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祝・アベンジャーズ60周年! 『アベンジャーズ:チルドレンズ・クルセイド』への道

1963年にマーベル・コミックに初登場し、今年で60周年を迎えたヒーローチーム、アベンジャーズ。コミックの歴史において、これまで彼らについて本当にいろんなエピソードが作られてきましたが、関連タイトルを読みたくても、どれから手を付けていいかわからない……という人も多いはず。そこで今回は、2010年のクロスオーバー・イベント『アベンジャーズ:チルドレンズ・クルセイド』の日本語版刊行を記念して、同作へとつながる00年代のアベンジャーズの主要なイベントを紹介していきましょう!
 
文:傭兵ペンギン

『アベンジャーズ:チルドレンズ・クルセイド 』
好評発売中(電子書籍も同時発売)
アラン・ハインバーグ[作]  ジム・チャン他[画]  吉川 悠[訳]

アベンジャーズ解散!

まず00年代のアベンジャーズのビッグイベントを語るうえで欠かせないのが、2004年のクロスオーバー『アベンジャーズ・ディスアセンブルド』(ヴィレッジブックス刊)。アントマンことスコット・ラングが、ゾンビ化したスーパーヒーローのジャック・オブ・ハーツの自爆に巻き込まれて死んだことを皮切りに、アベンジャーズの面々の周りで奇妙な事件が起こり続けます。ヴィジョンやホークアイ、ソーも死亡し、アベンジャーズが解散へと追い込まれていく……というのが『ディスアセンブルド』のストーリー。 

日本語版『アベンジャーズ・ディスアセンブルド』表紙

実はその一連の事件の鍵は、アベンジャーズの長年のメンバーであるスカーレット・ウィッチが握っていました。彼女は、かつて魔法でヴィジョンとの間に二人の息子を作り出し、その子たちを失っていた……という(消されていた)記憶を取り戻したのです。愛する子供を失ったというショックと、それを教えてくれなかったという仲間への怒りで、スカーレット・ウィッチの現実改変能力が暴走したというのが、一連の事件の原因だったのでした。このあたりの設定は、MCUドラマ『ワンダヴィジョン』(2021年)と、その続編にあたる映画『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(2022年)にゆるやかに引用されていますね。
 
ともかく、激しい戦いの末にアベンジャーズはスカーレット・ウィッチを倒し、彼女の父親であるマグニートー(ずいぶん後になって、実は父親ではなかった、とわかるのですが……それはまた別のお話)に引き取られて一旦自体は収拾したかに思えたのですが、それでもスカーレット・ウィッチのパワーは抑えきることができず、発生するのが2005年のクロスオーバー『ハウス・オブ・M』(ヴィレッジブックス刊)。

日本語版『ハウス・オブ・M』表紙

『ハウス・オブ・M』ではスカーレット・ウィッチの現実改変能力が再び暴走して歴史自体が変化し、ミュータントが人間を支配する世界が舞台となります。権力の頂点に君臨するマグニートーの一族と、人間たちのレジスタンスたちによる激しい戦いが描かれるというストーリーで、最終的には世界は元に戻るものの、その結果としてスカーレット・ウィッチが世界中の大半のミュータントたちのパワーを消してしまうという衝撃的な決着となるのでした(しかし、大ごとにはなっているものの主要なX-MEMのメンバーでパワーを失うのは、プロフェッサーXとマグニートーの娘のポラリスだけにとどまるのでした)。

ヤング・アベンジャーズ結成

そしてこのアベンジャーズ解散事件の後に登場するのが「ヤング・アベンジャーズ」。彼らはヴィジョンが死亡する前に用意していたプログラムによって集められたチームで、そのメンバーは呪文の使い手「アスガーディアン」(後のウィッカン)、ハルクのパワーを模しており、スクラル人とクリー人の血を引く「ハルクリング」第二次世界大戦を戦った超人兵士の血を受け継ぐ「パトリオット」に、征服者カーンの若き日の姿「アイアンラッド」、アントマンの娘で巨大化能力を持つ「スタチュア」大金持ちの令嬢にして弓の達人「ホークアイ」(ケイト・ビショップ)、超高速移動能力を持つ「スピード」という構成で活躍していきます。
 
なかでも一連のイベント的に重要なのがウィッカンことビリー・カプランとスピードことトミー・シェパード。実は彼らはスカーレット・ウィッチが魔法で生み出した双子の生まれ変わりなのです。
 
MCUではドラマを中心にこのときのメンバーが結構揃ってきているので、実写化も近いのかも。このあたりのストーリーは、ShoPro Books刊の『ヤング・アベンジャーズ:サイドキックス』『ヤング・アベンジャーズ:ファミリー・マターズ』に収録されていて、こちらの記事でも紹介しています。

