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工務店の次の一歩 〜JBN設立15周年全国大会〜

JBN(全国工務店協会)は全国の工務店が集う唯一無二の団体で国土交通省との関わりも深く、住宅政策の立案、施行にも深く関わっています。各都道府県に下部団体があり、私が副会長を務めている京阪神木造住宅協議会もその一つです。私はJBNの代議員も務めている関係もあり殆どの会合に参加する様にしています。

里山資本主義から学べ!

今回は設立15周年の記念すべき大会となり、いつにも増して多くの会員が東京に集っていました。基調公演や分科会で最新の情報収集や、大工育成事業や環境配慮型住宅の研究など全国で進められいる事例に触れて、激しく変化し、今後厳しさをますのが確実視されている経営環境に適応するべく気付きと学びを得られておられました。特に、鋭い舌鋒でその言説は辛口かつ気付きに富んでいると定評のある「里山資本主義」の著者、藻谷浩介氏の基調講演では過去10年の日本の経済や人口の動向を数値で示し、思い込みを捨てて新しい道を模索せよ!と流石の檄を飛ばされていました。先進国の中で圧倒的に森林資源に恵まれている日本。木と共に生きてきた大工、工務店は石油由来の新建材から即座に脱却し、山の資源を活用し循環型の経済圏の構築に寄与するべきとの着地は聴いていて心地よく、よくぞ言ってくれました!と心の中で喝采を送りました。

業界変革の萌芽

2日目の分科会では私達も神戸で行っている国交相事業の大工育成プロジェクトや災害対策委員会、10月から施行された高いレベルの省エネ等級の家づくりを気候差のある日本各地の工務店がどのように取り組んでいくべきかなど、非常にタイムリーな情報共有がなされました。次世代を担う工務店経営者が集まって業界の未来を標榜する委員会では新建ハウジングの三浦社長がプチ公演とファシリテーターを務められ、そこでも大工育成の重要性と緊急性をテーマに取り上げられたのは非常に印象に残りました。そんな2日間のJBN全国大会に参加しての私の感想は、旧態依然として変わらなかった建築業界も新しい時代に適応して変わり始める萌芽が芽生え始めているというコトでした。まだ、小さな芽ではありますが、ここから確実に大きな幹に育っていく、そんな予感を感じさせられる大会だったと思います。

モノづくりの本質とはなにか?

建築業界というのは、そもそも地域に根差す、超地場産業で、家を建てる、修繕する、増築するといった際は近所の大工さん、もしくは工務店さんに声を掛けて普請するのが当たり前でした。しかし、時代の変化と共に宣伝広告が上手な会社、ブランドイメージを作るのが得意な事業者に仕事が集まるようになりました。大手ハウスメーカーやリフォーム会社の出現です。今では、インターネット上にHPがなければ、この世に存在していないと同義に扱われるようになり、SNSやYouTubeの活用が住宅事業には欠かせなくなってしまいました。モノづくりの本質からズレているようにも感じますが、ユーザーのニーズや情報量が変わるのに適応しなければ事業は成り立たないのはいつの時代も同じです。情報の透明性を担保しつつ、単なるモノの提供ではなく、ライフスタイルを提案、提供するのが住宅事業の本質だと考えれば、現在の状況は決して悲観するべきではないと思うのです。

マーケティング、ブランディングの先へ

しかし、最終的に建築会社の良し悪しは出来あがった建物、そこでのユーザーの暮らしで評価されます。それが高い評価を受けてこそ、未来の受注に繋がりますし、いくら集客とクロージングの売ることに長けても、出来上がったモノ、顧客の体験が悪ければ、悪評が立ち事業所の未来はありません。結局は現場でのモノづくりに集約されますし、モノづくりは人づくりでもあり、職人をはじめとする現場実務者の育成なくして未来はないと思っています。この本質を重要視されているから、藻谷さんは地元の木を循環させるモノづくりを強く推されたのだと思うし、新建ハウジングの三浦社長は大工育成をディスカッションのテーマに振られたのだと思います。私としてもここに工務店の次の一歩があると思っています。それはマーケティングやブランディングの先にある「共通価値の創造」です。

共通価値の創造こそ工務店の次の一歩

地域における認知を広げ、接点を作るマーケティング、同業他社との競争から抜け出すブランディングの先にある「共通価値の創造」とは、建築事業者がもっと地域にめり込んで、深く根を張り、地域に住む人々と共にあることを示しながら、地域住民と共有できる価値を生み出す経営です。そもそも、ライフラインやインフラを担う建築事業者は、自然災害が起きた時に特に顕著に表れますが、事業そのものが地域貢献の一環になり得ます。そのポジションを鮮明にして、自社が地域のためにあり、地域に生かされていることを認知していることを事業で体現することによって、マーケティングやブランディングが上手い会社と一線を画した立ち位置で地域から求められる存在になるのです。いま時の言い方をすればCSV(creating shared value=共通価値の創造)と呼ばれる在り方へのシフトこそ、工務店の次の一歩だと思うし、そのムーブメントの種が生まれ始めたと感じるイベントになりました。

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顧客と共通価値を生み出す人材の育成をお手伝いしています。

11.26神戸にてオープンイベント開催します!

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