クリエイティブ思考の邪魔者は?

「クリエイティブ思考の邪魔リスト」(瀬戸和信著 朝日新聞出版)を読みました。私がプロピッカーをさせていただいている News Picks の連載を著者が書籍化したものです。

http://www.amazon.co.jp/dp/4023315214

最初に感じたのが「変わったタイトルだな〜?」ということでした。クリエイティブ思考云々というタイトルであれば、普通は「クリエイティブ思考をいかにして養うか?」とか「クリエイティブ思考になるための技術」というようなタイトルが多いでしょう。「邪魔リストってどういう意味だろう?」と思いながら読み進んでいきました。以下、本書の内容で私が着目したポイントを列記します。

アドビ・システムズの調査では、年間10億を売り上げる世界の300社の82%が、「業績とクリエイティブ思考が大きく関連している」と回答しています。つまり、これからの企業業績を大きく左右するのはクリエイティブ思考を持った人材なのです。実際、多くの業務は今後AI等の取って代わられるので、人間に残された重要な仕事は「クリエイティブ思考」を働かせることなのです。

ところが、クリエイティブ思考は年齢と共に低下していくのです。その原因のほとんどは、規則や制約に縛られどっかり日々の業務に浸かってしまって「考えること」をしなくなるからです。逆に、ビル・ゲイツのような優れたビジネスパーソンたちは、意図的に「考える時間」を確保しています。考える内容は様々ですが、禅の精神のように頭の中を空っぽにすることも必要です。そのためには、SNS等で他人のペースに引きずられないよう、ネットから離れる時間を持つ必要もあるでしょう。

自分のリズムを知ってそれに沿った生活をすることもクリエイティブ思考を維持するためには重要なことです。作家の村上春樹氏は1日のリズムをしっかり決めているそうです。自分のリズムがわからなければ、手帳に「今日は何時から何時まで何をしてどんな状態だったか」などを記録していけば、自然に自分のリズムを把握することができるでしょう。食生活や睡眠の重要性は言うまでもありません。

女性は男性よりも少なくとも次の4点で優れています。①色彩感覚 ②嘘を見破る力 ③笑顔での感謝 ④固定観念にとらわれない。

過去の成功体験を捨てなければならないと頭ではわかっていても、いつの間にか過去のパターンに依存してしまうことがあります。状況に応じて「柔軟に考える」習慣を身につけるのは案外難しいことなのです。しかし、諦めてしまって動かなくなってしまったらおしまいです。何事も初動にはパワーが必要ですが、一度動いてしまえばあとは慣性の法則が働くので「最初の一歩」を踏み出してみましょう。

ということで、本書末尾に「クリエイティブ思考の邪魔リスト」15項目が掲載されています。

ここまで読み終えて私なりに考えたのは次のようなことです。クリエイティブ思考や発想力を発揮するためにはベースとなる知識や経験が必要です。野口悠紀雄先生の「超発想法」に書かれているように、歴史上の天才(モーツアルト等)たちは詰め込み教育を受けました。吉田松陰も詰め込み教育を受けていますし、優秀な民族であるユダヤ人も幼少期から経典の丸暗記をさせられます。このように考えれば、知識や経験において数段優れているはずの大人が子供に負けてしまうのはどうしてでしょう? ゼロから何も生まれないのは自明のこと。思うに、大人になって仕事をするようになると、前例や規則や過去の成功体験が「考えること」をストップさせてしまい、蓄積された知識や経験を生かして「柔軟にゼロから考える」ことができなくなってしまうからではないでしょうか?

では、蓄積された知識や経験をクリエイティブに生かすためにはどうすればいいのでしょう? 住む場所を変えたり付き合う友人を変えるというのも一つの有効な手段でしょう。本書でも「住み慣れた土地を離れる」ことの効用が書かれています。もっとも、転居となると大事(おおごと)ですので、通勤経路を変えてみたり、入ったことのない店に入ったり、やったことのない経験をするのもお手軽な方法かもしれません。新しい友人を作らなくとも、読書をすれば時間と場所を超越した教えを著者から受けることができるでしょう。

ということで、本書で書かれている15の邪魔リストを常に心がけることによって、ルーティーンな思考停止に陥ることが防げるのではないでしょうか? 本来持っている知識や経験を「クリエイティブな発想」に生かせないようにしている制約、つまり邪魔者をあぶり出したのが本書です。邪魔者を常に意識してつつ排除する習慣を身につけることによって、クリエイティブ思考ができるようになるのでしょう。

以上は、私の独断と偏見に基づく勝手な解釈に過ぎません。詳しい内容に関しては、是非とも著者である瀬戸さんご本人の詳細なコメントをいただければ幸いです。


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