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『ソー:ラブ&サンダー』公開記念! ジェーン・フォスターってどんなキャラクター?

ついに劇場公開となった、ソーの映画シリーズ第4弾『ソー:ラブ&サンダー』。ソーの元恋人であるジェーン・フォスターがソーとなることで話題の作品ですが、今回はそんな映画の元ネタとなったジェーン・フォスターのコミックでの歴史を簡単に紹介いたします。

※映画のネタバレは控えめではありますが、映画はコミックの引用も行われている作品なので、気になる方はまず映画を観てから本記事をお読みください!

文:傭兵ペンギン

ソーになる前のジェーン・フォスター

ジェーン・フォスターがコミックで初登場を果たすのは、1962年の『Journey into Mystery』#84。ちなみにまだ設定が固まっていなかったのか、当初はフォスターではなくネルソンという姓で登場していました。

『Journey into Mystery』#84

『Journey into Mystery』#84はソーがデビューした次の号で、それ以来ジェーンはソーの変身前の姿であるドナルド・ブレイク医師と共に働く看護師であり、ドナルドとソーの両方に惹かれ不思議な三角関係を次第に築いていくキャラクターとして描かれていきます。

それからしばらくしてソーは自分がドナルド・ブレイクであることを明かし三角関係は終わるものの、オーディンはソーがただの人間と恋に落ちて正体を明かしたことに怒り、彼らの関係を邪魔するのでした。ジェーンはソーがオーディンの命令ですぐに遠くに行ってしまうので、ギリシャ神話系ヒーローのハーキュリーズ(ヘラクレス)と食事に行き、それを見て怒ったソーがハーキュリーズに戦いを挑んでしまうなんてこともありました。

ともかくそんなオーディンの反対や妨害にもめげずソーとジェーンは結婚しようとするのですが、ジェーンはオーディンから課せられた試練に失敗。アスガルド人となることはできず結婚は破談となったばかりか、試練の過程で得たアスガルド人としてのパワーとソーと過ごした思い出も奪われて地球に送りかえされてしまいます(いくらなんでもひどいのでは!?)。

それからジェーンはドナルド・ブレイクにそっくりなキース・キンケイドという医師と恋に落ち、結婚してジミーという子供をもうけます。また、看護師から医師となり、アイアンマン/トニー・スタークの診察をするなんていうエピソードもありました。

しかし、それからキンケイドとは離婚し(さらに後に彼は息子と共に事故死したことが明らかとなり)、さらにジェーンは乳がんと診断されてしまうのでした。それでもジェーンは過去の経験からアスガルドでの魔法での治癒を拒み、医師としての誇りを持って地球の薬を使った治療を受け続けます。

ちなみに、ジェーンのガンが明らかとなる2013年の『Thor: God of Thunder 』#12は、同誌で展開されていたゴル(映画ではゴア)との壮絶な戦いが終わり、次の冒険への幕間的な位置付けで、ソーが地球で人と様々な形で交流していく姿を描くエピソード。

『Thor: God of Thunder 』#12

ライターのジェイソン・アーロンが描くソーと、彼がシリーズを通して描かんとする信仰のテーマが凝縮されていて、ジェーンのソーが気になるという人はまず最初にチェックしてみることをオススメします。『Thor: God of Thunder』はメインのヴィランがゴアであるだけでなく、映画そのままのシーンも登場しますし、なにより本当に面白いので、余裕があったらまとめて読んでしまうのがオススメです。

謎の女性ソーとして活躍

それからソーは2014年のイベント「オリジナル・シン」(邦訳版はヴィレッジブックスから刊行)の中でニック・フューリーからとある秘密を耳打ちされて、月でムジョルニアを手から落とし、以降持ち上げることができなくなってしまうのでした。

しかし、その直後の2014年から始まった『Thor』の新シリーズの#1で、謎の女性がムジョルニアを持ち上げソーへと変身。そしてこのシリーズでは新たなソーの活躍と、その正体をハンマーが持てなくなったオーディンソンが探っていく様子が描かれていきました。

今となってはこの新ソーがジェーンなのは明らかですが、当時の段階では全くわからないようになっていて、オーディンソンと一緒になって予想をしていくことになるのが面白いところ。筆者は当時、新ソーの正体について「イメージ・コミックスの『スポーン』から移籍したばかりで、ソーの妹であることが明らかになったアンジェラあたりかな……」なんて予想をしたのを覚えています。

