記憶の不思議

街中で、ふと香ってきた香水やコロンの臭いで、昔の彼氏や彼女を思い出した経験はありませんか?どこからともなく流れてきた音楽を聴いて、懐かしい思い出が蘇ってきたという経験は?

どの本で読んだのか忘れたので著者の方には申し訳ないのですが、人間は「忘れる」のではなく「思い出せない」ということだそうです。つまり、すべての情報は頭の中に残っており、「引き出す」ことが出来ない状態を忘却と呼び、きっかけが与えられれば「引き出す」ことが可能だとのことです。

記憶を「引き出す」典型的なモノは、臭いと音だそうです。懐かしい香りや懐かしい音楽によって、突然昔にタイムスリップしてしまうような感覚を覚えるのには、このような理由があるからだそうです。

同書に「三島由紀夫(だと記憶しています)は、産湯のことを憶えていたそうだ」と書かれていました。実は、私もベービーベッドに寝かされている時(おそらく生後間もないころでしょう)、私を覗き込んだ父の顔をくっきりと憶えています。しかし、その後、父の自転車に乗せられてあちこち連れて行ってもらった記憶は全く引き出せません(晩年の父が懐かしそうに言っていたので、父の自転車であちこち連れて行ってもらったことは事実のはずですが…)。

このように考えると、記憶というのは極めて興味深いものです。

強い思い込みによって記憶が歪められることは、民事訴訟では頻繁に起こっています。明らかに事実と異なっているにも関わらず、証言席の人は「間違いなく憶えている」と言い張り、決して嘘を言っているように感じられないことがしばしばあります。

人間は「視覚重視タイプ」と「聴覚重視タイプ」に分けられるようで、(その仮説が正しければ)私は明らかに「視覚重視タイプ」です。私は、小学生や中学生の頃の事柄を元同級生たちが驚くくらい憶えているのですが、すべて目で見た「シーン」として思い出すのです。小学生時代のソフトボールで、私が投げたボールを某君に強打されたシーンとか…。

受験勉強で暗記したことも、例えば「テキストの右のページの左下の方に書いたあった」というふうに記憶喚起をします。もしかしたら、「聴覚重視タイプ」の人は、先生が話した言葉が蘇ってくるのかもしれません。

拙著「超勉強法」で、私は「五感をフルに使って勉強しよう」と書きました。昔は、さすがに「嗅覚」は無理だと思っていたのですが、先に書いたように香りが記憶喚起のための重要なアイテムであることを考えれば、案外最強の武器になるかもしれません。

記憶作業をするときに一定の香りを漂わせておいて、試験前に同じ香りを嗅ぐのです。最近は携帯用のアロマも売られているので、科目ごとに香りを変えてもいいかもしれません。

もしやってみて成果が出た方がいらっしゃったら、是非ご一報下さいね。

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