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【医師のイギリス公衆衛生大学院留学】英語試験の話①〜どの試験を受けるか〜

公衆衛生大学院出願のために必要な英語試験

 欧米の公衆衛生大学院の中でもいわゆるMaster of Public Health(MPH)をはじめとした、Masterのコースに出願する場合、日本人は英語のスコアをクリアする必要があります。大きくTOEFL iBT(以下TOEFL)かIELTS Academic(以下IELTS)のどちらかでスコアメイクをする方が多いですが、最近は新興勢力としてDuolingo English Test(DET)のスコアを受け付けてくれる大学も増えてきているようです。

 少し前までは北米の大学院を受験する場合はTOEFL、イギリスはIELTSというような印象がありましたが、私が受験準備をした際のほとんどの大学はこれらの試験をどちらも受け付けてくれるところが随分と増えた印象でした。ただしどちらかしか受け付けてくれない大学も未だにあるので、実際の出願時には募集要項をよく確認する必要があります。DETが使える大学はまだ多くはなさそうですが、確実に増えてきているようです。

 私はこちらの記事にも記載しているように、2023年の留学開始に先立って約6年間くらいかけてダラダラとこれらの試験を受けてきたことになります。元々英語は好きではありましたが、日本生まれ日本育ち・長期留学経験なしの自分にとってトップスクールへの入学要件を満たすためのスコアに到達するのはそれなりに大変でした。まず最初にTOEFLとIELTSを両方とも受けてみましたが、下記のような理由でIELTSに集中することにして、途中少しDETに浮気しつつも、最終的にはIELTSで目標スコアに到達しました。

TOEFL

 TOEFLの特徴は、
 ・リスニング、リーディング、ライティング、スピーキングの4つのセクションからなる
 ・合計所要時間は約3時間
 ・試験会場で1人1台のコンピュータを使って受験する
 ・スピーキングセクションでは、画面に向かって話し、音声が録音される(対人ではない)
 ・チェックインした人から試験が開始されるので、自分と周りの受験者が同じ進捗で進まない
 ・各セクションが0~30点で採点され、満点は120点
 ・トップスクールの公衆衛生大学院出願の目安は100点前後と言われている
 ・受験費用はUS$245(2023年7月現在)
 ・獲得スコアは2年間有効
 などが挙げられるでしょうか。
 私はTOEFLを1度受けただけでこの試験でスコアを伸ばすのは大変だと思い、2度目の受験はありませんでした。その理由として、スピーキングが対人ではなく画面に向かって話す必要があることや、周囲の受験者と進捗が同じではないことからどうしても気が散ってしまうことなどが大きかったです。当時のTOEFLのスコアを残っておらず記憶が怪しいですが、確か80~90点程度だったような気がします。TOEFLでスコアを伸ばしている人は本当にすごいなと思いつつ、練習(慣れ)と戦略が重要な試験である気がしました。

IELTS

 IELTSの特徴は、
 ・ペーパー版とコンピューター版から受験方式を選べる
  (ただしコンピューター版の受験会場は2023年7月現在で全国5ヶ所しかない)
 ・リスニング、リーディング、ライティング、スピーキングの4つのセクションからなる
 ・合計所要時間は2時間半+スピーキング約15分
 ・ペーパー版は紙の問題を見ながら、紙の用紙に鉛筆で解答する
 ・スピーキングセクションは、面接官との1対1の面接形式
 ・同じ会場にいる受験者は同じ進捗で進む
 ・各セクションが0.5刻み9点満点で採点され、4技能の平均がover all band scoreとなる
 ・トップスクールの公衆衛生大学院出願の目安はover all 7.0前後から
 ・受験費用は25,380円(2023年7月現在)
 ・獲得スコアは2年間有効
 ・コンピューター版は3~5日で結果が返却される
 などが挙げられるでしょうか。
 私はTOEFLと比較してスピーキングが対人の面接形式であること、周囲の受験者と同じ流れで試験が進むため集中できること、東京在住であったためコンピューター版を実施している会場へのアクセスが問題なかったこと、などからIELTSのコンピューター版に集中することにしました。全部のスコア記録を残していないのですが多分全部で5回は受けています。

