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虹を見るたびに見知らぬ人に声を掛けた。

傘屋 ひと時
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『私は臆病で人見知りで、裏表があって、
 言い尽くせないほど、色々弱さがあっても…。
 人と喜びを分かち合いたかったから…。』

ここ、2~3年の間、ひとりで外出している、
      雨、曇りの日…。

狐の嫁入り。雨が降りながら、日が
              照らしている空。

私は、ほぼ無意識に太陽とは反対側の
             空を見渡している。

『(虹が出ないかな…。)』と
           心の声が小声でもれる。

最近、見つけた虹はちょうど、
          地元の氏神様の神社で…。

私の心が晴れていないように
          小雨が同じように降った。

傘を差さなくてもいいくらいの優しい雨だった。

向こう側から、見知らぬ6~70代の奥さんが、
        こっちへ来るのが目に入った。

どうしても、虹を教えたくって、勇気を出して、
                声を掛けた。

「こんにちは。虹が綺麗ですよ。」と。

声を掛けた奥さんは、ちゃんと止まってくれて、
             話に応えてくれた。

「あぁ、本当!虹だわ!」と言ってくれた
              ような気がする。

緊張しすぎて、奥さんの話をあまり
          覚えていない自分がいる。

それでも。

現実感があまり感じられない自分でも、
           一緒に虹を見たかった。

「さっきまで、2重の虹でしたよ。」とか、
                伝えたくて。

私が、スマホで虹を写していたのを見て、

奥さんも自分のスマホで写そうと、

スマホを探していたけど、見つからなくて。

「こうゆうのって、探せば探すほど、
      なぜか、見つからないんですよね。」
と、私は、見知らぬ奥さんをフォローしたくて、
               ポロっと言った。

奥さんは、探すのをあきらめたけど、
           自分の事を話してくれた。

”今日、差し歯が壊れてしまったから、
歯医者さんへ行って、入れ歯になって心配だった。
けれど、ちゃんとぴったり合って良かった。„と…

「じゃあ、虹も見れて、さらにラッキーですね。」
と私は話して、段々緊張度が高くなってきたので、
私から切り出して
「声を掛けて、話を聞いて下さって
          有難うございました。」
                と挨拶した。

奥さんも「ありがとう」と言って帰っていった。


私は、氏神様の神社に入るフリをして、

また、戻って虹を消えるまでで見つめていた。

(あぁ、虹って端から順番に消えるんだなぁ…)
  
と思いながら、初めて虹が出始めて消えるまで、
               見守っていた。

見守っている間、若い男の子たちが
             通り過ぎて行った。

けど、流石に若い人たちに声を掛ける勇気は
             まだ足りなかった。
(多分、何もない空を見ていた自分は、
         変な人と思われる気がした)

これからも、私は、虹を見つけるたびに、
見知らぬ、奥さんや、おじさん達に声を掛けたい。

現実感のない自分の感覚はあるけれど、

一緒に虹を見たのは、まぎれもない現実だから。

その時、その場所で、一緒に息をして、
同じ虹を見ていたのは、まぎれもないものだから。

また、「綺麗な虹、出てますよ。」
            と声を掛けよう。

奥さんと別れたら、ちょうど小雨が止んでいた。