見出し画像

得意技を捨てろ、顧客に向き合え

先日、北海道、札幌に出向き、社長大学を主宰されているう山内良祐氏にお話を伺いました。様々な業種業態の事業の経営に携わった後、事業再生コンサルタントとして活躍されてきた大先輩の言葉はとても重く、インサイトをついており、多くの示唆を頂く事が出来ました。山内氏が社長大学なる経営者の為の勉強会をスタートされた背景は、ビジネスモデルを構築できる経営者が少なすぎる、他社の模倣や上手く行った事例の二番煎じではなく、自社独自のアクションプランを組み立て、経済性と社会性を両立するモデルを作り上げる能力を経営者に身につけて貰いたい。との思いがあってとのことでした。そんな山内氏にビジネスモデルを構築するのに最も大切にすべき要点は何か?と伺ったところ、「徹底的かつ、リアリティーのある成果測定です。」と明快に答えられ、さすが、現場を知っている経営者はそこに重点を置くのだと現場主義がやっぱり基本なのだと感じ入った次第です。

マーケティングとUXデザイン

私は長年、原理原則系と言われるセールスを不要とする仕組みとしてのマーケティングを学び、実践を繰り返してきました。世界No1企業になったAppleがその概念を取り入れて、結果、世界のトップに上り詰める程、圧倒的に業績を伸ばしたと言われるジェイ・エイブラハムの卓越の戦略はその代表的な考え方で、顧客を恋人の様に愛せ、と徹底的な顧客への体験価値の提供を奨励しました。そのマーケティング理論をさらに深めて、顧客のまだ知らない体験をデザインする手法というより哲学として世界を席巻したのがUXデザインの思考です。私も5年間の長きに渡ってUX(ユーザー・エクスペリエンス)の設計・開発を学びに学校に通いました。そこで繰り返し叩き込まれたのはユーザー・リサーチ、観察調査の重要性とそれを元に、インサイトを抽出して新たな価値提供となるサービス・デザインのアウトプットです。そんな経歴を経てきただけに、UXという単語こそ出てきませんでしたが、山内氏の言葉とその理論はマーケティングに対する造詣の深さを感じさせられました。

経済なき道徳は寝言

ここ最近、社会課題解決型事業モデル、CSV経営を研究するコミュニティーである経営実践研究会での活動を行うようになってから、世の中を良くしたい、悪しき慣習を叩き壊して、人が幸せになる為のあるべき社会を実現したいとの強い思いを持った人たちとの出会いが数多くあります。その方々はもちろん、本業での社会課題解決を目指して事業を行っておられますが、そもそも、社会性の高い事業はボランティアになりがちで、収益性、マネタイズの部分の組み立てが難しいという壁に突き当たっておられる方が少なからずおられます。即ち、ビジネスモデル構築に課題を持っておられ、山内氏が主宰されている社長大学のような学ぶ機会を持つ場が必要だと強く思います。
本来、経営者の仕事とは経糸を営むと言われるように、持続可能なビジネスモデルを構築することだと私は思っています。その意味では、マーケティングやUXデザインなどの知識は経営者としてまず身につけるべきリテラシーだと思っています。その入り口として、株式会社四方継の本社で毎月開催している勉強会「継塾」ではその周辺の学びの機会を提供しています。

顧客は誰か?から始める

継塾では4ヶ月に一度程度の頻度でホットシートなる参加者の一人をピクアップしてその事業モデルを刷新して、事業で抱える問題解決、ビジネスモデルの刷新を参加者全員が参加するワークショップ形式で行っています。たまに番外編で出張WSも行ったりしています。
そこで使うBMC(ビジネスモデルキャンバス)なるフレームワークはビジネスモデルを構築するファクターを整理する表ですが、順番が非常に重要で、まず顧客は誰か?との問いから始めなければなりません。
新しくビジネスモデルを考える際、つい自分もしくは自社が持つリソースや強みを元に考えてしまいがちです。しかし、その思考では今までの事業の延長線上の案しか出てくるはずもなく、ビジネスモデルの刷新につながる事はありません。ビジネスモデルの考案、構築とはまず、自分の持つリソースや得意技を手放す所から始めるべきなのです。

ビジネスモデル構築の入り口

ビジネスは常に顧客があってこそ成り立つもの、新しいビジネスモデルを作り出すには新しい顧客の開拓が欠かす事が出来ません。今まで接点を持つ事がなかった未来の顧客は、今、自分たちが持っているリソースなどには全く興味がありません。それをいくら振り回しても、声高に叫んでも誰も振り向いてはくれないのは当然です。「顧客は誰か?」とのシンプル過ぎる一見単純な問いは実は非常に深く、やもすれば顧客の設定の一つずつに対して別立てのビジネスモデルが成立する可能性さえあります。例えば、教育コンテンツを提供するビジネスでも、顧客が一般家庭なのと学校、もしくは事業所では主たる活動は全く違うことになる可能性があります。
重要なのは事業を通して実現したい志を明確に持って幅広い顧客像をイメージすること。その顧客にどのような価値を提供できるのか?社会に蔓延る数多くの課題を解決できるのか?そんな顧客視点をイメージしながら探求を繰り返すことから、新しいビジネスモデルを生み出す入り口があると思うのです。

流れより速くパドルを漕げ!

本業そのもので社会課題を解決する。そんな社会性の高い、無くてはならない、世の中を良くする事業所は同時に持続可能性を持つべきです。そして、時代の大きな変化とそれに伴うユーザーの購買行動の変化に対応するには何度も繰り返しビジネスモデルの刷新が欠かすことは出来ません。あらゆるものが一瞬にして陳腐化してしまう急流を下るような今の時代では、まず、自社のリソースや長年培ってきた強みを手放してユーザーの立場に立って物事を考える。その視点を持ちながらユーザーの行動や思考を観察調査や効果測定を繰り返してインサイトを見つける事が出来れば、新しいビジネスモデルを生み出せる入り口が見出せる様になると思うのです。
急流を転覆せずに下るには流れより速くパドルを漕げ、とのカヌーのオリンピック選手の言葉があります。ビジネスの世界も一度うまく行ったからといってそれがいつまでも再現するとは限らないどころか、ブラッシュアップを続けなければ埋没してしまうのが今の世の中だと思います。最近特に、常日頃から得意技を捨てるくらいの気構えを持って事業に向き合う必要を感じています。

_________________

持続可能な循環型ビジネスモデルの無料勉強会を毎月開催しています。






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?