20220416_グループ移動重合

前回のnoteにてグループ移動重合を記載しましたが、あまりどういう重合に展開されるのか知らなかったので少し深堀りして調べました。

教材はリビング重合の大家のMatyjaszewski先生、H. E. Mueller先生によるテキストです。

https://amzn.to/3KQ7YqA


■グループ移動重合の機構
グループ移動重合はシリルエーテルがド―マント種であるとともに、活性種については2パターンの反応がある。求核剤が付加した5配位シリコンイオンの状態で協奏的なモノマー付加とシリル基の移動が起きている(反応1)と5配位シリコンイオンからシリコンが脱離してエノラートイオンとなってからモノマーと反応する(反応2)があります。

1,2の機構のどちらかで進むかは求核剤のケイ素との親和性によって決まり、ビフルオリド(HF2-)のようなものは反応2で進行します。一方で酸素アニオン求核剤などの比較的シリコンとの親和性が低い求核剤は反応1,2で進行します。

また、反応2で重合が進行する場合は求核性の高いエノラートイオンによるbackbiting反応が懸念されますが、グループ移動重合の場合は下記式のような平衡によって、アルコールの脱離が起きず、停止反応が起きないことから重合がLivingに進行するそうです。

画像1

■グループ移動重合を利用する機能性高分子材料の分子設計
こちらの論文を読んでいました。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kobunshi1952/41/2/41_2_90/_pdf/-char/ja

ドラッグデリバリーにおいて体内の目的の箇所で所望の物質が吸収されることが望ましいですが、なかなか吸収量をコントロールすることは難しいです。
ここでアクリレートモノマーのGTPが制御可能であること、アルキルシリルエーテルの分解反応にpH依存性があることから胃から腸に運ばれる過程で分解するという知見から、アクリレートモノマーのエステル部位にアルキルシリルエーテルで結合した薬理活性物質ポリマー鎖あたり一定量を担持させ、体内の目的の箇所で薬理活性物質がポリマー鎖から外れて体内に吸収される系を開発しています。

■感想
リビング重合の中でもGTPである必然性があるのかはよくわかりませんでしたが、このようなポリマーの使い方があるのかと感心しました。

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