見出し画像

「弥生の精進料理」 2017年3月

すっかり春めいて来ましたね。たからの庭では紅梅白梅のなんとも芳しい香りで3月は始まります。そして寒い間殺風景だった景色も、あちこちの木々に小さな若葉の芽吹きが見られ、かわいいことといったらありません。さらに奥には真っ赤な椿たちが燃えるように咲いていて、しばし見とれてしまいます。草木が芽吹くまさに"弥生"を実感するひとときです。

そんな芽吹きはお野菜たちにもありまして、八百屋さんを覗けばなにかと"新"のついたお野菜を見つけることでしょう。今月はそんな新しい芽吹きをいっぱい使ったお料理です。

1.筍飯、2.高野豆腐のとろふわ汁、3.車麩の生姜焼き 春野菜添え、4.新玉ねぎと鹿尾菜(ひじき)の梅和え、5.新じゃが芋の荏胡麻和え


1.筍飯
筍が出始めました。まだ九州のものが主ですが、出始めの筍は根元のほうまで柔らかく、アクも強くないので多少高くてもつい手が伸びてしまいます。たっぷりのお湯にぬかと赤唐辛子を入れて柔らかくなるまでゆでたら、そのまま冷めるまでおいて、使用してください。この技法を「湯止め」と申します。ご飯の味の決め手は油揚げ。目立ちませんが精進料理はおあげさんあってのコクなんです。

材料:米3C、茹で筍200g、油揚げ1・1/2枚、昆布出汁660cc、淡口大2、酒大2、塩小1/4、叩き木の芽適宜

1)米は研いでザルにあげておきます。
2)茹で筍は、堅い皮をむいて、薄切りして、さっと熱湯でしもふってざるに上げておきます。姫皮も柔らかいので使えますので細切りにして筍と一緒にしもふってくださいね。このしもふりは残っていたぬかなどを落とすこと、消毒、水分を抜き出汁を入れやすくする、3つの理由でやります。ですので、間違っても、しもふったあと水に放ったりしないでくださいね。

画像1


3)油揚げは長いほうの面を1/2に切って千切りします。

画像2


4)釜に1~3を入れ、調味し、15分程度おいてから火にかけます。沸騰までは強火、その後中火にし7分、さらに弱火にして3分、最後にまた強火にして10秒程度、パチパチという音が聞こえたら火を止め、10分蒸らしてからしゃもじで天地返しし、盛り付け、刻んだ木の芽を乗せて召し上がってください。

画像3


2.高野豆腐のとろふわ汁
高野豆腐は保存の利く優れた食品で、アミノ酸や、不飽和性脂肪酸、レシチンを多く含み、最近ではダイエット食品としても注目されています。クセもないので粉末にして小麦粉やパン粉の代用品としても便利です。今回はちょっと長く煮て、とろふわな汁にしました。優しい味で疲れているときになどに召し上がっていただくと沁みますよ。

材料:高野豆腐4枚、昆布出汁3C,成分無調整豆乳2C,白味噌大1,塩小1弱、三つ葉適宜

1)高野豆腐は水に5分程度つけて戻し、搾らずに8~10等分に切って昆布出汁で15分、煮ている汁が濁ってくるまで煮ます。

画像4


2)1)に豆乳を加え、小煮立ちしてきたら白味噌、塩で味を調整して、盛り付け、刻んだ三つ葉を添えてください。豆乳は長く煮たり、沸騰させると分離してしまうので、火加減に気をつけながら作ってくださいね。

画像5


3.車麩の生姜焼き 春野菜添え
車麩は、我が国に古く伝わる焼き麩の一種。各地にありますが、製法や形もさまざま。栄養的には植物性タンパク質が多いのにカロリーは低め、しかも常温で保存できるいいことずくめの食材ですが、なかなかご家庭のテーブルに上がってきません。精進では今回のようにお肉代わりによく使われます。下煮をして薄く味をつけておくのがポイントです。

材料:車麩4枚、スナップえんどう各1本、芽キャベツ各1/2個、菜花各1本、片栗粉適宜、ごま油適宜
煮汁:昆布出汁2C、砂糖大2、みりん・酒各大3,醤油大4
たれ:醤油・酒各大2、昆布出汁大1、生姜1かけ

1)車麩は水に30分程度浸してから水気を絞り、4等分に切って、煮汁で数分煮て軽くしぼっておきます。

画像6


2)スナップえんどうと菜花は、熱湯で軽くゆでて、芽キャベツは1/2にして芯の部分に包丁を入れておきます。

画像7


3)フライパンにごま油を敷き、芽キャベツから入れて野菜類を焼き、バットにあけておきます。

画像8


4)3のフライパンに油を足し、片栗粉をまぶした車麩を両面こんがりと焼いて、野菜とともに皿に盛り付けます。

画像9


5)空いたフライパンにすり下ろした生姜と酒、醤油、昆布出汁を入れ一煮立ちさせて、車麩にかけて食べてください。

画像17


4.新玉ねぎと鹿尾菜の梅和え
新玉ねぎは柔らかくジューシーで美味しいですが、あっという間に旬が終わってしまいます。ぜひ美味しい間にたっぷりと召し上がってください。アクも少ないので生で召し上がるのが向いていると思います。合わせる鹿尾菜(ひじき)は古くから長寿の源と言われており、ちょうど今頃から5月にかけてが新物が出回ります。煮付けにして食べることが多いですが、梅干しを使ってサラダ風の和え物にしました。

材料:新玉ねぎ1・1/2個、梅干し2個、乾燥鹿尾菜10g、サラダ油少々,酒・醤油各大1大葉6枚

1)新玉ねぎは薄切りして水にさらします。

画像10


2)梅干しは種を取り除いて、かるくたたいておきます。
3)鹿尾菜は水で戻し、水気を切ってからフライパンに油を敷いて炒め、酒と醤油を加えて汁気がなくなるまで煮ておきます。

画像11


4)ボールに1~3を入れて和え、千切りして水にさらした大葉を飾ってください。

画像12


5.新じゃが芋の荏胡麻和え 
新じゃがは皮も薄くて柔らかいので皮ごと使いました。胡麻和えは定番かと思いますが、荏胡麻に変えるだけですごく違った風味が楽しめますよ。αリノレン酸たっぷりで抗酸化作用で注目を浴びている荏胡麻、ぜひ使ってみてくださいね。

材料:新じゃが芋4個(@40g位)、塩少々
和え衣:荏胡麻大3、昆布出汁大1、砂糖大1、醤油小2

1)新じゃがは洗って、塩少々入れた水から柔らかくなるまで15分ほど茹でます。

画像13


2)荏胡麻は焦がさないように弱火で炒ってから当たり鉢でよくあたり、砂糖と醤油で味を整えておきます。

画像14


3)2)に1)を入れて、かるくつぶしながら混ぜ合わせます。大きさは不揃いのほうが楽しめます。

画像15

画像16


レシピ&原稿:温石会 入江亮子
(北鎌倉たからの庭<旬を楽しむ精進料理> 3月の献立より)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?