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不思議な「介護等体験」について

以下で述べることは,私が所属していた学部で受けた説明に基づいているため,全ての大学,全ての学部でこれが正しいと言えるものではないということを,ご理解いただければと思います.

「介護等体験」とは

みなさん,「介護等体験」というのをご存じでしょうか.

「介護等体験」とは,小学校及び中学校の教諭の普通免許状取得希望者が参加を義務づけられている,体験活動です.
この体験の目的は,「教員が個人の尊厳及び社会連帯の理念に関する認識を深めることの重要性にかんがみ教員の資質向上及び学校教育の一層の充実を図る」です.

「介護等体験」の根拠となる法律として,通称「介護等体験特例法」があります.

介護等体験特例法
小学校及び中学校の教諭の普通免許状授与に係る教育職員免許法の特例等に関する法律

私が所属する学部では,合計7日間(社会福祉施設で連続5日間,特別支援学校で連続2日間)行います.

疑問点

介護等体験に向かい,いくつかの注意事項が示されました.

・授業ではないが,アルバイトやボランティア、サークル活動とも違う.
・実習生が感染源となる事態があってはならない.
・指輪やマニキュア,イヤリングは不必要なので禁止.
・抗体検査や介護等体験費用(合わせて10,000円以上)は自己負担.
・「受け入れてもらっている」という精神を大切に.

これらを示されたとき,全てを納得できる人はいるのでしょうか.

私はこれらに対し,以下のように感じました.

・法に則って参加するのに「受け入れてもらっている」という考えを持つべきなのか.この精神を否定するわけではないが,参加者に対して求めるというのは理解ができない.
・法に則った体験であることを強調されるたびに,費用が自己負担であることに疑問を感じる.ボランティアよりもたちが悪いのではないか.
・相手方の健康を考えるのであれば,行かないことが最善になってしまう.
・指輪やマニキュアを否定されることについて,大学の考えが示されたものなのか,受け入れ先の考えが示されたものなのか,もし後者であればそのような場所で誰が働きたくなるのか.これについて納得できる理由を示されていない.

受け入れ先の声を聞きたいのですが,この介護等体験において,受け入れ先に対する不必要な電話は禁止されています.

せめて自己負担だけでも納得したいので,後日,学部学生係に伺おうと思います.

R3.2.8追記(費用について)

ここで言っている抗体検査は,「麻疹IgG抗体(EIA法)検査」のことですが,これは保険適用外だそうです.
検査請求額¥6,790(初・再診料¥2,880,検査¥3,910)でした.

R3.2.25追記(学生係の考え)

先日,本学部学生係に向けて以下について問うメールを送りました.

なぜ介護等体験に関わる費用(抗体検査や介護等体験費用)は自己負担なのか.

これに対し,以下の返答がありました.名前については,一応仮名にしています.

理学部学生係からです。ご質問についてです。

1、なぜ介護等体験に関わる費用(抗体検査や介護等体験費用)は自己負担なのでしょうか。

 介護等体験の法的根拠は下記のとおりとなっています。
 「『小学校及び中学校の教諭の普通免許状授与に係る教育職員免許法の特例等に関する法律』(平成9年法律第90号)に基づき、特別支援学校や社会福祉施設(老人福祉施設、障害者支援施設等)において、7日間障害者、高齢者等に対する介護、介助、これらの者との交流等の体験を行うことを、小学校・中学校教諭の普通免許状の授与の要件とするもの」
 この法的根拠から中学校の免許取得には必ず必須となります。

 また介護等体験としては特別支援学校での2日間社会福祉施設での5日間の体験が必要です。
 2日間の特別支援学校での体験については、特に費用は不要ですが5日間の社会福祉施設での体験は、鹿児島県社会福祉協議会が実施しており社会福祉施設等受入調整事業実施要項によれば、介護等体験費用としては、社会副施設等への協力費(5,000円(1人1日当たり1,000円×5日))、鹿児島県社協調整管理費3,500円、介護等体験ノート(学生用)1冊500円となっております。
 介護等体験に参加するためには社会福祉協議会が実施しているこの事業に参加することでしか今のところ皆さんは方法がありません。

 また、抗体検査については、特別支援学校、社会福祉施設等、身体の不自由な方や障害のある生徒さん等と接する立場になる参加学生にとっては、体験先で麻疹等をうつさないようにするため義務付けられています。
 麻疹抗体検査は教育実習でも義務付けられています。
 こちらの費用の自己負担についても現在そのような制度となっているとしかお伝えできません。

 田中さんにお伝えしたいのは教育免許状取得は、強制ではありません。
 あくまでも学生さんが自発的に免許取得を目指す課程でかかる自己負担と
 思っていただくしか無い
かと思います。

 あと補足しますが、教員免許状については4年生で一括申請をしますが、
 その際、1免許状につき3,300円鹿児島県に納入が必要です。
 もし、中学数学・高校数学・高校情報を取得する場合は、9,900円かかる計算となります。
 いずれにしろ、自己負担は免許取得まで関わってきます
 田中さんの方でどうしても納得がいかないようであれば、今なら教職取得辞退も 十分できますので、じっくりお考えください

 少しずつ,噛み砕いていきたいと思います.
 まず,介護等体験における費用の自己負担は,5日間の社会福祉施設での活動で発生しているということですね.そしてこれは,間に「鹿児島県社会福祉協議会」という団体を挟んでいることから発生しているとわかります.鹿児島県(2019)は鹿児島県社会福祉協議会について「地域福祉の推進を図ることを目的とする団体で,地域福祉推進の中心的役割を担う民間団体」と説明しています.この民間団体が実施する事業に参加しているから,費用の自己負担が発生しているということになります.これは十分な理由となっているでしょうか.以下のような二つの疑問が当然に浮かぶのではないでしょうか.一つ目は「なぜ行政ではなく民間団体が社会福祉事業を行っているのか」,二つ目は「なぜ鹿児島県社会福祉協議会に払う費用を学生が負担するのか」です.この段階では,行政が必ず執り行うべき事業として社会福祉事業が見られていないように感じられるので,そんなことはないだろうと少し調べてみました.ウィキペディアの社会福祉協議会についてのページでは(あまり引用として使いたくないですが,参考程度に),社会福祉協議会は戦前から戦中に設立した団体であり,民間団体ではあるが法律(社会福祉法)に定められ運営資金の多くが行政機関の予算措置によるものとあります.なかなか複雑な事情が見えてきましたので,一旦,これについては後日考えたいと思います.
 次に,抗体検査についてですが,義務付けはされているものの,保険適用がされていない点も踏まえると,大分曖昧な位置にある義務なのだと思います.
 最後に,1免許状につき3,300円を鹿児島県に納入することについては,またの機会に考えます.また,最後の教職取得辞退に関する学生係の気遣いですが,あまり書いてほしくなかったです.費用の自己負担を理由に教職取得を辞退するというのは誰も考えたくないでしょうし,ただでさえ中学校・高等学校の教員数が減少している中,教職取得について少しでも疑問に感じる状況を作ってほしくないです(学生係にこれを求めるのはお門違いかもしれませんが).

ここまで読んでいただき,ありがとうございました.
また,よろしくお願いします.

参考

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