 私の大きな反省点として、IELTSには通常のものとIELTS UKVIがあることを渡航直前期に知ったことがあります。IELTSとIELTS UKVIは試験内容・難易度は全く同じなのですが、IELTS UKVIはビザ申請のために用いることができるので開始前のセキュリティチェックが一段厳しいものとなります。各校の受験自体は通常のIELTSで問題なくでき、スコアが十分に高く無条件合格が得られればそのまま学生ビザの申請が出来ます。一方、無条件合格にならない限りイギリスの学生ビザ申請のためにはIELTS UKVIの受験が必要になります。どういうことかと言うと、イギリスの大学院は英語スコアが合格基準を満たさないための救済措置としてPre-sessional Courseというものを設置しているところが多いのですが、そもそもこのPre-sessional Courseに参加するためのビザ発行(本コースのビザとは別扱い)のためにIELTS UKVIのスコアが必要となるのです(必要なスコアは低い)。私は2023年春の段階で、通常のIELTSでoverall 7.5を持っていたのですが、それが夏には有効期限が切れるために「条件付き合格」でした。春〜夏のどこかで受け直して、万一良い点が取れなくてもPre-sessional courseに行けば良いやと思っていたら、Imperial側からの通知で上記のような仕組みであることを始めて知りました。通常のIELTSで無条件合格のスコアが取れなければPre-sessionalへの応募さえもできなくなることに気づき、大急ぎでIELTS UKVIを受けに行ったという流れがあります。

DET(Duolingo English Test)

 私が進学予定のImperial College Londonはじめ、多くの大学がDETのスコアも受け付けています。DETの特徴は、
 ・自宅で受験できる!
 ・申し込んだらその場ですぐに受験できる
 ・所要時間は1時間
 ・リスニング、リーディング、ライティング、スピーキングの技能が見られているが、それぞれを組み合わせたような問題しか出ない(問題を聴いて答えを書く、のような)
 ・問題は総じて他の試験と比べて短く簡潔
 ・ディクテーションや、紛らわしい選択肢の中から本当に存在する単語を選び出すなどの問題が出る
 ・総合スコアと4技能(Literacy, Comprehension, Conversation, Production)のスコアが出る
 ・例えばImperial College Londonの出願目安は125 overall以上で、各技能が115を下回ってはいけない
 ・受験費用は通常US$59(2023年7月現在)
 ・受験後通常48時間以内に結果が返却される(追加$40で12時間以内の結果返却に出来る)
 ・無料で15分程度の練習を何度でも受けられる
 ・対策はTOEFLやIELTSほどまだ充実しておらず、YoutubeのTeacher Lukeほぼ一択
 ・結構な頻度で結果が無効になって受験し直しとなる
 などが挙げられます。
 とにかく自宅で安く短時間で受験できる点が最高に良く、IELTSが伸び悩んだ時にDETに浮気した時期がありました。DETはユーザーインターフェースも何だか可愛らしく、問題も比較的解きやすいのですが、対策が非常に取りづらいテストでもあります。何度か受けていたら慣れてスコアも上がるだろうと思って合計4回受けたのですが、毎回Overall 125以上になるものの、Conversation and/or Productionのアウトプット技能のスコアが全然上がらず、Imperialの無条件合格の基準を満たすことができませんでした。そうこうしているうちにIELTSのスコアが無条件合格基準に到達したので、DETの受験は終わりました。DETは対策が取りづらい一方で、あまりコツなども存在しないので、受験者の英語力を割と安定した結果で反映させる良い試験だなとも思いました。

おわりに

 IELTSのスコアを上げるために試行錯誤をしましたが、結局良いスコアが出ても2年で有効期限が切れてしまうので、計画的な受験が必要です。1回の受験料も結構高く、自分は多分英語試験を受けたり関連した問題集の購入だけで合計20万円くらいは使っただろうなと思います。ただTOEFLもIELTSも4技能をバランスよく伸ばさないといけない試験のため、総合的な英語の勉強と継続には役立ったと信じています。IELTS対策のために実際に自分がどんなことをやってきたかはまた別の機会にまとめようと思います。

 


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