指記



何か文章を書きたい。
と書いてから、もう30分が経ってしまった。

消しては書き、消しては、書き。
正しくは、打ち。

デジタル派の俺の親指はまっさらだ。
これが紙の上だったなら今頃、いや、親指は黒くならないな。
黒くなるのは小指だ。

思えば最近、鉛筆を握っていない。

幼い頃は懸命に黒くなっていた小指も、今では随分綺麗な顔をしている。
消しカスをサッと払う労働からもペンを回す付き合いからも解放され、現在は電子機器を支える職に就いている。

だが彼には悩みがあった。
凹みである。

彼はその凹みがどうしても受け入れられず大変苦労したようだが、周りの小指達に話を聞くと皆一様に凹んでいて、しかもそれぞれ形が違うらしい。

ならば、と。
小指は誓いました。
僕は僕の形のまま過ごしてゆこうと。

そう決意した小指の周りにいた小指達も小指を見習い、それぞれの形を受け入れようと固い約束を交わしたのでした。

めでたしめでたし。



よし、帰路に着こう。


明日は穏やかな風が吹きますように。

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