日本語版『ヤング・アベンジャーズ:サイドキックス』表紙
日本語版『ヤング・アベンジャーズ:ファミリー・マターズ』表紙

映画・ドラマの元ネタとなるクロスオーバー

そして次に大きなイベントとなったのが、同名映画の元ネタともなった2006年のクロスオーバー『シビル・ウォー』(ヴィレッジブックス刊)。アメリカ政府がスーパーパワーを持つ人物の正体の開示と情報の登録を義務付ける「超人登録法」を導入したことで、それに批准するヒーローと反対するヒーローの間で対立が起こり、ヒーロー同士の内戦(シビル・ウォー)へと発展するというストーリー。

日本語版『シビル・ウォー』表紙

この段階で政府公認のアベンジャーズと非公認のアベンジャーズがいくつか登場するのですが、ヤング・アベンジャーズも活動を続け、メンバーのなかで政府に登録する者と、しない者が出てきてチームに亀裂が入り始めます。
 
それから最近のドラマの元ネタとなった「スクラル人がヒーローに化けて長年地球に潜伏していた」というストーリーが描かれる2008年のクロスオーバー『シークレット・インベージョン』と、その戦いの結果でノーマン・オズボーンがアメリカ大統領になったことで引き起こされる大混乱を描く2009年のクロスオーバー『ダークレイン』にもヤング・アベンジャーズは巻き込まれることとなります。

日本語版『シークレット・インベージョン』表紙
日本語版『ニューアベンジャーズ:ダークレイン』表紙

00年代を締めくくるイベント『チルドレン・クルセイド』

そしていよいよ2010年に始まったクロスオーバーが『チルドレンズ・クルセイド』。数々の戦いをくぐり抜け、ヒーローとしてもチームとしても成長したヤング・アベンジャーズの面々が、ウィッカンとスピードの前世の母で、現在は行方不明となっているスカーレット・ウィッチを捜し出そうとするストーリーとなっています。

ヤング・アベンジャーズの面々と、
アイアンマン&キャップ

物語が進むにつれ、それぞれ別の目的でスカーレット・ウィッチを捜す様々な勢力が登場します。やがて、もしかしてスカーレット・ウィッチが巻き起こした一連の悲劇は彼女に責任がなく、リセットできるものなのではないか……という可能性が提示され、先の読めない展開が続くのが面白いところ。

00年代にライターのマイケル・ベンディスが(今までの設定に若干の矛盾を抱えながら)様々なクロスオーバーで広げていったスカーレット・ウィッチという大風呂敷を、ヤング・アベンジャーズを生み出したライター、アラン・ハインバーグの手腕で畳み、うまく次に繋げているあたりに匠の技を感じますね。

また、ヤング・アベンジャーズの生みの親であるアーティストのジム・チャンのアートも、以前よりさらにダイナミックになっており、そちらも大きな魅力となっています。

ストーリーのみならず、細部まで描き込まれた
美麗なアートワークも見どころ

ちなみに、アラン・ハインバーグのヤング・アベンジャーズはこのストーリーで完結となりますが、2013年にライターのキーロン・ギレンとアーティストのジェイミー・マッケルビーの元で『ヤング・アベンジャーズ』誌は再始動します。

そして戦いの中で恋に落ちたハルクリングとウィッカンのラブストーリーは、ShoPro Booksから2023年10月26日刊行予定の『アベンジャーズ/ファンタスティック・フォー:エンパイヤ』へと続いていきます。

ウィッカン(左)とハルクリング(右)の
ラブストーリーに注目

加えて、ここからスカーレット・ウィッチの贖罪のストーリーも徐々に展開されていきます。そのあたりが気になる人は、2015年の『Scarlet Witch』誌がオススメ。スカーレット・ウィッチの魔女としての側面を魅力的に引き出したストーリーもさることながら、豪華なアーティスト陣が織りなすアートも見事な傑作です。

以上、00年代におけるアベンジャーズの歩みを駆け足で紹介してきましたが、実際に読む際は時系列にこだわりすぎず「まずは気になった作品から手に取ってみて、そこから徐々に深掘りしていく」という楽しみ方ももちろんありです!

広大で奥深いマーベル・ユニバースを一緒に楽しんでいきましょう!

傭兵ペンギン
ライター/翻訳者。映画、アメコミ、ゲーム関連の執筆、インタビューと翻訳を手掛ける。『ゴリアテ・ガールズ』(ComiXology刊)、『マーベル・エンサイクロペディア』などを翻訳。
https://twitter.com/Sir_Motor?ref_src=twsrc%5Egoogle%7Ctwcamp%5Eserp%7Ctwgr%5Eauthor

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