先述のように魔法的な治療を拒んだジェーンがソーであると明らかになった時にはビックリしましたが、今までソーの活躍を見てきたジェーンが「世界にはソーが必要」だと考え、ソーに変身する覚悟を決めるという理由付けは非常にカッコいいものでした。

このあたりのエピソードは『ソー:ゴッデス・オブ・サンダー』(ヴィレッジブックス刊)に収録されています。ちなみに、読むときは新ソーの正体がジェーンであるということは一旦忘れて、オーディンソンと一緒にその正体のヒントを探しながら、まだヒーローを始めたばかりの新ソーの活躍を見守っていくと一層楽しめるはず。

それからしばらく新ソーは闘病と並行してその正体を世間や他のヒーローたちに隠しながら活動を続け、様々な戦いを経て、新たなキャプテン・アメリカとなったサム・ウィルソン率いる新生アベンジャーズのメンバーとしても活動し、マーベルの世界での主要なイベントに絡んでいくキャラクターとなっていきました。

体を蝕むガンとの闘い

しかし、2017年の『The Mighty Thor』#700から始まったストーリーアーク「デス・オブ・ザ・マイティー・ソー(Death of The Mighty Thor)」の中で、ジェーンのガン治療のために用いられた薬品がソーに変身する時の効果で消えており、ガンが以前よりも進行していることが判明。

あと一回でも変身すれば死んでしまうという深刻な状態であり、治療に専念するように言われたものの、時を同じくして神殺しの魔獣マンゴッグがアスガルディア(アスガルドの崩壊後、トニー・スタークのテクノロジーによって再建されたアスガルド人の街)を襲撃。ジェーンはソーへとその身を犠牲にする覚悟で変身をし、最後の戦いを繰り広げます。ジェーンのソーとしてのストーリーを締めくくる凄まじく熱い展開なので、最後どうなるかはぜひ読んでいただきたいところ。

ちなみにジェーン・フォスターのソーとしての活躍をまとめたオムニバス『Jane Foster: The Saga of the Mighty Thor』やジェイソン・アーロン作の『Thor』誌をまとめたオムニバス『Thor by Jason Aaron Omnibus』には、この「デス・オブ・ザ・マイティー・ソー」の展開が収録されていないのでお気をつけください。一冊にまとまってなくていいので、全部を読みたいという人は『Thor by Jason Aaron: The Complete Collection』の方を集めるといいでしょう(デス・オブ・ザ・マイティー・ソーはVol. 4に収録)

ジェーンは新たなヴァルキリーに

その後、ジェーンはソーではなくなるのですが、ガンは苦労の甲斐あって完治。しかし、マレキスが10大世界すべてに侵攻して始まった2019年の大型イベント『War of Realms』の戦いの中で全滅したヴァルキュリオール(ヴァルキリーの軍団)に代わり、ジェーンは新たなヴァルキリーとなり、ヒーロー活動を再開することとなりました

主人公を務める『Valkyrie: Jane Foster』ではドクター・ストレンジやカーディアックといった医療系スーパーヒーローたちと共に共闘した一方、『King in Black: Return of the Valkyries』では映画版のヴァルキリーに強い影響を受けたヴァルキリーであるルーナとで共闘しています。また、(ジェイソン・アーロンがライターを務める)『Avengers』誌にも登場するなど、ジェーンはソーではなくなっても、ヒーローとしての活躍を続けています。

『Valkyrie: Jane Foster』#1

映画のジェーン・フォスターがどれだけコミックと同じ道を歩んでいくかはわかりませんが、コミックでは近年非常に重要かつ面白いキャラクターとして描かれてきているので、映画とコミック両面での活躍に期待したいところ。

ちなみに映画『ラブ&サンダー』は今までの映画以上に直接的な引用が多い作品であり、エンドクレジットを見る限りコンサルタントとしてライターのジェイソン・アーロンも参加していたようです。コミックと映画を見比べてみるとこれが元ネタだったのかという発見がたくさんあるはずなので、ぜひコミックでのジェーンの活躍もこの機会に読んでみてくださいね!

傭兵ペンギン
ライター/翻訳者。映画、アメコミ、ゲーム関連の執筆、インタビューと翻訳を手掛ける。『ゴリアテ・ガールズ』(ComiXology刊)、『マーベル・エンサイクロペディア』などを翻訳。
@Sir_Motor