【観劇】やられたよ、すっごく細かいとこだけど、さすがうえひそ愛知ソワレ。

 愛知初日。この人だけは本当に「安定してる」もしくは「安心して観ていられる」植田圭輔さん。毎度びっくりするくらいの涙と、その感情を放出する芝居に圧倒される。しかも、初日からほぼ変わらぬ安定感を最後まで見せつける俳優。でもたまに「やられたわ、、、なにそれ、その秘密兵器まだ隠し持ってたんだ、、、」ってなる瞬間がある。それが愛知に2回あって、このまま帰ったら今日も眠れないので、書き残しておくことにする。はい、ネタバレしかありません。まぁゲーム原作だし、配信もやってるし、でも大阪まだだし、踏みたくない人は回避してね。

「あれは、、、いつもあんなにセリフ言えなくなるんですか?」

 初見で、ネタバレもほぼ踏まずに観劇した観客の当たり前の感想。そう、嗚咽で息が思うように吸えない状態だった。いつもの「間」より、はるかに物理的な時間がかかってた。絞り出すように、でも役の気持ちは切らしてない。でも明らかに、苦しさと「やっと言葉にした」という芝居だった。その数秒だけで、心臓が跳ねた。もう4回目の観劇だが、初めてのことだった。「俺は…… 」亡くなってしまった家族を忘れないと伝える、でもうまく言葉にできないという芝居にすり替わっていた。でも、シーン自体の意味は同じ。ただ、彼がいつもより繊細に迷っている、そして決心をゆっくりした、という印象になっただけ。計算なら天才、もし事故なら、、、それでも天才。

 そして翌日。マチネは通常通りだった。いつもの安心感のある、それでも開場中が号泣回避できないシーン。やはり昨日のソワレは事故?……という考えがよぎる。しかしながらソワレ。またしても「やられたよ」という瞬間がやってきた。前日の同シーンの少しあと、去ってゆく家族を引き留めるセリフ。

 「……ぁた………ぁぇるかなぁ、さんにん!ぇ………!」

「また会えるかな、3人で」という台詞が言えてなかった。「3人」にいちばんチカラが入っていた。最初と最後は十分な間と余韻。数時間前のマチネと言葉は全く一緒なのに、受ける印象には全く同じところがない。「会えるよ」という言葉と共に掴まれた肩。その手を掴んでしまう。すると、それがきっかけだったかのように、一気に眠りの世界に引き込まれてしまう……まだ話したかったのに。そして会いたかった家族とのひとときの逢瀬が終わってしまうのだ。

 普段、台詞が言えなくなることなんかほとんどない。ローテンションの役だろうが、逆にハイテンションだろうが、聞き取れる台詞が安定感の理由。そんな俳優の「セリフが言えない」とこまでの「役を飛び越えた芝居」……そう、劇中にそういうダメ出しをもらうシーンがあるのだ。それを、別のシーンで実演しちゃってるのだと、私はうけとった。恐るべしうえひそ。愛知までいった甲斐があるというもの。まだまだ繰り出してくるんだろうな、きっと。この作品を卒業するその日まで。全ての公演を見届けられないのは残念な限りだが、思う存分やり尽くして欲しいと心から。

よかった。これで今日は存分に眠れる。おやすみなさい。



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