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睦月の精進料理 2017年1月

皆様、明けましておめでとうございます。お正月はいかがお過ごしでしたか。海外旅行や温泉などでゆっくりされた方、久しぶりでご家族勢揃いでおせちに舌鼓を打った方、お仕事だった方、いろいろかと思いますが、あの凜とした、なにもかもが新しく、すがすがしい空気感は年明けならではですね。
啄木の「なんとなく今年はよい事あるごとし元日の朝晴れて風無し」の句をお正月になるといつも思い出し、100年以上も前の人も同じ心持ちだったかと思うと、正月に晴れがましい気持ちになるのは日本人のDNAというしかないのかなと思ったりいたします。
さて、そんなおめでたい1月は、毎年教室の日が小正月に近いので、小豆粥からスタートするのですが、今回は七草粥にしてみました。フレッシュな若葉の香りとやさしい粥の味に、ごちそう尽くめで疲れた内蔵がほっとしますよね。ほかは粘りけ抜群の旬の里芋を使ったコロッケ(通称ボンズくん醤油が味の決め手です)、豆腐から作る厚揚げに春菊のあんをかけたもの、新年にふさわしく「ん(運)」の付くお野菜で作った和え物、この時期絶対リピしていただきたい菊花蕪をやりました。
1.七草粥、2.里芋コロッケ ブロッコリーの胡麻酢和え添え、3.厚揚げの菊菜餡、4.開運五色胡桃和え、5.菊花蕪

1.七草粥
七草粥は、1月7日に食べる春の若菜が入ったお粥。これは中国の「人日の節句」に食べる「七種菜羹(しちしゅさいこう)」と、もともと日本にあった小正月(15日)に食べられていた七種類の穀物を食べる「七種粥」がいつしか合体してできたものと言われています。春の七草は皆さんもよくご存じのように「セリ、ナズナ(ぺんぺん草) 、ゴギョウ(母子草)、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ(蕪)・スズシロ(大根)」ですね。スーパーでも時期になると売られていますが、地元神奈川の三浦産が多いようです。たからの庭ではハコベラが手にはいったので、それとセリ、スズナ、スズシロで作りました。ベータカロチンをはじめビタミンも豊富で、消化もよく、風邪予防に冬の定番にしたい料理です。
今回は全がゆ(5倍の水)のレシピですが、もっとシャバシャバなほうがよければ、水の量を増やしてください。また好みでお餅を入れても美味しいです。

材料:米2C、水10C、七草(セリ・ナズナ・ゴギョウ・ハコベラ・ホトケノザ・スズナ・スズシロ)100g程度、塩小2/3~1

1)米は洗ってざるにあげて、15分程度おき、釜に5倍の水と合わせておきます。
2)七草は洗って、刻んでおきます。

3)1)を強火にかけ、沸騰したらひとかき混ぜして弱火で30分たいていきます。お米が鍋底にこびりつかないよう、特に沸騰前後でかき混ぜるのを忘れないようにしてください。またかき混ぜ続けていますと粘りがでてきてしまうので、混ぜすぎもいけません。

4)炊き上がりの1分前で七草を入れ、続けて調味し、火を止め、すぐに食べましょう。ほおっておくと、どんどんお米が水を吸い、もったりしてしまいますし、青菜の色も悪くなってしまいます。

2.里芋コロッケ ブロッコリーの胡麻酢和え添え
里芋が美味しい季節です。ムチンやマンナンなど、体に良い成分も豊富で舌触りもなめらか。煮物に使われるのが一般的かと思いますが、馬鈴薯のようにコロッケやポタージュにもぴったりなんです。精進料理でのコロッケには、大豆で作ったグルテンミートに、ボンズくん醤油の名で親しまれている北鎌倉燻煙工房の<燻煙旨醤油>をほんの少し加えると、ベーコンの風味になり、益々食欲増進です。衣もパン粉ではなく高野豆腐を粉末にして使用しており、非常に細やかで高級店さながらのコロッケができますよ。この材料で大きめのコロッケが20個できます。

材料:里芋700g、玉ねぎ1・1/2個、ドライグルテンミート50g、燻煙旨醤油小2、塩小さじ1/2、コショウ少々、長芋・小麦粉・高野豆腐適宜、揚げ油適宜ブロッコリー1/2本、塩少々、当たり胡麻大2、みりん・淡口各小1、酢大1

1)里芋は洗って蒸し器で20分程度ふかし、竹串がすっとささるようになったら、皮をむいて熱いうちにマッシャーでつぶします。
2)玉ねぎを微塵切りしてオリーブオイル少々(分量外)でソテーしておきます。3)乾燥グルテンミートをお湯で戻しておきます。だいたい5分くらいで戻ります。

