わたしのゆめ
はたちももうすぐ終わる。二〇二四年の春が、もうそこまでやってきている。
最近、ふと考えるのだ。何のために生きているんだろう。今までの人生で、何十回、何百回、何千回と自分自身に問うてきた問い。だけど、その答えを出すタイムリミットは、刻々と近づいているのだ。就活が。
何がやりたいんだろう。何ならできるんだろう。
昔はアイドルになりたかった。根拠もなく、なれると信じていた。きらきらした世界に心の底から憧れて、わたしもこんな風になるんだ、みんなに笑顔を届けるんだ、と。地元のダンス教室に通って、親の前で自慢げに踊っていた日々が懐かしい。どれだけ追いつこうとしても追いつけないものがあることに気付いてからは、そんな夢を持っていたことすら忘れたようにダンスから離れた。
純粋に夢を持つことができなくなった今、わたしは何を夢見るんだろう。
お茶を飲んで一息ついてみる。思い浮かぶのはやっぱりこれで、頭を振っても消えてくれない理想にため息が出る。
人に笑ってもらいたい。人生捨てたもんじゃないな、悪くないなって思ってもらいたい。人のために生きたい。
まだそんなことを、考えている。
生きるのが下手で、自暴自棄になっていた小中学生時代。いろんなものに助けを求めて、この最低な世界からなんとか逃れようとしていた高校時代。今も精神安定剤を飲んで、毎日自己嫌悪と闘っている。細くて千切れそうな糸で、この世界にしがみついている。
でも、どれだけ泣いても、自分を傷つけたとしても、生きている。
死ぬにはもったいないのだ。あのバンドのライブに行くまでは。大好きな芸人が優勝賞金を手にするまでは。阪神タイガースがまた日本一になるまでは。
わたしにとってのこの存在に、わたしはなりたい。誰かにとっての、死ぬにはもったいない理由になりたい。
バンドマンになれるほどギターが上手いわけではないし、芸人になれるほど口が達者ではないし、阪神タイガースには来世でもきっと入れない。
そんなわたしのゆめは、なんだろう。
三回生が近づいてきて、周りのみんなはスーツを着始めて、わたしはまだスウェットを脱げないままで、春が来る。
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