路地

女が倒れている
意識がないので、男は心肺蘇生を試みる
無事、女は生き返った
しかし女は感謝の言葉ではなく、怒声を上げた
「私の大切なファーストキスをどうしてくれるのよ
これはレイプだわ」
男も言い返す
「僕だってファーストキスだったんだぞ
これは新種の美人局だ、違うか」
女も血相を変えて言い返す
「誰が美人局ですって
難癖をつけてお金を取るつもりね
あなたを脅迫で訴えてやるわ」
そこへ車が突っ込んだ
ドライバーが焦って出てきた
「まずいことになった
しかし外傷はないのだから、このまま放っておいても大丈夫だろう」
ドライバーは車に乗り込み、走り去った
間もなく救急車が到着した
救急隊員は叫ぶ
「なんてことだ、通報を受けた時よりも患者が増えている
これでは私が引いたと思われてしまうではないか
しかし私も救急隊員の端くれ、命を粗末にすることはできない」
するとそこへ車が突っ込んだ
救急隊員が跳ね飛ぶ
車からは若い女が出てきた
「なんてラッキー
救急車があるじゃない
これで逃走もはかどるわ
それにしても、この死体はどうすればいいのかしら
まあ、とりあえず自殺っぽくしておきましょう
ちゃんと自殺で処理してくれるといいけど」
そういうと女は救急車に乗り込み、走り去った
しばらくして警察が来た
この車、例の女の車だぞ
しかしなんだこの死体は
何故救急隊員が死んでいる
しかも救急車がない
おそらく救急隊員がこの二人をひいて、それで救急隊員はそこのビルから飛び降り自殺
女は無人の救急車に乗り換え逃走したに違いない」
現場の写真を撮っていると、パトカーが突然走り出した
呆然とする警察をしり目に男は言う
「まったく、こんなにも車を盗みやすい路地がほかにあるだろうか
周りからは見えにくいし...」
男の言葉は途中で切れた
男は事故にあったのだ
トラックの運転手が下りてきて呟く
「なんてこった
帰り道でまた事故を起こしてしまった
しかもパトカーじゃないか
俺も終わりだ...」

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