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非連続の連続性の認知と根拠なき連続性の危険性 @事業承継プロジェクト

私が代表を務めている株式会社四方継では、現在、事業承継プロジェクトを推し進めています。創業者としてこれまで23年間会社を牽引してきた私も今年で56歳、そろそろ後進に道を譲る年齢になりつつあり準備を始めています。私が目指す事業承継の形は、今までの私1人が代表だったトップダウン式、ヒエラルキー型組織ではなく、一定のキャリアを積んでマネージメント層に上がってきた社員が、自分でやりたいプロジェクトを立ち上げ、それぞれがマネタイズしながら、合議制で会社全体の方向を整え、全体最適を叶える、やりたいことができて、言いたい事が言える民主的な自律分散型の形態を目指しています。

連続性は非連続性が創る

事業承継の取り組みとは要するに事業所の連続性の担保なのですが、今の時代、未来永劫持続可能なビジネスモデルなどある訳もないし、そもそも私達の様な脆弱な資本力しか持たない、吹けば飛ぶような弱小事業所が10年後、20年後を標榜して組織づくりを行うなど大した意味もなくばかばかしいと思われる方も少なからずおられると思います。
戦争や自然災害等々、世界的な混乱が次々と起こる中、先行き不透明で未来の予測が立たない上に日本では人類史上類を見ない激しい高齢化と人口減少の局面に入り、今後確実に内需産業は全体的に沈んでしまいます。そんな厳しい経営環境の中でも私達は約束を守るために事業を存続させる責任があります。確定させようもない曖昧な未来に連続性を見出すのは困難ですが、それでも20数年間にわたって事業を継続してきた事実に向き合い偶然の連続が必然になる非連続の連続性を認知することが必要だと思っています。

事業承継に取り組む理由

そもそも、なんのためにまだ50代半ばの代表者が元気なうちに事業承継の取り組みを進める必要があるのか?との問いが社内でもあります。その答えは非常にシンプルで人が誰しも逃げることができない3つの真実から目を背けずに、思考停止をやめようと決意したことに因ります。昨年、私は自転車で走っている時に車に撥ねられて九死に一生を得たのですが、車に跳ね飛ばされる瞬間に考えたのは「やってしまった!」との後悔で、それはこの世からいなくなる準備を全くしてこなかったことへの自責の念です。「人は必ず死ぬ、それはいつ何時やってくるかわからない、そしてその時に刻一刻と近づいている」その3つの真実を知っているのにもかかわらず、スルーして何も準備しなかった自分の迂闊さを嘆きました。とにかく、スタッフやその家族、取引先、お客様、その他多くの関係する人たちに対する責任が私にはあり、何一つ全うできない状況にあることを思い知ることになりました。

事業承継とは約束を守ること

もしも、万が一、突然私があの世に旅立ったとしても、周りの人たちに迷惑をかけることがあってはならないと強く思います。死んだ後のことなんかしたんがな、とはやはり言えません。その為にはまず、私が立ち上げた事業を私がいなくなった途端に破綻するようなことは避けて、継続出来る状態を整えることが必要です。無一文の徒手空拳から起業した私にとっての事業承継のプロジェクトとは、会社の株や権利をどうこうするとかの話ではなく、多くの人との約束を守るために行っていると言っても過言ではありません。特に私達のような地域に密着した建築事業者は街のインフラ、引いては地域に住まう人たちの暮らしを守る重要な役割を担っているだけに、代表が死んだからといって簡単に潰れてしまう訳には絶対にいかないのです。

誰に、何を、どうやって

事業承継の取り組みは大きく3つのカテゴリーに分かれます。まず、誰に継ぐか、次に何を継ぐか、そしてどの様にして継ぐかです。誰に継ぐかに関しては、上述の通り、マネージメント層の複数メンバーにあまり大きな負荷が掛かり過ぎないように役割と責任を分散して権限を渡す。何を継ぐかはについてはビジネスモデルというよりもメンバーと共に培ってきた価値観や世界観、そして顧客やステークホルダーとの関係性を継承したいと思っています。最後のどのように?が実は一番問題で、事業を承継してもらう為には承継可能な事業になっていなければなりません。持続可能で継続できる事業になっていてこそ継いでもらう価値がありますし、その為には外部環境の激しい変化を乗り越えて収益が上がり続けるビジネスモデルを構築しなければなりません。しかし、世の中が大きな転換期を迎えている今、3年後、5年後の売り上げや利益を確定させるのは至難の業であり、業種業態、規模の大小に関わらず簡単にできることではありません。

非連続性の連続性への危機感

経営を取り巻く外部環境や市場の動向を冷静に分析すればするほど、中長期の具体的かつリアリティーのあるビジョンは立てにくくなります。建築業は特に単価が大きく、リピート受注までのスパンが長い分、事業の連続性を見出しにくい業態です。常に点と点をつなぎ合わせて売り上げを作っていくと言われていますし、繁閑の差が激しい特定業種として国からも指定されています。しかし、そんな前提は今に始まったことではありません。これまでの20数年間も非連続性の業態ながらも連続して事業を継続してきたのは事実であり、20年前の殆ど顧客もいない、応援してくれる人もいない、コミュニティーもネットワークも無かった頃から考えると確実に自社の持つリソースは増えています。創業時に比べると連続性を担保する地力はかなり大きくなりました。ただ、これまで非連続性の中で連続性を保ってこれたからといって安心して現状維持を目指してしまうと、それも非常に危険だと思っています。

承継すべきは経営者としての判断

実は、これまでの20数年間の連続性を担保してきたのは、数々の新たな取り組みにチャレンジしてきたことと深い関係があると思っています。常に様々な学びの場に足を運び、情報収集を繰り返してはそれを自社に落とし込み実践に繋げる。スタッフにしてみればまた新しいことを始めないといけないのか、と大きな負担を感じていたと思いますが、何も考えず、目の前にある仕事に懸命に向き合うだけでは非連続性の波に飲み込まれてしまっていたと思います。結局、それらのアクションこそが経営判断であり、事業承継の本質はその部分をどのように継ぐかに集約されると思っています。
実際、現在でも実務はスタッフに任せきりで、私が担っている業務は非常に限られている上に、事業所に殆どいません。建築実務ではなく、経営環境や市場の動向に対するアンテナを張り、非連続性から連続性を生み出す次の一手を考えることが私のメインの仕事になっており、これを5年の年月をかけてスタッフのメンバーシップチームに承継しようとしています。

人が持つ無限の才能を信じる

これまでとこれからは全く違う世界になると言われます。今後の経営環境を考えると決して楽観視はできないのは全ての経営者の共通認識だと思います。しかし、理想とする未来、あるべき姿に目を伏せて、今だけ、金だけ、自分(自分達)だけの価値観に陥ってしまうと、絶対に明るい未来が現出することはありません。目の前の業務はもちろん大事ですが、そこだけに囚われるのではなく、未来を見つめながら、走りながら事業所のあるべき姿へと状態を整える思考が経営者には必要で、白か黒か、右か左かのどちらかに割り切る二項選択ではなく、苦しく大変ですが、迷った時は常にどっちもを切り捨てない二項動態の思考を持ってもらいたいと思っています。経営判断も私一人で行うよりも多くのメンバーで知恵やアイデアを出し合い幅広い選択をした方がきっと良い判断が出来るようになると思っていますし、それが非連続性の連続性を生み出す原動力になると思うのです。人が持つ無限の才能を信じて事業承継の取り組みを進めたいと思うのです。

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事業所の在り方を見つめ直し、社会課題解決モデルの事業に取り組んでいます。繋がってください!





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