見出し画像

『ミズ・マーベル』配信開始! カマラ・カーンってどんなキャラクター?

ついに配信となったマーベル・ドラマの最新作『ミズ・マーベル』。公開前の段階から映画『キャプテン・マーベル』の続編となる『マーベルズ』(2023年公開予定)への登場も決まっており、見逃せない作品として公開を楽しみにしていた人も多いはず。

ミズ・マーベルことカマラ・カーンは、コミックでのデビューからまだ10年も経っていないかなり新しめなキャラクター。しかし、コミックシリーズの発表当時から様々なメディアで取り上げられており、ゲーム『Marvel's Avengers』の主人公ともなり、知名度も人気も高い人物なのです。

今回はそんなカマラ・カーンのコミックでの設定と、ドラマ版との違いについて簡単に紹介しつつ、オススメのタイトルをいくつか紹介していきましょう!

文:傭兵ペンギン

ドラマとコミックの違い

ミズ・マーベルことカマラ・カーン。彼女はマーベルの物語のおなじみの舞台であるニューヨークのハドソン川を挟んで反対側にある、ニュージャージー州のジャージーシティに住む、パキスタン系アメリカ人の高校生兼スーパーヒーロー

彼女はサノスが地球に襲来したイベント『インフィニティ』(邦訳版はヴィレッジブックスから刊行)での展開で地球に撒き散らされたテリジェン・ミストの効果によりインヒューマンズとしての能力が覚醒し、自分の四肢の大きさ、長さ、形を自在に変えることができるパワーを獲得し、それに伴って回復能力や(後にほとんど使わなくなった)変身能力などを持っています。ファンタスティック・フォーのミスター・ファンタスティックことリード・リチャーズに似たパワーの持ち主と言えばイメージしやすいかも。

インヒューマンズといえば、ブラックボルトなどに代表されるスーパーヒーローのグループの名前として有名ですが、クリー人の遺伝子改造を受けて生まれた種族の名前でもあり、その遺伝子を受け継いだ地球人も非常にたくさんいて、カマラもそのうちの一人。彼らはニューヒューマンズとも呼ばれていたりします。

一方でまだ詳細は不明ではありますが、ドラマ版のカマラは、宇宙のエネルギーを使って物体を作り出す不思議な力を持ったバングル(パキスタンやインドなど南アジア系の国で着用される伝統的な腕輪)を手にしたことでヒーロー活動を始めるという設定になっている様子。

インヒューマンズとテリジェン・ミスト絡みのストーリーは、すでにドラマ『エージェント・オブ・シールド』と『インヒューマンズ』で展開している関係で時系列が合わなくなるため、カットされ別物となるようです。予告編を見ると巨大な拳のような物体を腕輪から発生させており、設定こそ違えど戦闘シーンのイメージは結構コミックに近いものになるのかもしれませんね。

宇宙のエネルギーから物体を作り出すというと、DCコミックスの「グリーンランタン」っぽさも感じますが、マーベルにはクアンタム・バンドと呼ばれる腕輪から出す宇宙のエネルギーで戦うクエイサーというヒーローがおり、もしかするとドラマ版のカマラの腕輪もクアンタム・バンドだったりするのかも……?

ちなみに、クアンタム・バンドを手にクエイサーとしてヒーロー活動をした人物の中には、キャプテン・マーベル(キャロル・ダンバースではなく、クリー人のマー=ベルの方)の子供として人工的に作られたファイラ=ベルもいるので、もしかすると似たような形で映画でも何らかの関連性を作ってくるのかも。

パキスタン系スーパーヒーロー

このような変更がある一方で、カマラ・カーンを語る上で欠かせないパキスタン系移民の家に生まれたイスラム教徒のヒーローであるというところは変わらず描かれ、物語の重要なパートとなる様子。

