NHK短歌 2020年下期

続いて短歌です。

私が短歌を始めるきっかけとなった小島なおさんに「お金」で入選をいただいたことが2020年のピークであり、人生のピークにもなりました。

「お金」
500円玉がヂャリンと鳴るやっとあなたの町の鉄塔が見える

「寅・虎」
最後まで仲良く走る約束を忘れて先に行くタイガースファン

「美味しそうな歌」
先づまぐろ続いていくらたこ穴子不意にあなたは不思議となりぬ

「電話・スマートフォン」
君のいない5インチなんか世界とは呼ばないけれどキャベツが届く

「卯・兎」
無重力うさぎのように跳ねまわるベッドの上の無垢な盤上

「破」
夢破れし者より吉報届きしも我は砂塵に猶塗れたり

「龍・辰」
錆びついた雨戸を引けば床の間の龍がわずかに眼を開きおり

「手紙」
伝えれば壊れるような想いありポストカードをそのまま送る

「怖い歌」
前夜祭から付き合いはじめたさきちゃんが頭から血を流す三組

「蛇・巳」
夏降れば君との記憶の真ん中に落ちたる蛇の抜け殻太し

「鏡」
鏡台の壜たち並び替えながら夕立の中の誰かを想う

「もし」
振り向いてもしも名前を呼べたなら君に変わったはずのスカート

「馬・午」
金に成り損ねて動けなくなった桂馬のように見ている天井

「鞄」
同じに見えているかもしれんけどうちらの鞄みんな違うよ

「変」
変わりゆく車窓の景を追いかけてまだ知らなくていいこともある


「お金」以外では「美味しそうな歌」「龍・辰」「変」で佳作をいただきました。

今年は連作の公募にチャレンジしようと思っています。
応援してもらえたらたぶんがんばれます。よろしくおねがいします。

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