2年間の仏教の学びの後で、海外の流行を取り入れるスタンスが変化したーオランダの流行を日本の活動に取り入れる知的態度についての考察ー

現在、『社会のなかのコモンズ』という本を読んでいます。ちょうど6月のオランダ滞在のリサーチを行うにあたって考えていたことと重なる文章があったのでご紹介します。それは海外の流行に対する日本人の向き合い方についての話です。

このように問うのは、日本の知的風土において、海外の流行商品がいともたやすく導入され、消費され、そして忘却されるからである。概念もまた、流行商品の一つであることは言うまでもない。この点について、丸山◯男以来、繰り返して指摘されてきたが(丸山 一九六一)、今も状況はあまり変わらないようだ。それどころか、知的流行商品を「輸入」しているというテレやハニカミのようなものさえ失われつつあるのが現状ではないか。そうだとすれば、現代においてあえてコモンズという概念の意義と射程を問い直す本書もまた、自らの知的営為に対して、十分な慎重さと禁欲性が必要であろう。

これは本書の中で、海外で語られているコモンズの概念を日本で取り入れることについての文章として書かれています。

日本人全体がそうなのかは私はわかりませんので、あくまで私の経験の例で恐縮ですが、私はこの傾向がとても強かったです。

大学生の頃はシリコンバレーに関わりのある組織でデザイン思考を学ぶ機会を頂いたり、大学卒業後にはカタカナの言葉が常に飛び交うデザインコンサルティングファームで働く時期もありました。

その根底には、最先端の知識を仕入れて、遅れている日本の状況を変えてやろうという肥大化した先鋭意識があったと思います。海外の文化に触れている自分は日本の文化にだけ触れている人よりも優れている、という思い込みですね。

そんなことを引用部分の文章を読んだ時に思い出しました。

しかし、それが変わりつつあります。

ここ2年ほどは仏教、つまりお寺に生まれた自分にとっての一つのルーツに触れ、学ぶ機会をいただきました。修行をするという正規ルートではありませんが、多くのお坊さんたちとの対話の中でエッセンスを学ぶことができ、最終的に共著で本を出版させていただく機会も得ました。

このような2年間を経て、変化したのは海外文化の受容の仕方です。

先日までオランダにいたのですが、オランダ、とってもおもしろかったです。特に今、オランダでは環境に負荷をかけずに経済成長していこうとするサーキュラーエコノミーの概念と実践についての議論がとても盛んに行われています。さらに私自身は、トランジションというオランダでの研究・実践領域がとても面白いと思っていて、その知識は積極的に取り入れようと思っています。

しかし、その際のスタンスは、オランダの方が優れているから、日本は劣っているというものではありません。周りの国の動向を知るのは大事ですが、その動向を知っていく中で開かれていく可能性は私たちにすでに内在しているものだと考えるようになりました。

オランダの流行があるから、オランダのように日本がならないといけない、ではなく、オランダの流行があって、日本は日本の持てる資源と可能性を最大限に解放し、日本が日本らしくなっていく、という方がしっくりきます。

またそこに日本らしくなっていくという「らしさ」を意図的にフレーミングして、こう見せなければならないというブランディングをしていくというよりも、自然とそう伝わってしまうという自然体のあり方として在るという選択をしていけたらいいのではないかと思いました。

あえて抽象的にオランダは、日本はという国の話をしましたが、オランダ人は、日本人は、という人の話にも当てはまりますし、私は、あなたは、という個人単位でも当てはまります。

今回のオランダのリサーチツアーでよかったと思ったことは、「日本で2年間学んでいたことを通して、オランダの人たちに何か貢献することができそうだぞ」という感覚が生まれたことでした。以前だったら、トレンドを学んでオランダ人のように学ばないと!という感覚のもと、オランダから学んだことを消費して、すぐに次のトピックに移っていったと思います。

自分の中では、海外と日本との間で優劣をつけて、どちらかになるべきという議論をするのは終わりを迎えつつあります。むしろ自分が持つもので貢献するにはどうすればいいのかを考え、海外の人ともともに作っていくという関係になっていけそうです。

ちょっとしたオランダでの学びでした。

こういうふうに書いてますが、オランダ、めっちゃ面白いですよ!世界の国の中でもサステナビリティ(持続可能性)についての取り組みに関しては一つ抜けている印象があります。すっごく面白い国だと思いますし、一度行ってみるのはおススメです。

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