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キュウユシテクダサイ

「キュウユシテクダサイ、キュウユシテクダサイ」
石油ストーブの指示に従って、灯油を入れに倉庫に向かう。
「なんや、空やん」
ポリタンクもドラム缶も空っぽだ。
いつも、灯油をドラム缶に入れにきてくれる、西島石油に電話した。

トゥルルルートゥルルルートゥルルルー
「もしもし、西島石油です」
「もしもし、いつも倉庫の奥にあるドラム缶に入れてもらってる田中です」
「あー毎度。すぐ行きます」
西島石油の店主は、電話を切ると本当にすぐに来てくれる。5分も経つとチャイムが鳴った。

「西島石油です」
車に積んだタンクから、給油ホースを引っ張って倉庫の奥にあるドラム缶に入れてくれた。
「最近はどうですか?」
「あきませんわ。どこもエアコン使こたはるから、売れませんわ」


「実は、今年いっぱいで店閉めますねん」
「えっ、なんでですか?」
「国のルールで貯蔵タンクが40年で交換せなあきませんねん。もう、そんな投資できませんわ」

「おまけに2030年にはガソリン車廃止って政府は言うてますから潮時ですわ」

なにか、吹っ切ったような西島さんだった。
「長いこと、ありがとうございました」

今年の1月は強い北風が吹いている。


児童小説「クロウ・キッズ❗️」朗読29,30更新






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