ミズ・マーベルは「マーベルで初めて単独シリーズが展開されたイスラム教徒のスーパーヒーロー」として大きな話題となりました。イスラム教徒のスーパーヒーロー自体は、マーベルではジェネレーションXのMやDCコミックスのグリーンランタン(サイモン・バズ)などが先行していましたが、それでもまだまだ少ないのは事実。そんなカマラがドラマの主人公となるのは快挙であり、世界に大きな文化的影響を与えることとなるでしょう。

またカマラはスーパーヒーローのファンであるというところもキャラクターとしての大きな注目のポイント。キャプテン・マーベルや、X-MEN、アベンジャーズの大ファンでもあり、ネットにファンフィクションを投稿していたり、ファンサイトの管理人をやっていたりとファン活動にも熱心な人物として描かれています。予告編を見る限り、MCU版の彼女もスーパーヒーローのファンであることは間違いなさそうですが、どこまでのファンとして描かれるのか……⁉

ちなみにミズ・マーベルという名前も自身が憧れるキャプテン・マーベルことキャロル・ダンバースの旧ヒーロー名。当初はキャロルには無断で使っていました。MCUのキャロルは“ミズ・マーベル”と名乗っていないので、カマラがミズ・マーベルを名乗りだす理由がどんなものになるのか、非常に楽しみですね。

ではそんなミズ・マーベル/カマラ・カーンの活躍をコミックで読みはじめるのにオススメなタイトルを紹介しておきましょう。

カマラ最初の冒険

まず最初にオススメしたいのは2013年から始まった最初のシリーズである『Ms. Marvel』。普通の高校生だったカマラが突然パワーを手に入れ、混乱しながらも憧れのキャプテン・マーベルのようにヒーロー活動を始めていく様子を描くストーリーです。

ヒーロー活動と学生生活の両立に、友人との交友や恋愛、そしてイスラム教徒の家族と暮らすことなど多様なテーマを取り入れ、若い読者が共感できる非常に現代的なキャラクターの物語となっているのが面白いポイント。新しい世代のスパイダーマンと言ってもいいでしょう。

ドラマはカマラ・カーンの共同作者である編集者のサナ・アマナットとライターのG・ウィロー・ウィルソンが製作に関わっているので、数あるコミックの中でもおそらくこのシリーズの影響が最も色濃く出るのではないでしょうか。

また邦訳版が(一旦の)シリーズ完結まで邦訳されているのも嬉しいところ。第1巻『Ms.マーベル:もうフツーじゃないの』、第2巻『Ms.マーベル:スマホ世代とか言われても』、第3巻『Ms.マーベル:もしかしてこれって…恋?』、第4巻『Ms.マーベル:キャプテンといっしょなら』という邦題でヴィレッジブックスから刊行中。

ちなみに邦訳版の第4巻ではついにキャプテン・マーベルと出会うエピソードだけでなく、『AMAZING SPIDER‐MAN』誌でスパイダーマンと共演したエピソードも収録。かつては若手代表だったけど今やベテランなピーター・パーカーが最若手のカマラと出会うと一体どうなるのかは……読んでのお楽しみ!

このシリーズは2015年で(マーベル・ユニバース自体が一度終わったので)終了した後に、同年に再開。その#12で、カマラはパキスタンのカラチにある母親の実家へと旅行し、そこで母親の親戚の友達の息子であるカリームと出会うのですが、どうやらドラマには彼も登場する様子。

カリームはその後の展開で交換留学生としてアメリカにもやってくるのですが、ドラマではカマラが外国へいくかどうかは今のところ不明。ドラマのネタバレになりそうなのでこれ以上は書きませんが、興味深いキャラクターなので、気になる人は先にチェックしておくのもいいかもしれませんね(単行本では『Ms. Marvel: Super Famous』にカリームのパキスタンでの初登場エピソードが、『Ms. Marvel: Game Over』と『Ms. Marvel: Something New』にアメリカでのエピソードが収録されています)。

