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モノやコト、組織を良くする3つのフィルター

人は誰しも目に見えているものに対する批判をいとも簡単にやってのけます。特にモノづくりの世界では顕著ですが、それは新しく事業を立ち上げたり、組織やプロジェクトを作り上げる際にも同じことがいえます。批判される方は、「じゃお前がやってみろよ、ゼロイチで何かを生み出してから批判しろよ。」となりがちで、それが出来もしないなら無責任に意見を言うなよ!と耳を塞いでしまします。私のようなものづくりに携わる創業者で新規事業を立ち上げるしか生きていく術がなかった者には繰り返しぶつかってきた壁になっていてずいぶんと蹉跌を味わってきました。創業経営者でなくとも新しい仕事にチャレンジされている方は同じような思いをされているのではないでしょうか。

Think big small start!

ゼロイチで何かを生み出せない者が人が作ったものにあれこれと文句を言う資格がないという意見ももっともではありますが、本質的な視点を持つと、良いものは良い、だめなものはだめ、いけてないものはいけてないとの批判や意見を聞かずしていいモノ作りも良い組織や事業も作り上げられないのもまた自明の理です。プロダクトにしても事業や組織、プロジェクトにしても初めから完璧なものを生み出せるわけもなく、時代のスピードが極限にまで速くなりつつある現代においては、大きな志や構想を持っていたとしてもできるだけ早くスタートを切って、早く失敗して、早く修正してやり直す循環を高速で回しながら完成に近づけるのが今や常識になりつつあります。BIG think small start move first!の考え方ですね。

若手大工育成P2023

改善のための3つの条件

ただ、最近私が思うのは、新しく作り上げるモノやコトに対するコミニケーションの中で、意見を述べたり批判をする際の暗黙のルールを持っているかどうかが非常に重要だと言うことです。それは第一に目的を共有しているかどうかです。その次に大事なのは時間軸の感覚が揃っているか、第3は意見を言う側と言われる側の間に信頼関係が構築されているかです。これらの3つの条件が揃っていれば、良いものは良い、悪いものは悪いと言う議論が正常かつ前向きに成り立つと思っています。ただ、人間社会の中においては暗黙のルールなるものが非常に厄介で、形式知になっていない、見える化されてないが故、意見を言う側にも受け取る側にも軋轢や混乱が生じます。そして上述した3つの条件は、それぞれがとても曖昧で人によって捉え方に差異が生じやすいものばかりです。

若手大工育成P2022

形にするのに乗り越えるべき壁

プロダクトやプロジェクト、新規事業や新たな組織にしても、ゼロイチで立ち上げる際には多くの人の意見を集約する事はほとんどありません。1人の人、もしくは少人数のメンバーでまずはアイディアを形にする取り組みを始めることがほとんどです。そこからブラッシュアップしたりスケールするには多くの人から共感を得られるようなバージョンアップを繰り返す必要があります。多くの人の意見を取り入れることで多くの共感を集めることが出来るのは理論上間違ってはいませんが、3つの条件に当てはまる人がどれだけいて、同じベクトルに向いた意見をもらうことができるのか?と考えればそれも非常に難しいのは火を見るよりも明らかです。しかし、新しいモノやコトを生み出して1つの形として完成させるには絶対にこの壁を越えなければならないと思うのです。

若手大工育成P2021

人のフィルターの必要性

新たなものを生み出したいと思った時に絶対に必要なのは幅広く批判や意見を受け止めて真摯に改善に向き合うこと。ただ、闇雲にダメ出しをされたからといって良い方向に進むとは限っておらず、むやみに何でも人の意見を取り入れると目的を見失い迷走してしまうことにもなりかねません。では、どのような人からの意見を聞くべきなのか、その問いに対する答えである3つの条件を兼ね備えた人とコミュニケーションを取るにはフィルターをかけるしかないと思うのです。そして、人の心は目に見えないものであり、人が口にする事は本当のことか上っ面を滑るその場しのぎの言い訳かの判断も難しいもの。結局、何を言っているかではなく、何をやっているか、態度と行動で示された事実によって判断するしかないのだと思います。

継塾でのBMCワークショップ

何を言ったかではなく何をやったか

実践哲学の祖と言われる王陽明が遺された概念の中に「知行合一」と言うものがあります。人は誰しも生まれ持って良き心を持っており、学ぶ事もなくそれを知っている。皆が知っている通りの良き行いをすることで世の中は良くなり、人々は幸せに暮らせるようになるとの文脈です。陽明学の実践者と言えば吉田松陰先生が有名ですが、幕末の激動の時代に匹敵するような時代が大きく転換しようとしてる今、新しいモノやコトを生み出しイノベーションを起こすには今一度、古典に学び、何を言ってるかではなく何を行っているかで人が評価され、そのフィルターを取った人たちが集まる信頼関係のあるコミュニティーの構築が不可欠なのだと思う次第です。知行合一、簡単ではありませんが基礎として大切にすべきあり方、座標軸にして捉えたいと思うのです。

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概念を学び実践で裏打ちする建築現場実務者向けの研修を行っています。

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