにならないためにも、いろいろな立場の人の視点でチェックするのが望ましいでしょう。


◆炎上してしまったら…とにかく真摯に謝り続ける

思いがけず炎上してしまったときはどうするか。あれこれと言い訳をしたり、自社をかばいたくなったりする気持ちもわかりますが、まずは誠実に謝ること。これ以外にありません。

実害の大きさによって対処法も変わってきますが、真摯に謝る姿勢は、絶対に必要です。どこかで聞いたような「こっちだって寝てないんだ」などと逆上するなんていうのは論外です。また、謝罪会見が必要なのであれば、会見での発言内容はもちろんのこと、会見までのスピードや、しかるべき立場の人間が登壇するかどうかの検討が重要です。これらを見誤ると、2次炎上を引き起こすきかっけになるので注意が必要です。

基本のスタンスは、

①真摯に謝罪すること
②謝り続けること
 (「一度謝ったからもういいでしょ」という姿勢は絶対にNG)
③どのように改善できるか提示し、約束すること

この3つです。


直接的な被害を受けた人以外は、時間の経過と共に、怒りは収まっていくもの。この基本を徹底的に守れば、事態は沈静化していくのです。


◆消費者と信頼を築いておけば、炎上も乗り切れる

企業が炎上を防ぐためにできることをお話ししてきましたが、最も重要なのは
「消費者と信頼を築いておく」ことだと思います。
ファンが多くいるブランドには、自浄作用があるからです。

たとえ、企業のメディアが発信すべき情報を誤るなどして「炎上」したとても、その運営者に人望があって、普段から信頼を築いていれば、過ちを受け入れてかつ応援を続けてくれる人はたくさんいます。「炎上した」という事実よりも、そのメディアのブランドや運営者の人となり、それまでやってきたことが評価されるようになるのではないかと感じています。

以前、炎上した食品会社を例に考えてみましょう。
まるか食品株式会社のインスタント焼きそば「ペヤング」が、消費者から異物混入の指摘を受け、自主回収をした事案がありました。ペヤングは昔から愛されてきた商品。販売停止が決まると、悲しみ嘆く声がツイッター上に溢れました。それだけでなく、異物混入を訴えたツイッターユーザーにまで批判が寄せられる事態となりました。

八つ当たりのように、被害者にまで批判の矛先を向けるのは間違っていると思います。
ですが、ペヤングの販売が再開されたとき、「本当に大丈夫かよ」といった懐疑的な声より
「待っていました!」といったポジティブな声の方が大きかったのが印象的でした。
これはやはり、そのカップ麺のファンがそれだけ多かったということになります。


会社がそれまで、味の追求を続けるなどしてファンを大切にしてきたからこそ、たとえ炎上しても、顧客が離れなかったのです。


ファンを獲得しておくと、炎上とまではいかないにしても、否定的な意見やクレームを、ファンが打ち消してくれるという作用が働きます。


例えば、とあるWEBサービスがリリースされたとき、入力フォームに不備があり、スマートフォンからアクセスしづらい状態が何時間か続きました。ネット上に「できないじゃん」という不満が噴出する中、とあるユーザーさんが
「iPhoneだったら〇〇のやり方でできるよ」
と、対処法を自主的にシェアしたのです。
企業が考え及ばないようなトラブルが起きたとき、ファンが自ら火消しをしてくれる。企業にとっては、本当にありがたい存在です。
このように味方になってくれる「ファン」を増やすこともまた、SNSを活用することで可能となります。次の章からは、SNSをうまく活用してファンを獲得していく方法をご紹介しましょう。



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