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「アノニム」原田マハ

「アノニム」原田マハ 角川文庫
近頃「?」な思いもありながら、それなりに嵌り込んでいる原田マハ作品、芸術系作品をメインに読んでいますので、”ジャクソン・ポロック”との名を見て迷わず買ってしまいました。高校時代に読んだ「芸術新潮」での記事だったと思います。テーマは「天才」でした。マティスの系譜を継ぐのがイヴ・クライン、ピカソを継ぐのがジャクソン・ポロックと、何方かが書いていました。高校大学時代、クラインもポロックもステラもウォーホルもヴァザルリ、サム・フランシスも、私にとっては”アイドル”でした。
そんな名を記した作品、もう序盤で失望を感じましたが、最後まで読みました。序盤の失望は「私の期待した作品では無い」、読後の感想は「酷過ぎる、凡作の域にも達していない」でした。全く呆れます。
原田マハ芸術系作品に対する私の期待は、主題となるアーティストの人生を、原田マハの感性を通して蘇らせてくれること、です。高橋瑞木との共著「現代アートをたのしむ」でも、「ともすると、あまりにも特殊な人間だと思いすぎてしまうことはあるかもしれない。~でも、ゴッホだって~私たちと違わない、同じ人間なんですよね」「『ジヴェルニーの食卓』は、まさにその視点で書いたんですよ」とあります。私が嵌った切っ掛けはまさに「ジヴェルニーの食卓」でした。そして「太陽の棘」も傑作でした。「リーチ先生」も面白かった。「モダン」「ロマンシエ」も、少し別路線ですが楽しめました。一方、「楽園のカンヴァス」「暗幕のゲルニカ」は、私の望む路線ではありませんでしたが、サスペンスとしては良く出来た作品だと思います。
そして今回の「アノニム」、アルコール依存症とプレッシャーの中で、自死も疑われる自動車事故で44歳の生涯を閉じた、ピカソにも比較される抽象表現画家、この興味深いアーティストの生涯に関してはほとんど描かれていません。そして”サスペンス”部分でも、観るべき場所もない駄作でした。主人公達に都合の良い条件・展開ばかりを羅列した、二流漫画家でも書きそうにない設定、すべての情報を持つスーパースター達が、失敗の仕様の無いお気楽犯罪に挑む、ってか?出版した出版社にも、文庫化した角川文庫にも、その姿勢を疑います。
原田マハの芸術系作品、「美しき愚か者たちのタブロー」は文庫化されれば読むつもりです。その他作品に関しては、無条件で買うことなく、ぱらぱら読みしてから注意深く判断しようと思っています。マハ離れも、そう遠いことではないかも知れません。というか、これだけの駄作を読まされながらもまだ読む気が残っていることの方が驚きです。

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