夏野菜、最後のお楽しみ − オカワカメ −

「オカワカメ」という野菜をご存じですか?

丘で育つ若布だから「オカワカメ」。
ワカメといいつつ海藻類ではなく、
ツルムラサキ科アカザカズラ属の植物で、野菜としても扱われています。
関西地方では「雲南百薬(ウンナンヒャクヤク)」の名前のほうが
よく知られているかもしれません。
熱帯アメリカまたは熱帯アジアに自生していますが、
かつて中国から、薬草として伝わったためにつけられた名前です。
また、正式な和名は、属名にもなっている「藜蔓(アカザカズラ)」です。

なぜ「オカワカメ」と呼ばれているかというと、
茹でた葉は黒く、ちょっとぬめりが出て
ワカメにそっくりな食感になることにちなみます。

△ ベランダのフェンスに絡めると、手間なくグリーニング(緑化)できます。

ベランダでも育てられる葉野菜

特に目立った病害虫もないことから、
誰にでも育てやすい丈夫な野菜として注目されるようになりました。

ハート形で光沢のある厚い葉は暑さに強く、
夏のあいだじゅう、ぐんぐんとつるを伸ばして育ちます。
このつるも赤く、ちょっと見栄えがよいのです。

フェンスやアーチに絡めたり、緑のカーテンに仕立てたら、
緑色が濃すぎない若い葉を摘み取って、
おひたしや天ぷら、炒めものなどさまざまな料理に使えます。

私のオススメの食べ方は、やっぱり名前のままに使う味噌汁!
ワカメの代用品というより、オカワカメの味噌汁が食べたくて、
育てているといっても過言ではありません。
夕飯の支度の合間にベランダに出て、
ちょいちょいっと摘みとった葉を洗って切って、味噌汁に入れるだけ。
その手軽さもお気に入りの理由です。

△ 夏じゅう、収穫できたオカワカメの葉。

秋から冬は、どうするの?

熱帯植物ですから、霜が降りるころにはつるが傷んで枯れてしまいます。
でも根は生きているので、
コンテナ植えなら、そのまま霜の当たらない軒下などで
来年の5月ぐらいまで保管します。
庭植えにした株は株元まで切り戻し、土をかぶせて、
さらに腐葉土やわらで覆っておきましょう。
寒冷地なら、コンテナに植え替えて、
らない場所で保管するのがよいでしょう。

それから、オカワカメのつるか株元に
ぽっこりイボのようなものが
できているのを見つけることができることと思います。
これはオカワカメのムカゴ。
ムカゴをはずして保存し、
翌春に土に埋めると発芽してふやすこともできるんです。

△ つるにぽこぽこついているのがムカゴ。


△ こんな大きなムカゴもできていました。

クライマックスは甘い芳香に包まれて

さて、「最後のお楽しみ」なんて
仰々しいタイトルをつけましたが、
季節が進み、オカワカメをお休みさせるまでに、
もうひとつ楽しみにがあるのです。

それが「オカワカメの花」!

△ いっせいに咲き始めたオカワカメの花

気温が低くなるにつれ、葉は夏のような勢いをなくしますが、
つるの先に花芽をつけ始めます。
クリーム色の穂になって咲く花は、
華やかではありませんが、ナチュラルなかわいらしさがあります。
特筆すべきは甘い芳香!
あたり一帯によい香りが広がります。
ハチなどもよくやってくるので、蜜源植物にもなっているのかもしれません。

日よけに、手軽な野菜に、そして甘い芳香。
初夏から晩秋までの長い期間、
今年もオカワカメをたっぷり、だけど全然手をかけずに、楽しむことができました。

まだ栽培したことがない方は、
ぜひ来年はベランダや庭の隅っこにでもオカワカメを植えて
手間なしで、ながーくつき合ってみてくださいね。

△ 友だちはベランダで、オカワカメをアーチ状に育てていました。花穂がスワッグのように下がり、それは見ごとな香りでした。


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