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1985 Vol.8〜ザ・スタイル・カウンシル

またも有名どころをひとつ。1985年といえば、このアルバムもそうです。

スタイル・カウンシルの「アワ・フェイヴァリット・ショップ」!それまでシングル主体で活動していた彼らの、かなり気合いを入れたセカンドアルバムです。

でもって、ミュージック・マガジンに載っていた当時の広告がこれ。

まさに大当たりのアルバム。でも、ちょっとダサいかな、この広告。「参った、君たちが、こんなに音の洒落者だとは!」っていうキャッチコピーもダサい(笑)

スタイル・カウンシルってサウンドはオシャレなんですけど、歌詞はもう絶望的に暗いんですよ。正直ザ・スミスよりも暗いんじゃないかって思うくらい。経済的にもドン底で失業したまま希望を無くしているイギリスの若者たちの怒りを代弁するポール・ウェラーの熱い魂を聴け〜!でもサウンドは、めちゃくちゃお洒落ですよ〜!っていう謎のバランス感覚が、このバンドの売りです。

で、その感覚が当時の日本のリスナーにどのくらい伝わっていたかどうかは正直ちょっと疑問かなと。自分も当時はあまり歌詞とか気にしてなかったですし。

これも前回のスティング同様、本当に大好きなアルバムなので、気合いで全曲レビューしてみます。ちなみに、あくまで自分が当時よく聴いていた日本盤LPの方の曲順で紹介します。英オリジナル盤とは曲の並びが若干違いますので、ご了承を。

SIDE ONE

1. HOMEBRAKERS

朝の始まりを感じさせる効果音でスタートします。しっとりとしたミディアム16ビート。曲調そのものはムーディーでソウルフルなんだけど「30年勤続した会社にクビを切られて13ヶ月」と、いきなり歌詞は暗いです。沈み込むようなミック・タルボットのハモンドオルガンとブラスの音が印象に残ります。

2. ALL GONE AWAY

同時代のエヴリシング ・バッド・ザ・ガールを思わせるアコースティック・ボサ。ボサといっても全然洗練されてない感じなんですが、この野暮ったい雰囲気がむしろネオアコ的にはいいんですよね。途中のフルートは完全にフリッパーズ・ギターの「ラテンでレッツ・ラブまたは1990サマービューティー計画」まんまです。

3. COME TO MILTON KEYNES

ポップな8ビートもの。アレンジがとにかく抜群。変テコなシンセの音もいいんだけど、途中でリズムがシャッフルになったり、ブラスとストリングスのハープが折り重なる分厚いサウンドとか、とにかく凝っていて面白い。歌詞に出てくる「失われた楽園」って、経済的にどん底だった当時のイギリスのことなんでしょうね。

4. INTERNATIONALISTS

ここでジャム時代を思わせる怒りのウェラーのロック魂が炸裂!佐野元春の「インディビジュアリスト」に似ています、確かに。でもフリッパーズとかと違ってフレーズまでいただいてるわけじゃないです佐野さんは。だから単純に「佐野元春はスタイル・カウンシルのパクリ」とかいう人は苦手だなぁ。余談でした。

5. A STONES THROW AWAY

弦楽四重奏をバックに歌うウェラー。エリナーリクビーというより、コリン・ブランストーンのソロアルバムのようです。まさにこれこそ「スタイル」の七変化。しかしこういうムーディーな曲でも甘くならずに歌詞は唾を吐くように権力者たちに怒りをぶつけているという塩加減で、これがいいんですよねぇ彼らは。

6. SHOUT TO THE TOP

イギリス盤のオリジナルだと、ここでミック・タルボットの「THE STAND UP COMICS INSTRUCTIONS」なんですが、日本盤LPはヒットしたこの曲と入れ替わっています。先にこの日本盤で愛聴していた自分は、いまだにこの曲がここにこないとしっくりこないですよねぇ。テレビでもよく使われますし、たぶんスタイル・カウンシルで一番有名な曲かもしれませんね。

7. WITH EVERYTHING TO LOSE

で、なぜか当時の日本盤LPは「BOY WHO CRIED WOLF」とこの曲が入れ替わっています。謎。同時代のシャーデーなんかに通じるお洒落なラテン曲ですが、これもまぁ暗い歌詞です。イギリスの当時の失業率問題が、ここでも歌詞に浮き彫りになってる感じ。この曲は歌詞とアレンジを変えて、後の映画「ビギナーズ」で発表された「HAVE YOU EVER HAD IT BLUE」でリメイクされる形になります。

SIDE TWO

1. A MAN OF GREAT PROMISE

ヒット曲「SHOUT TO THE TOP」や「EVER CHANGING MOODS」に通じる元気のいいポップな8ビートものですが、ただメジャーではなくマイナーコードなので、どことなく哀愁が漂います。デジタルな感じとはいえ、ドラムの音がカッコいいです。新聞の死亡記事で目にした「君」をテーマにした歌詞はやはり暗い。

2. DOWN IN THE SEINE

こういう3拍子のジャズスウィングっぽい曲も、後の渋谷系あたりのアーティストあたりがやりそうな感じ。フリッパーズの「南へ急ごう」なんかもそうですね。

3. THE LODGERS (Or She Was Only A Shopkeeper's Daughter)

アルバムの中でも最もソウルフルな匂いがする曲で、個人的にはこのアルバムで一番好きな曲です。コーラスのD.C.リーはソロアルバムで聴くとどうにも味が薄いんですが、スタイル・カウンシルというポジションだと絶妙にハマるんですよねぇ。

4. LUCK

ここらでちょっとポップな曲をカマしてみまっせ、という感じでしょうか。「君に抱かれていれば、まるでいっぺんに夏が来たみたいだ」という歌詞もめずらしく明るいです。ただ曲としてはわりと単純で、それほど印象に残る曲でもないかな。

5. BOY WHO CRIED WOLF

マイナーのクリシェコードの感じとか、ペナペナしたシンセベースとか、なんかこう同時代のワム!っぽいような。絶対ジョージ・マイケルが歌ったら似合うでしょう、これ。こういうベタベタな曲を平気で作っちゃうのもウェラーの身軽さかと。

6. OUR FAVOURITE SHOP

いかにもミック・タルボット作という感じのハモンドオルガンのインスト曲。80年代のデジタルシンセ全盛期に「ハモンド・オルガンありかも!」って思わせてしまう、このセンス。やっぱり根がモッドなんですねぇ。こういうセンスは、後のジェームス・テイラー・カルテットなんかのアシッドジャズ系にも受け継がれます。

7. WALLS COMES TUMBRING DOWN

個人的には、やっぱりこの曲で終わってくれないとアルバムの大団円って感じがしない。ジャム後期の「ビートサレンダー」のようなウェラーのソウルフルかつ熱いロック魂を感じさせる名曲中の名曲です。高らかに鳴り響くブラスと熱い歌唱が胸アツな余韻を残したままアルバムは見事に終わります。

やはり名盤です。

が、CDだと、この後にオマケでシングル曲「SHOUT TO THE TOP」なんですよねぇ。それは何か違うだろー、って。

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