4)1~3を混ぜ合わせ、調味し、バットに広げて粗熱を取ります。できれば冷蔵庫にいれてしっかり冷やした方が成形しやすいです。

5)高野豆腐はフードプロセッサーで細かくしておきます。沢山つくって、密封できるビニール袋にいれ、冷凍しておくと便利です。
6)4を俵型に成形して、小麦粉→おろし長芋→高野豆腐粉末の順で絡め、170度の油で揚げます。中に火を通す必要はないので、その側の衣がかりっと揚がれば大丈夫です。

7)添えの和え物を作ります。ブロッコリーは小房にして、さっと塩ゆでし、醤油洗い(分量外)をしておきます。
8)胡麻をよく煎ってからあたり、みりんと淡口、酢で調味し、ブロッコリーが熱いうちに混ぜ合わせ、コロッケに添えましょう。ブロッコリーも旬で美味しいですよ。


3.厚揚げの菊菜餡
厚揚げは製品になったものを買うことが多いかと思いますが、豆腐から作る厚揚げは格別です。旬の菊菜(春菊)の香り高い餡をかけました。おかずにもいいですが、お酒のあてにもぴったりですよ。こつはしっかりと豆腐の水切りを行う事と新しい油を使用することです。

材料:木綿豆腐各1/3枚、揚げ油適宜、春菊2/3袋、おろし生姜小1
餡:出汁2C、みりん大1、淡口小2、片栗粉大1・1/2(水大2でといておく)

1)豆腐はしっかりと水を切っておきます。キッチンペーパーにくるみ、上から重石をしてできれば半日くらいおいてじわじわと切ってください。

2)1)を170度くらいの油でゆっくりと揚げていきます。ピチピチとした激しい音がしなくなったら、温度を190度くらいに上げてかりっとさせてください。

3)春菊は葉のみむしって、さっと湯がき、すぐに水にとり、しっかりと色止めしてからざくざくと荒く刻んでおきます。
4)出汁をあたため調味し、春菊を加え、水溶き片栗粉でとろみをつけて、揚げたての厚揚げにかけ、上におろし生姜を乗せてハフハウいいつつ召し上がってください。


4.開運五色胡桃和え
皆様に益々良い運が付くように、「ん」の付いた野菜で和え物にしました。この時期、料理屋にいくとよく見かける和え物です。こんな遊び心も日本料理ならではです。ポイントはすべての材料に下味をつけておくこと、形を整えることです。特にかぼちゃは煮崩れしやすいので、煮すぎに注意してください。胡桃のコク有る衣がまた冬にぴったりです。

材料:京人参50g、隠元70g、レンコン200g、南瓜200g、銀杏10個くらい
煮汁:出汁1C、淡口・みりん各小1、塩少々
和え衣:胡桃50g、砂糖・醤油各大1


1)野菜は銀杏、隠元を除いて1.5cm角に切って、蓮根は水に放っておきます。

2)銀杏は殻をわり、玉じゃくしで転がしながらゆでて薄皮をとり、縦1/2に切っておきます。
3)隠元はさっと熱湯でゆで、水に放ち色止めしてから、1.5cmに切っておきます。
4)出汁に人参を入れて火にかけ、小煮立ちしてきたら蓮根と南瓜をいれて、柔らかくなるまで煮えたら調味して、最後に銀杏と隠元を入れて冷ましておきます。できれば退色を防ぐために氷水で冷やしてください。味も早くしみますよ。煮汁が非常に少ないですが下味をつけるためだけのものですので、もったいないので、少量です。使用するお鍋の関係でもう少し煮汁を入れないいけない場合は加減してくださいね。

5)胡桃は粒が少し残る程度にあたってから調味し、食べる直前に4の煮汁を切ってからあえてください。


5.菊花蕪 
おなじみの菊花蕪。おせちなどにも入れることがありますが、この時期甘くて柔らかくなった蕪を使ってどうぞ沢山作ってください。甘酢に漬けますので日持ちもしますし、焼き魚やお弁当などの添えとしても大活躍です。むいた皮は捨てずに刻んで塩少々と柚子で大阪漬にしてお楽しみください。

材料:蕪(小)各1個、唐辛子1本
つけ地:酢1/2C,砂糖大4、塩少々


1)蕪は皮をむいて、へたのほうを下にして置き、格子状に細かく包丁を入れます。上下に箸をおくとストッパーになって下まで切ってしまうことがありませんよ。

2)たて塩(水2Cに塩大1)に、1)を入れて30分程度おき、しんなりさせましょう。
3)唐辛子は、お湯で戻してヘタ部分を切って指ではじくとなかから種が出てきます。種は辛いので使いません。

4)鍋につけ地の材料を入れ、砂糖が解けるまで少し火にかけます。
5)4)を冷まして、種を取った唐辛子としんなりした蕪を軽く絞って入れ、最低でも1時間は漬けて、盛り付けの時に唐辛子を小口にきってセンターに乗せます。蕪は大きいものは1/4に切って盛り付けましょう。

レシピ&原稿:温石会 入江亮子(北鎌倉たからの庭<旬を楽しむ精進料理> 1月の献立より)



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