困った三段論法を崩す

前回、私がサイバー大学で担当している「六法と法哲学」の第4回で扱った、三段論法について説明した。典型例は以下のようなものだ。

大前提)人間は死ぬ

小前提)ソクラテスは人間だ

結論)ソクラテスは死ぬ

そこで、拙著「すぐに結果が出せるすごい集中力にとって不都合で困った(汗)、以下の三段論法を披露して何とか崩せないかと問いかけた。
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大前提)集中力のない人は本を買わない

小前提)本書は集中力のない人向けの本だ

結論)よって本書は売れない

多くの人が思ったように、この三段論法は大前提の命題が間違っている。

「集中力のない人だって本は買うだろう」という直感的な考えが根拠だろう。

命題が正しいかどうかを確かめるためには「対偶」を確認するのが一番だ。

「対偶」というのは条件文の「逆」「裏」と共に理解するものだ。

「AならばB」の逆は「BならばA」、「AならばB」の裏は「AでないならBでない」になる。「BでないならAでない」というが対偶だ。

具体例を挙げると「ペンギンは鳥だ」の逆は「鳥はペンギンだ」となり、裏は「ペンギンでないなら鳥ではない」となる。逆も裏もいずれも正しくない。それに対し、「鳥でないならペンギンではない」という対偶は常に命題にとって正しい。

「逆」も「裏」も真ではないが「対偶」は常に「真」というのが、論理学の基本だ。これもサイバー大学の第4回で扱った。

さて、不都合な三段論法の大前提である「集中力のない人は本を買わない」の対偶は、「本を買うのは集中力のある人だ」ということになる。

料理の本や趣味の本、はたまたダイエットの本や写真集を買う人たちが全員「集中力がある人」だとは到底言えないだろう。
このように、ある命題が正しいかどうかは、その命題だけでなく「対偶」もチェックすれば確信が持てる。
「何だか怪しいな~」と思ったら、対偶である「BでなければAでない」も考えてみよう。

もちろん、上記不都合な三段論法の大前提が誤っていたからと言って、本書が売れる訳ではない。
読者諸氏のご厚情に頼るのみだm(_ _)m

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