詩 雨

しう、と読みます。 どうしようもない世の中だけど、言葉で生きていきたいです。

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しう、と読みます。 どうしようもない世の中だけど、言葉で生きていきたいです。

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音楽と生きていく

 盆地の夏は暑い。設定温度28度じゃ賄えない。コンビニから自転車を走らせ、セミの声から逃げるように坂を下っていく。  アブラゼミか、ミンミンゼミか、ヒグラシか。短い寿命に抗うように、体いっぱい音を鳴らしている。わたしも背中にギターの存在を感じながら、セミの羽みたいだな、なんて思う。さっきまで爆音でかき鳴らしていたギターも、シールドを抜けばおとなしくなる。羽をうまく折りたたんで静かに収まった、重い重いギターケースを担ぎなおす。  「欠席数が全体の3分の1を超えて、評価対象外

    • 芸人になりたかった。

      芸人になりたかった。 勇気を出して見に行ったお笑いライブ、泣きながら見た単独の配信、 寝られない夜に聴いたラジオ、長文で返してくれたDM どれだけ救われたか。どれだけ笑わせてもらったか。 SNSで4月からNSCに入ったという投稿を見るたび、泣きそうになる。 芸人を目指していると堂々と言える人が、羨ましくて仕方なくなる。 クラスの端っこにいるわたしには、何も面白いことは言えないし、 声も小さくて人を笑わせたことなんてない。 芸人になって人を笑顔にできるってどんなに素敵だ

      • 4月も終わる 毛布をしまう

         大好きな春があっという間に散ってしまって、よく行くカフェにはもうかき氷の看板が出ていた。そろそろ毛布をしまわなきゃ。  新学期が始まる日、どうしても不安で夜中まで眠れずnoteを書いた。(『泣いても笑っても今日から新学期』)  その続きを少しだけ書いてみる。  朝、目覚ましより早く起きた。遅刻する夢を見たのだ。最悪の目覚め。  家を出る1時間半前には起きていたのに、なぜか出発はギリギリ。ご飯を食べていたら残された時間は15分。適当な化粧も歯磨きも、懐かしいようで苦しい

        • 好きなものだけ抱きしめて

           中高校生の頃、学校を休みがちで家でテレビや携帯ばかり見ていたわたしは、いろんなものに助けを求めた。毎日毎日生きる意味を探して、わくわくどきどきする何かを求めていた。  そんな時に出会ったものが、ギターで、バンドで、野球で、お笑いで、ダンスで、ラジオで、、、わたしの生活を彩る数えられないくらいのきらきらするものなのだ。  そんな大好きなものを自己紹介代わりに書いてみる。  音楽との最初の出会いは6歳。テレビで見たアイドルだった。48グループからハロプロ、坂道、一通り全部

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        音楽と生きていく

          泣いても笑っても今日から新学期

          もう深夜の2時をまわってしまった。 日が昇れば、春学期が始まる。 再履修でいっぱいの時間割を見ながら、深呼吸をする。 空気を吸っているはずが、肺に溜まっていくのは重い重い何か。 夕食後に飲んだ薬もまだ効いてこない。 わたしはこの半年間、大学に行けなかった。 一日中ベッドの上で、窓の外を季節が流れていくのを見ていた。 自分がわからなくなったし、何がこうさせているのかもわからなかった。 寝て、起きて、お腹が空いたら買いだめの缶詰を食べて、また寝て。 何も考えたくなかった

          泣いても笑っても今日から新学期

          三月場所は勝負の場所

          相撲が好きだ。 と言うと、返ってくる言葉はたいてい決まっている。  「えー、若いのに珍しいね」  珍しい。十両から結びの一番まで、14時半から18時までの約3時間半、特に幕内の2時間は絶対に見逃せない。若い人たちにとっては、部活に勉強にバイト、なんでもフィーバータイム。まわしを着けた力士が取っ組み合って、それをただただ眺めているなんて、確かに珍しい大学生だと思う。  相撲を好きになったのは大学生になってからのこと。  大学を休んでしまった日、部屋で一人でいるのが寂しく

