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点、線、面 ② 点心

 点、線、面 ①でもお話したように、点はただ単にペンや筆を紙面に置いてできた痕跡ではありません。東洋画の点にはいくつかの工程が加えられることが多いのです。
 書道で書く点を思い浮かべてください。点を書くという時は、筆の穂を紙の上に置き、その筆を斜めに移動させ、さらには逆方向に跳ね上げたりするのです!おそらく西洋の人はこれを線や面と認識するかもしれません。点をこんな複雑に書くことなど考えられないからです。しかし我々はこれを線とは言いません。あくまで点と言います。
 水墨画でも同様で、点は単なる点ではなく意味を持ったものである場合が多いのです。
 水墨画の入門者が学習する蘭(東洋ラン)では、花弁を描く際、最後に必ず濃墨で3つ点を描きます。これは点心(点芯)といって、蘭の花の舌弁の代わりに抽象化した点で表現するのですが、ただ点を3つ並べてはいけません。単なる記号であってはならず、花に命を吹き込む点でなければならないのです。ですから非常に慎重に配置を考え、モチーフを生き生きとさせる点になるように描きます。

春蘭


 水墨画で描くこれらの点は、前述した書道の点とつながります。実は水墨画の点は、書で用いる点、特に行書や草書で書く点とほぼ同じなのです。
 書画同源というわけです。
 
 モチーフを生き生きとさせたり命を吹き込むという点については他にもありますので、また次回お話しします。

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