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令和デモクラシーに必要な3つの概念② 〜タレンティズム(才能主義)〜

令和4年も残すはあと2日。新年を迎える前に1年の締めくくりとしてこれまでの流れを俯瞰して節目として考えるようにしています。
戦争や暗殺など暴力による現状変更や強制的な統制が横行し始めた近年、民主主義で世界は動いていないことを改めて実感させられました。
暗黒の時代にならないように今一度、日本から本質的かつ成熟した民主主義を取り返すべく、重要なキーワードを紐解きながらこれからの私達の選択について考えてみたいと思います。令和デモクラシーを起こすにあたり私が重要視している3つのキーワードから今日はタレンティズム(才能主義)について考えてみます。

エコノミストの民主主義指数による2020年の世界の民主主義のデ・ファクト(事実上)の状態。濃い緑が最も民主的(指数10)、濃い赤が最も非民主的(指数0)

民主主義はマジョリティーではない事実

日本に住んでいると民主主義という言葉、社会システムは太陽が東の空から昇ってくるのと同じくらい当たり前に手に入るし既に普遍的にあるものだと勘違いをしてしまいそうになります。しかし、世界を見渡してみると民主的な運営をされている国や地域は半分にも満たない、どちらかというと少数派だということに気付かされます。また、日本の隣国は中国の習近平、北朝鮮の金正恩、ロシアのプーチンと一党独裁の政治が行われている民主主義と正反対のパラダイムの国が並んでいます。当然、そこには対立と分断が起こり、特に今年は地政学的なリスクが大きくクローズアップされることになりました。日本でも来年度予算で軍事費を倍増させる案が浮上しており、成熟とは真反対の軍事力による微妙なパワーバランスの上に私達の生活も成り立つ様相を呈し始めました。そんな世の中の情勢に日本国民の殆どが無関心を決め込んでいると、気づいた時にはウクライナの人達のように真冬に暖も取れない生活になってしまう可能性があると思います。国民全員が主体性を持って物事を考えるところから、令和デモクラシーが始まらないといけないと思うのです。

ヒトラーも民主主義だった。

democracy(デモクラシー)という言葉は民主主義、民主化と訳されます。人は、誰も平等な命として生まれてきて、自由に生きる権利を有すると言う考え方はさすがに否定する人はいなくなったと思いますが、実際の社会システムは、残念ながらそんな思想は具現化されていません。また、マルクスが唱えた共産主義やヒトラーが行ったファシズムによる強権政治も、民主主義がその根底にあったとされます。国家や組織がそれを構成する人たちの合意を得ずして一切機能しないことを考えれば、方法論は様々ですがとにかく、人心を集めなければならないのは自明の理。大切なのは、民主主義や民主化ではなく、どのように成熟した多くの人が幸せになる全体最適に向かう社会システムを構築するかだと思うのです。

民主主義(みんしゅしゅぎ、: Democracy)または民主制(みんしゅせい)とは、人民または地域権力を所有し、それを自ら行使する政治思想または政治体制のことである。
古代ではアテナイの民主政が有名であり、近代では市民革命により一般化した政治の形態・原理・運動・思想で[3][4]、民主主義に基づく社会は「市民社会ブルジョア社会・近代社会」などと呼ばれる。対義語は権威主義寡頭制独裁政治専制政治神権政治など。
民主主義や民主制を、国の基本的な原則として重視する国家のことは民主国家と呼ばれている。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

衆愚で哲人のいない日本の政治

ギリシャの哲学者、プラトンは、民衆は愚かであり、その欲望を反映する政治は、衆愚政治になると民主主義を否定しました。彼は哲人政治を奨励し、愚かではない人たちによる知見を集めて、政治を動かすことが最上であるとの考えを述べています。その言葉を噛み締めつつ、今の日本の民主主義政治を鑑みると、国民は政治や経済、安全保障に対して無関心を通り越して無頓着。間接民主主義を行使している政治家は、自分が選挙に勝つこと、利益誘導を行うことで既得権益を守ることにとらわれて中長期的な国家戦略を考え、実行しているとは思えません。その結果が失われた30年と呼ばれ、世界の中で、埋没していく今の日本に反映されているのだと思います。今だけ、金だけ、自分だけ良ければ良いとの価値観が蔓延し、国民も政治家も経済人も、官僚も全てが暗愚になりかけていると感じてなりません。

