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一事を聞いて十事を(探究して)知るべし

人は根源的に成長したいと思う生き物。と言われます。
そして、人が成長するための行為を古来から学問と言い、問いを持つことこそが学びであるとされてきました。
日本古来から学問と言えば中華の古典です。切磋琢磨、致知格物、本末転倒、等々、論語や大学の中の言葉が現代の慣用句となって定着しているものは数多くあります。三千年もの悠久の時を経て今なお、生活の中に浸透していることの凄さを感じると共に、それらが人の営みの真理だからこそ、脈々と生き続けているのだと思ってます。
その中に、「一を聞いて十を知る」との一節があります。私はこれこそが、人が学問を得て進むべき大きな目標では無いかと最近思うようになりました。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)

自律社会は誰もが問いを持つことから

50年前に発表されてその精度が高すぎると話題のSINIC理論では、今の世の中は最適化社会の最終局面だと位置付けられています。確かに、欧米型の新自由主義がもたらした行き過ぎた資本主義は世界中で否定され始め、世界は戦争が日常になりました。2月2日にアメリカがイラクとシリアに空爆の作戦行動に出たとのニュースは本来、大変な出来事ですが、すっかり日常茶飯事的なニュースなのか、日本では殆ど取り上げられていません。これが報復の連鎖に繋がれば第三次世界大戦の口火を切ることになる可能性もあるにもかかわらず。です。
コロナによるパンデミックはグローバル・スタンダードと言われる巨大企業の寡占化に歯止めをかけて、各国に経済の主権を戻しましたし、人が時間や場所、身体的制限に囚われないコミュニケーションを可能にしました。昨年から一気に一般社会に普及し始めた生成AIの技術は、あらゆる人が簡単に情報を分析して最適解を導けるツールです。これらの流れを鑑みると、確かに今、最適化に突き進んでいる社会だと感じます。
しかし、それは同時に人としての存在意義、人にしか出来ない思考や、人にしか感じられない感情の重要性が再認識される時代へのプロローグだとも思うのです。
SINIC理論では2025年から自律社会へと移行するとされています。今こそ、本質的な学問を深く探り究めるべく、取り組むときでは無いかと思うのです。

探究する力

「問いを持つ力」の重要性は近年、文科省の教育白書でも明記されており、これからの不透明で不安定な時代を切り開き、イノベーションを起こして、山積した社会課題を解決に導き続けるには不可欠な学びの要素とされています。昨今の小中学校での探究学習の広がりがその流れを如実に表しています。まさに学問の時代と言っても過言では無いのではないでしょうか。
また、探究の重要性はもちろん教育業界のみではなく、実社会でも大きく取り上げられています。時代の変化と共に企業の姿やビジネスモデルは刻々と変化を遂げており、モノ重視のプロダクトアウトからユーザーの需要にチューンングするマーケットインへの転換が叫ばれたのも今は昔。
近年は、ユーザーのまだ気付いていない潜在的な需要の掘り起こしに留まらず、根源的に求められている幸せな体験をデザインするUXデザインがデザイン思考やデザイン経営という文脈で主流となりました。多くの大手企業では新商品やサービス開発はUX事業部が担っています。
これらは即ち、人の幸せを探求することこそ、マーケットを創ることであり、企業が存続する基本的な概念だと認められたことを意味します。
今では、それももう一歩踏み込んで、CSVモデル(クリエイティブ・シェア・バリュー=共有価値の創造)や社会課題解決型ビジネスと呼ばれるようになりました。企業の目的は株主利益の最大化だけでは無いとの風潮は最適化社会の分かりやすく顕著な現れだと感じています。
要するに、これからの混迷の時代において探求する力(=問題解決能力)こそ、企業の重要なリソースになったということです。

人の心はどこにあるのか?

人の幸せとは何か?との問いは、人類が社会を形成し始めた有史からの根源的かつ究極の命題です。その答えは人の数だけ数限りなくあり、しかも時代と共に移り変わります。非常に複雑で難解な問いだからこそ、数多くの解を並べて、時代や国、地域などのセグメントに合わせて最大公約数で括ってみたり、因子を抽出してみたりの研究が必要になります。企業がこの解を手に入れることが出来れば、事業で人を幸せにすることが出来て、永年の存続を許されるようになります。

探究: inquiry)は、知識を論証すること、疑念を解消すること、ないしは問題解決をすることという目的のある思考過程のことである。探究理論は、さまざまなタイプの探究および各タイプの探究がその目的を達成する方法の取り扱いについての説明である。

Wikipediaより引用

この探究こそが、「一を聞いて十を知るべし」と論語に示されている学問のあるべき姿ではないかと思うのです。
私が世話人として参画している経営実践研究会での主たる学びの一つに「人の心はどこにあるのか?」との問いがあります。これは幸せを求める人の指向性や興味、関心の所在、もしくは方向を探究することであり、この問いの解を理解して、理論通りに実践できれば組織を創ることが可能になる、もしくは運営する力を身につけることができる、究極のスキルと言っても過言ではありません。
現在、私を含め全国で1000社のメンバーが事業そのもので社会課題を解決する、持続可能なビジネスモデルの構築を目指して研究と実践を行っております。そして、その先には、CSVモデルの企業が協業して1社では叶わない大きな課題解決を社会実装するプロジェクトを立ち上げて活発な活動を行っています。
それらは全て、人の心の在処を深く究めて、複雑な解を見つけ出した上で、本質的なマネジメントを遂行した結果、組織を創られる力を身につける探究の学びの上にあります。
その様な実践を繰り返してみると、一つずつの行動・計画について深く探究することで、多くの本質的な解を出し、それらを網羅できた時に初めて結果を生み出せるのだと気付かされます。
問いを立て、ありとあらゆる角度、切り口からその探究を行う思考を身につけて、一事を聞いて十事を知る者に、いつの日かなりたいと思う次第です。

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