          三月場所は勝負の場所

          とけたアイスは心の中に

           ずっと読みたかったエッセイ本を通販で買った。注文ボタンをクリックした次の日には手に取れるのだから便利な世の中だ。  私はエッセイがものすごく好きだ。長い文章を読むのがしんどいときも、エッセイならするっと読める。人が感じた日常の些細な瞬間のきらめきが、エッセイの中では生き生きとしたまま閉じ込めてある。読んでいる私も、その場に一緒にいられる。巧みな表現に痺れて、うおー、私もこんな文章を書きたい!と勢い余って、文章を書き殴りたくなる。そうしてこんな文章が出来上がる。  その日

          とけたアイスは心の中に

          本の海に揺蕩う

           図書館でアルバイトを初めて一年になる。  規模の小さな図書館だけれど、一生かかっても読み切れない量の本がお行儀よく棚に並んでいて、未だに出勤するたびわくわくする。そんな棚の前を、今日もハンディモップを持って行ったり来たりしながら、背表紙から本の内容を想像する。わたしは想像の中で世界中を飛び回り、タイムマシンに乗り、自分でない自分になる。  静かな図書館にはわたしを邪魔するものは何もない。心ゆくまで想像の世界を楽しみながら、棚にたまった埃を払う。  一時間に一度、館内を

          本の海に揺蕩う

          わたしのゆめ

           はたちももうすぐ終わる。二〇二四年の春が、もうそこまでやってきている。  最近、ふと考えるのだ。何のために生きているんだろう。今までの人生で、何十回、何百回、何千回と自分自身に問うてきた問い。だけど、その答えを出すタイムリミットは、刻々と近づいているのだ。就活が。   何がやりたいんだろう。何ならできるんだろう。  昔はアイドルになりたかった。根拠もなく、なれると信じていた。きらきらした世界に心の底から憧れて、わたしもこんな風になるんだ、みんなに笑顔を届けるんだ、と。

          わたしのゆめ

          クリームコロッケと深夜高速

          通院の帰り道、必ず駅前のスーパーに寄る。 そこにはクリームコロッケがある。 なんの変哲もないよくあるクリームコロッケなのだけれど、わたしはいつも2つ入りのそれを買って、ひとつを駅のベンチで食べる。 もうひとつは、明日の朝の楽しみに。 気分が良ければノンアルコールのレモンサワーも一緒に飲む。少し前までは毎日のようにお酒を飲んでいたのに、薬を始めてから飲めなくなった。ノンアルは飲めば飲むほど身体が冷えていって、寂しくなって、聴いていたロックミュージックの音量を上げる。 通

          クリームコロッケと深夜高速

          note初投稿。真っ暗な部屋で自己満足で書いていた文をどきどきしながら投稿して、誰かに読まれるのかな〜誰も読まないよな〜なんてしばらくほっておいたらメールが来て、「作品が読者に届いています!」の言葉でちょっと泣いちゃった スキを押してくれた方が今日ちょっといいことありますように

          note初投稿。真っ暗な部屋で自己満足で書いていた文をどきどきしながら投稿して、誰かに読まれるのかな〜誰も読まないよな〜なんてしばらくほっておいたらメールが来て、「作品が読者に届いています!」の言葉でちょっと泣いちゃった スキを押してくれた方が今日ちょっといいことありますように

          眠くないわたしへ

           目を瞑って三十を数える。  覚えたての数字を自慢げに読み上げ、三十とともにお風呂から飛び出す幼児を思い浮かべる。わたしにも確かにあったその光景に思いを馳せながら、幼いわたしと一緒に数えてみる。  十まで数えた頃だろうか。あたたかな布団に潜るわたしの上に、重い何かが乗っていることに気付く。その正体は、わたしのため息。あれやらなきゃいけないんだった、これもやらなきゃいけないな、あぁ今日も一日無駄な時間を過ごしてしまった。そんな考えが重いかたまりとなってわたしの身にのしかかる

          眠くないわたしへ