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1985 Vol.5~松尾清憲

中学生の頃、三宅裕司さんの「ヤング・パラダイス」というラジオ番組が好きで良く聴いていたのですが、その番組のオープニング曲として流れ衝撃を受けたのが松尾清憲さんの「愛しのロージー」という曲でした。

確か番組ではロージーではなく「ユ〜ジ〜♪」と変えられていたような気がします。とにかくエレクトロ風味のグラムロックといいますか。めちゃくちゃポップなメロディーなんだけど、どこか歪んだような独特のアレンジが印象的でした。その後、ラジオで何度もこの曲が流れ、シングルまで購入。アレンジャーのクレジットを見て、それが白井良明さんだと判明。なるほど、ムーンライダーズの「アマチュア・アカデミー」を愛聴していたわけですから、好きになるのも当然でした。

そしてソロ・デビューアルバムが、この「SIDE EFFECTS 恋の副作用」です。

これは衝撃でした。

オープニングの「愛しのロージー」からアップテンポの「5月のSUICIDE」へのつなぎのカッコよさたるや!ギターの音がとにかくいいですよ。そして「For Your Love」「シャングリラ」「サンセット・ドリーマー」と、アナログA面の5曲の流れは完璧としか言いようがありません。良明さんのプロデュース作としても、このアルバムが最高ではないでしょうか。ここで発揮されたグラムロックのテイストは、後にすかんちのアルバムにも生かされることになります。

良い意味でこのアルバムにはスタジオ・ミュージシャンが演奏したという80年代的なシティ・ポップの雰囲気が伝わってこないんですよね。松尾さんのあまりエコーを聴かせていない耳元で囁くような粘っこい独特の声質のせいもあるんですが、サウンドが密室的で実験的で。でもそれが見事にポップな形で消化されています。

松尾さんの基本的な音楽のベースとなっているのは、10ccのように緻密にアルバムを作りこんだ70年代の「パンク以前」の英国ポップです。それも相当マニアックにそれらを聴きこんだ感じがします。でもこういう音楽も、ちゃんとヒット曲に繋がっていたというのが80年代という時代ならではの面白さかもしれません。

松尾さんがシネマというグループにいたことはミュージック・ステディという雑誌で知ったのかな。当時の貴重な邦楽の情報源でした。それで鈴木さえ子さんもシネマに在籍していたことを知ります。鈴木慶一さんがプロデュースしたシネマも本当に大好きでしたね。

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