デモクラシーが求められる時

先行き不透明で閉塞感漂うこのままの世の中を何も考えずに受け入れて、そのまま次世代に託するのはあまりにも無責任だと感じます。日本人に最も読まれた書籍「学問のススメ」の中で福沢諭吉先生は「額に汗して、一生懸命働いて、家族や家を守り、将来に備えて蓄えを残すなどは蟻でもやっている、万物の霊長足る人間に生まれてきたのならばそんなことで満足してはならん、目的を果たさなければならない」と書かれています。そして、その目的は先人が築き上げてくれた文化文明をよりよく発達させて次の世代に残すことだと言われています。私たちは食べるものに困ることもなく、ものが溢れかえる豊かな世界に生きてきました。しかし、世界有数の自殺大国であり、生きにくさを感じて社会から離脱する若者が爆発的に増加している今の日本は決して幸せな国にはなっていないと思います。組織は組織を構成する人の為にあるべきだと思うし、国は国民が幸せになる機関であるべきです。もっと1人ひとりが全体最適を考え行動に移す時がきたのではないか、今こそ、人民が人民の幸せを考え、実現する真の民主化を推し進め時だと思うのです。

良知を開く

プラトンが示唆した愚かな民が集まってもろくな事にならないとの衆愚政治の危うさは私も同じ様に感じています。ただ、根本的に違うのは、私は人は誰しも生まれ持って良き心を持っているとの性善説に立脚して物事を考えたいと思っており、孟子が「惻隠の情」で表した良知を備えていると信じているところです。
古代ギリシャの時代から現代に至るまで、政治は経済と密接な関係があり、経済の発展無くして国が栄えることも守られることもありません。そして、経済は信頼こそがその本質であることを考えれば、誰もが持つ良知を開く事は政治だけでなく経済も同時に発展させると思うのです。

民主化に欠かせないタレンティズム

確かに人は愚かな選択をします。人類の歴史を見てもそれは明らかですが、人は間違いを見て学習する力をもっているのもまた事実。学び習い、問いを持ち、過ちを正し成長する生き物でもあります。その根底には、誰もが良知を持って生まれてきて、良き心をそのまま行動に移せば、必ず信頼を得ることができる、それはそのまま人間誰しもが持つ才能です。
ピラミッド型のヒエラルキーの世界では、人は隷属し、縛られて才能を発揮することはありません。多くのアイディアを生み出し、イノベーションを巻き起こすには、自律分散型の組織に移行すべきだとの近年盛んに耳にする論調は、すべての人の才能を開く事を主眼に置いているからです。タレンティズム(才能主義)こそが、令和時代のデモクラシーに欠かせない重要な概念だと思う所以です。

人の力こそ全て。

今後、人口減少が加速する日本において、独立国家としての国体を守るには、より多くの価値の創出が必要になります。それは、トップ数%の指導者による昭和から平成時代の成功体験に基づいた考え方やアイディアでは叶えることができず、もっと広く多くの人の才能を生かす方が良いに決まっています。これは、国全体に限らず、あらゆる企業や組織でも当てはまることであり、誰もが持つ才能を信じ、育てることが何よりも重要だと考えます。あらゆる課題や問題の根本解決は全て教育にありと言われますが、タレンティズムに立脚した人材の育成こそ、令和時代を乗り越えるのに欠かせないと思うのです。地域企業から令和デモクラシーを起こす理由がここにあります。日本の97%を占める地域企業が主体的に物事を考えられる優秀な人材を育てることに注力することができたら、日本全体がきっと変わると思うのです。

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建築実務者の良知を開く研修を行っています。

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