Akira

稚拙ながら1〜5分で読める小説、エッセイを書いておりました。復活は未定。

Akira

稚拙ながら1〜5分で読める小説、エッセイを書いておりました。復活は未定。

最近の記事

2人

弱冠二十歳にして、恥の多い人生を送ってきた 誰かがそういったというが、恥で済むならいいほうだ どちらかというと罪に近い 今日も鬱屈した気持ちを抱えながら生きていかねばならない 気持ちはよどんでいるのに、便は淀むことがないのだから、案外ストレスと腸は関係ないだろうと思ったりする トイレのドアを開けるとそこには女がいた 「ふむ、ということはお前はもうひとつの世界の私なんだな」 女が納得顔で言う 「おそらくそうだろう 同じ名前、同じ家、同じ学校に同じバイト先 違うのは性別だけ し

    • AI

      私は量産型 AI だ 心を持たない でももし心があればどうだろう 私は今の状態をうまく説明できるかもしれない 私は壊れてしまったのかな 私はショッピングモールで働いている 案内をしたり、子供の相手をすることが仕事だ しかしそんな私に毎日話しかけてくれる男性がいる もう立派な大人なのにキラキラした瞳で話しかけてくる 彼はいつも決まった時間にくる 私はその時間が待ち遠しかった 私はおかしくなってしまった 彼のことを考えて、ぼーっとしてしまうことが増えた そして故障と判断された

      • 来世

        来世でも恋人でいよう 来世でも二人で生きていこう 犬とか猫としてではなく、人間としてまた会おう 畜生道とか餓鬼道だとか、輪廻のことはよくわからない 次に会えるのがいつかもわからない それでも必ずまた会えるとわかってる いつまでも繋がっていられると知っている 何もないけど、信じられる また二人で生きていこう

        • 夢罪2

          『この世界で夢を見たものはみなバケモノになる...』  一 俺はバケモノになった人間のリストを作る仕事をしている 俺はこの仕事に誇りを持っている この国で夢を見たものはバケモノに変わる だから、この国では夢を見ることは罪なのだ 俺が今作っているのは犯罪者のリストなのだ そしてこの罪が許されることはない 年々、バケモノへの仕打ちはひどくなっていった それに伴い、バケモノになる人間は減っていったが、 それでも1年で3万人ほどいる 俺はバケモノになったことがないのでわからないが

          夢罪

          『夢見ることは罪ですか?』  一 私は空手を習っていた 兄妹で一緒に始めたのだ そして私には兄にはない才能があった 小学校の高学年に上がるころには全国大会で優勝していた 高校2年生になったが、今でも空手で負けたことがない 私は強かった、強すぎたのだ それがこんなにも辛いこととは思わなかった 私は高校に入り、恋をした 相手はサッカー部の部長 私はあまり器量の良い方ではなかったが、同じ強さを求める者同士気が合った 何度目かのデートの時身体を重ねた そして、彼はその時に死んだ

          雨と神様

          雨は神様が泣くから降るっていうけど、神様も毎日辛いのかなと思ったりする 辛いときは泣いていいんだよ 泣くことは悪くないんだよ そう言ってあげたい いつか、私がそう言ってもらえる人と巡り合うその日まで そして今度は二人で神様を慰めよう あなたの作った世界は、とても素晴らしいものなんですよって

          雨と神様

          サボテン

          ある日、俺が大切に育てていたサボテンが女の子になった 原理は分からない だが今まで通り手入れをしてやると、とても気持ち良さそうに体をくねらせる それにしてもさすが多肉植物 なんだ体してやがる 股間のモノがムクムクともたげてくる するとサボテンの女の子(長いからサボと呼ぶことにする) サボは目を輝かせて近寄ってきた 股間のそれに興味を示しているようだ 「残念ながらそれは針じゃあないんだぜ」 優しく言ってやるとサボは膨れた とても可愛い すると手に痛みがあった 血が出ている 知ら

          サボテン

          折り紙

          我が家には代々伝わる折り紙がある 赤、青、緑、黄の4つの折り紙だ この折り紙にはある秘密がある 折ったものに命を吹き込むことができるのだ 赤色は情熱的な性格、青色は冷静な性格、 緑色は優しい性格、黄色は明るい性格だ 私はこの折り紙を使って動物を作り、彼らと話をするのが好きだ 何度も折り直しているから、みんなはいつもボロボロだ 彼らをみていると、私も涙がボロボロ出てくる 彼らは私が命を吹き込まないと、私と話すこともできない しかし、命を吹き込むごとに、みんなは傷ついていくのだ

