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【特急湘南26号 Vol.09】常同行動をしているから前世はアザラシなのかもしれない

いつものように、午前8時11分藤沢駅発の特急湘南26号に乗って、渋谷へと向かう。僕の居場所は相変わらず3号車8番のA席。車内のいつメンたちとともに過ごしているのだが、知らないヒトたちなので今のところ交流は一切ない。


前世でも同じ車両、同じ席に座っていたかもしれない

自分でも不思議なのだが、毎日同じ座席で通勤するというこの謎の習性。これはいったい何なのだろうか。転生前すなわち前世でも同じ列車、あるいは同じ人力車、ここではないどこかの国の鉄道で、同じ車両の同じ席に座っているタイプだったのかもしれない。もちろんこの話は前世が人間であることが大前提だ。だが、同じことを実行するという習性があるのは人間よりむしろ動物なのではないだろうか。

前世はアザラシで、これは常同行動だったのかもしれない

先日行った地元の新江ノ島水族館で見たアザラシはずーっと同じ行動を繰り
返していた。水に潜る、少し回転しながら泳ぐ、ターンをする、また少し回転しながら泳ぐ、またターンをする、の繰り返しだった。ひょっとすると、自分の前世はアザラシで、そのときの習性がいまこうして「毎朝、同じ車両に同じ座席に座る」という行動に繋がっているのかもしれない。ちなみに動物が同じ行動を繰り返すというの常同行動というらしい。今の自分は残念ながら常同行動を本能的に理解できる。

たとえ前世がアザラシだったとしても、そのことを他人に相談できないのがつらい。僕だけの秘密だ。映画『スタンド・バイ・ミー』で朝起きた主人公のゴーディーが鹿を見たことを誰にも言わなかったというシーンがあるのだが、秘密とはそういうものだ。自分の中で噛み締めて味わうものなのだ。

サーフィン中に出会った変態

先日、サーフィンをしていたときに不思議な人と出会った。彼はウェットスーツを着て、さらに競泳用のゴーグルをつけていた。そんな姿のサーファーはこれまで見たことがなかった(トライアスロン選手ならありえるけど)。おまけに彼は坊主頭がちょっと伸びた感じの髪型で見た目が大人なのか子どもなのかも判別できなかった。あなたの周りにもひとりはいると思う。見た目が大人なのか子どもなのか判別できないやつが。目が悪いので度入りのゴーグルをしているという可能性はあるけど、それにしても競泳用ゴーグルとサーフィン用のウェットスーツは組み合わせが悪い。ダサいというか、それを飛び越してちょっと怖い。彼の髪型も相まって“変態”の雰囲気が漂う。まじめにサーフィンに取り組んでいる姿が見えるから、もちろん彼が変態でないのはわかっている。ただ、サーフィン好きならそのファッションはしないだろうという先入観が勝ってしまうので、彼は“変態”ということにしておこう。もちろんいい意味で。

鹿を目撃したことを誰にも言わなかったゴーディの気持ちが今になって理解できる。僕もまだ変態サーファーの話は誰にもしていない。自分の前世がアザラシの可能性があるという秘密も、もちろん誰にも話していない。

なんてことを考えていたら渋谷に着いてしまった。今日はNetflixの『ザ・キラー』を見ようと思っていたのに。

こうして僕は明日も知らないヒトたちと一緒に渋谷を目指し、夜になると藤沢に帰るのだ。

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