グラフィックデザイナーと弁護士?

グラフィックデザイナー(という表現が適切かどうかわかりませんが、企業等のロゴやデザインを作る人たち)の仕事と弁護士の仕事は、意外にもかなり似通っているということに気づきました。

最大の共通点は、「具体」と「抽象」をうまくかみ合わす必要があるということです。

グラフィックデザイナーは、「目に見える具体的なデザイン」についてその目的や効果を「一般的・抽象的な言語」で表現しなければなりません。例えば「このデザインは、御社の○○という企業理念を・・・という点で表現し、ターゲットである・・・の層に・・・をアピールするものです」というふうにデザインをクライアントに説明する必要があります。

弁護士は、「貸した金を返してれないんだ!」という依頼者から様々な具体的事実を聴取した内容を、「原告は被告に、平成25年5月1日に金100万円を同月末に返すという約束で貸し渡した」という一般的・抽象的な「(要件事実という)言語表現」で表現しなければならないのです。「原告と被告がどういう関係にあって、どういう経緯で、どこで、誰が立ち会って、どういう形で・・・100万円を貸した」という具体的な出来事を延々と並べていたのでは訴訟は提起できません。100万円の金銭消費貸借契約(お金の貸し借り)が成立して返済期限が到来したという上記のような要件事実に変換して主張しなければ、原則として裁判所は取り上げてくれないのです(あくまで「原則」です。現実には、要件事実が書かれていない場合でも裁判官が口頭で質問してくれます。弁護士としてはあまりかっこいいものではありませんが)。

このように、「目で見えるデザイン」や「人間同士の具体的事実」を相手に通用する「一般的・抽象的言語」に変換する作業がいずれの仕事にも付きものなのです。

また、表現が説得的でなければならないという点でも共通しています。

クライアントを納得さることができなければデザインは採用してもらえませんし、裁判官を説得できなければ訴訟には勝てません。極めて当然のことながら、本人にとっては最も深刻な問題です。

さらに、出来上がるまでのプロセスをロジカルに説明する必要があるという点でも共通点があるようです。

デザインが出来上がるまでには様々な試行錯誤があり、クライアントを巻き込んで作り上げていくようです。出来上がるまでのプロセスを記録して、第三者にロジカルに説明しなければならないケースもあるでしょう。会社のロゴを会社の担当者を巻き込みながら作り上げ、そのプロセスを経営陣に説明するような場合が典型例と言えるでしょう。

訴訟はいうまでもなくプロセスです。訴訟は、民事訴訟でも刑事訴訟でも法によって定められたプロセスで進めらなければなりません。そのプロセスは訴訟記録として残され、万一過誤があると「手続違背」として裁判がひっくり返ることもあります。

このように、グラフィックデザイナーと弁護士という一見何の関係もない仕事に多くの共通点があると気づいたのは、「生まれ変わるデザイン、持続と継続のためのブランド戦略」(ウジトモコ著 ビー・エヌ・エヌ新社刊)を昨晩興味深く読んでいたのがきっかけです。

極めて戦略的な内容が平易かつロジカルに書かれており、新鮮な驚きを覚えました。顧客というターゲットを有するビジネスパーソンに新たな発想の指針を与えてくれる一冊だと思います。

http://www.amazon.co.jp/dp/4861009839

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アート×デザイン=クリエイティブ

アートとは「自己表現を通じて鑑賞者の感情を励起する装置」であり、デザインとは「機能や目的に向けてユーザーの行動をアフォードする装置」である。故に両者の総和たるクリエイティブとは「暗黙知を通じて人々に新しい知見や体験を与えるプロダクトを生む活動」に他ならない。
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