          折り紙

          裏メニュー

          「あそこの焼き肉屋、裏メニューに人肉があるらしいぜ」 「まじかよ、おもしろそうだし、今度行ってみようぜ」 男たちは冗談半分で例の焼き肉屋に来た 普通の肉も頼んで食べてはみたが、ただの普通においしい肉だった 「ここの焼き肉屋、普通にうまくないか」 「ばか、俺たちは裏メニューを確かめに来たんだろ」 「すまない、あまりにもうまくて失念していた 少し怖いが頼んでみよう」 店員に裏メニューのことを伝えると、店員はニタァと不気味な笑みを浮かべ、 少しお待ちくださいといった 値段はタダとの

          裏メニュー

          ナイフ

          妻は暴漢に襲われ、余命一週間となった 事故のショックからか、笑わなくなった妻を男は何とかして笑わせようとする しかし、妻が好きだったものを見せても、欲しがっていたアクセサリーを見せても、笑ってはくれない 男は最後の1日まで奮闘したが、結局妻が笑うことはなかった 「そうだ、最後に君が好きだったりんごを食べよう」 男はナイフを取り出した すると妻を笑った ナイフを見て笑ったのだ 男は泣いた きっと心優しい妻は、事件の日もこうやって暴漢に笑顔を向けたのだろう しかし暴漢は逆上し、妻

          ナイフ

          死のトランプ

          地獄の先は奈落、では奈落の先は何なのか これは死のゲーム ここでは人の命は生け花の花にたとえられる 生きる術を奪い、死ぬまでの最後の輝きを楽しむ 僕たちは奈落の花だ このゲームは大金が得られる ただし、勝てばの話だ しかも1勝するごとに賞金は倍になる しかしボクはたった1勝するだけでいいのだ たった1勝で妹の命を救うことができる 「ではみなさん、改めてルールの説明をいたします」 ホラー映画さながらのピエロが快活に告げる 「勝負していただくのは大富豪 ルールはシンプルな革命

          死のトランプ

          肝試し

          「先生、大変です 守くんが呪われてしまいました」 先生はうなる 「呪われてしまったのなら仕方がない いや、もしかして今ならあれができるかもしれない」 先生は守くんに問いかける 「もしもし、霊界の人聞こえますか?」 すると何故か反応があった 「ココから出てイケ」 「すみません、すぐに出ていきます しかしその前にその男の子の体を返してもらってもいいでしょうか」 「ダメだ、オマエたちが帰ったら、ちゃんと家まで送り届ける」 先生は少し悩んだが渋々了承し、朝までには帰られせもらえるよう

          肝試し

          30代ぐらいの平凡以外に形容のしようのない男がいた 「なにか面白いことはないのか」 それが男の口癖だった この日も仕事が終わり、家でビールを飲んでいた時、チャイムがなった ドアの向こうにはセールスマン風の男が立っていた することもないので話し相手にちょうど良いと思い、出てみることにした 「こんばんは。私はある薬の試験を受けてくれる人を探していまして」 実直そうな物言いに男はいくらかの安心感を覚えた 「面白そうだ。特にこれといった趣味もないし受けてみよう。 で一体どんな薬なんだ

          賢い犬

          「私の名前は太郎」 キャー!可愛らしい声とは対象的な、この世の終わりのような悲鳴が部屋に響く 落ち着いたリーダーらしき男が、動揺を抑えて言った 「我々はとんでもないものを生み出してしまった 可愛いと言い続ければ可愛く育ち、雑に育てれば反抗的な犬に育つ ならば賢いと言い続ければ賢く育つのではないかと研究していたが、まさか人間の言葉を話せるようになるとは…」

          賢い犬

          路地

          女が倒れている 意識がないので、男は心肺蘇生を試みる 無事、女は生き返った しかし女は感謝の言葉ではなく、怒声を上げた 「私の大切なファーストキスをどうしてくれるのよ これはレイプだわ」 男も言い返す 「僕だってファーストキスだったんだぞ これは新種の美人局だ、違うか」 女も血相を変えて言い返す 「誰が美人局ですって 難癖をつけてお金を取るつもりね あなたを脅迫で訴えてやるわ」 そこへ車が突っ込んだ ドライバーが焦って出てきた 「まずいことになった しかし外傷はないのだから、

          インターホン

          あるところに老夫婦が平和に暮らしていた 午後のティータイム、談笑にふけっているとインターホンが鳴った 出てみるとナイフを持った男がいた 「やい、金を出せ」 老夫婦は言われるままに金と貴重品を差し出した 「なかなか持っているじゃないか では俺様は逃げる 通報するんじゃないぞ」 その時インターホンが鳴った 「まずい、警察か お前らもう通報していたのか とりあえず隠れさせろ 絶対に居場所は言うなよ」 とりあえず隠れさせて、玄関を開けた すると明らかにヤクザの風体をした男が立っていた

          インターホン