アベンジャーズからチャンピオンズへ

次にオススメしたいのは2016年からの『Champions』誌。カマラが、スパイダーマン(マイルス・モラレス)、ノヴァ(サム・アレクサンダー)、サイクロップス(過去からやってきた若いバージョン)、ハルク(若き天才アマデウス・チョが変身したバージョン)、ヴィヴ(ビジョンの娘)といった若手ヒーローたちと新チーム「チャンピオンズ」を結成するというシリーズ。

それまでのストーリーでカマラは2015年の『All-New All-Different Avengers』誌でアベンジャーズの一員として活動を開始し、そして2016年のイベント『シビル・ウォーII』(邦訳版ヴィレッジブックスから刊行)に並行するストーリーの中でヒーローの内戦に巻き込まれ憧れのキャロル・ダンバースと対立してしまい、大人のやり方に嫌気が差してアベンジャーズを脱退。そこで生まれたのがこの「チャンピオンズ」なのです。

日本語版『チャンピオンズ:チェンジ・ザ・ワールド 』表紙

DCコミックスの『キングダム・カム』や「フラッシュ」のスピードフォースの生みの親として知られるライターのマーク・ウェイドが、経験不足な若手ヒーローたちの危なっかしい活躍を非常に面白く描いた人気のシリーズ。『Amazing Spider-Man』誌や『ストレンジ・アカデミー』などでもおなじみのハンベルト・ラモスの表情豊かなキャラクターのアートも大きな魅力の1つとなっています。

この頃になるとカマラはヒーローとしての経験を積んでおり、チャンピオンズのリーダーも務め、いままでとは少し違ったキャラクターの側面や(一定の)成長ぶりも見れるのが楽しいところなので、先に紹介した個人シリーズと合わせて読んで欲しい作品です。またこのシリーズではカマラ以外のヒーローたちもいい味をだしているので、ぜひそちらにも注目してほしいですね。MCUでも、いつかカマラがチーム入りするところが見られたりして……?

邦訳版はShoProBooksから第1巻『チャンピオンズ:チェンジ・ザ・ワールド』、第2巻『チャンピオンズ:フリーランサー・ライフスタイル』、そして第3巻に相当し彼らの古巣のアベンジャーズと共闘する『アベンジャーズ&チャンピオンズ:ワールド・コライド』が発売中。

ちなみに、カマラはドラマ『エージェント・オブ・シールド』でもおなじみのクエイクや巨大な恐竜と共にヒーロー活動をする天才少女ムーンガールらとも2017年の『Secret Warriors』誌でチームを組んでいました。残念ながら12号という比較的短命に終わってしまったシリーズですが、『チャンピオンズ』とは一味違う活躍が見れるので、余裕があったらチェックすることをオススメしたいところです……!

ちょっと変わり種な最新シリーズ

現在の最新シリーズから読み始めたいという人には2021年の『Ms. Marvel: Beyond the Limit』もオススメ。大学の研究所で起こった強盗を止めた時に起こった爆発の影響で、なぜか世界がボリウッド映画になって、皆が歌って踊りだし、さらに自分のドッペルゲンガーまで現れる……というかなりインパクトのあるスタートを切る5話完結のミニ・シリーズ。

扱うストーリーがやや変化球ではありますが、今までの振り返りなども含んだ短くまとまった展開で、2017年の『Runaways』を手掛けたアンドレス・ジェノレットのアートも可愛らしく、要チェックです。

この記事の執筆時点では『ミズ・マーベル』は配信前なので、まったくどんなドラマになるかはわかりませんが、カマラの活躍をコミックでもチェックして、その再現と違いを合わせて楽しんでみてください!

傭兵ペンギン
ライター/翻訳者。映画、アメコミ、ゲーム関連の執筆、インタビューと翻訳を手掛ける。『ゴリアテ・ガールズ』(ComiXology刊)、『マーベル・エンサイクロペディア』などを翻訳。
https://twitter.com/Sir_Motor?ref_src=twsrc%5Egoogle%7Ctwcamp%5Eserp%7Ctwgr%5Eauthor