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2021年の音楽 個人的ベスト20

ここ何年か、Otohatobaのいろいろな人が年間ベストを流すイベントに呼んでもらっていて、「好きだった新譜を選び、便宜上ランキングをつける」という行為を(無責任に)楽しませてもらっています。
先日そのイベントでご紹介してきた20曲を、ゆるっとnoteにも載せておきます。ご笑覧ください。(プレイリストは末尾にあります。)

基本はアルバム単位のつもりで選んでいますが、シングルも混ざっていたり、「これは主にこの曲がピンポイントで良い!」みたいなものもあったりします。
今年は結果的にわりとベタなセレクトになりました。


20位
V.A. 『McCartney III Imagined』
「The Kiss of Venus」(Paul McCartney & Dominic Fike)

ポール・マッカートニーが昨年リリースしたアルバム『III』の収録曲を、いろいろな人がカバー/リミックスしたコンピレーション。ベック、クルアンビン、デーモン・アルバーン、フィービー・ブリジャーズ等が参加(ポール自身が人選してオファーしたそう)。この曲が一番好きでした。


19位
Mina Okabe 『Better Days』
「Miss Those Days」

テラスハウスっぽさオブ・ザ・イヤー。Mina Okabeさんはデンマークと日本のミックスだそう。どんどん人気出そうですね。今年はこういうシンプルなものが妙に染みる年でした。


18位
Casandra Jenkins 『An Overview on Phenomenal Nature』
「Hard Drive」

話し声のコラージュや朗読、サックスのオブリガートが絡み合うアンビエント・フォーク。バンドメイトの死をきっかけに作られたアルバムだそうで、重たさと、しかしそれでも光に向かっていくエネルギーみたいなものとが、切実に迫ります。


17位
Nathaniel Rateliff & The Night Sweats 『The Future』
「The Future」

デラニー&ボニーとかダグ・サーム、あるいはブルース・ブラザーズの雰囲気をたたえた(彼らを有名にした2015年の曲「Son of a Bitch」のPVはモロにブルース・ブラザーズを意識したもの)、現代とは思えないバンドの3rdアルバム。1曲目からこのど真ん中ストレートなカントリー・ロック、俺でもわかる単純な歌詞、サビのシャウトに、素直にぐっときてしまいました。


16位
る鹿 『空洞です』(single)
「空洞です」(Chinese ver.)

中国人のモデルさんによる、ゆらゆら帝国の有名曲カバー。石井マサユキ、大野由美子、田村玄一、楠均(すばらしいメンバー!)の演奏も素晴らしいです。


15位
millennium parade 『THE MILLENNIUM PARADE』
「Bon Dance」

正直なところ、アルバム全体も、中村佳穂との「U」も、あまりピンとこなかったんですが、とにかくこの曲は狂おしいくらい好きです。
(余談ですが、新型コロナウイルス感染症が世界を覆う以前、「東京オリンピックの開会式は、ジャニーズもAKBもエグザイルもゆるキャラもゲームキャラも漫画キャラも初音ミクもゴジラも歌舞伎もYOSAKOIもYOSHIKIもYAZAWAも坂本龍一も、ぜんぶまとめてみんなで盆踊りすればいいんじゃないか」とずっと思っていてそう主張していたので、そのコンセプトと実際のオリンピックにまつわる顛末とこの曲とが、なんだか響きあったような感触もありました。)


14位
和ぬか 「寄り酔い」(single)

TikTokで流行ったらしい、正体不明の20代学生(?)の楽曲。大瀧詠一のこと、あるいはアラゲホンジやK.P.M.のことを、おそらく一切知らないであろう場所から、音頭の再解釈が自然発生(?)したのはとても面白いことだと思うし、拙さこそあれ、単純にこの曲、私は聴くとアガります。


13位
Silk Sonic 『An Evening With Silk Sonic』
「Leave The Door Open」

これはもう完璧でしょう。アルバムではアゲアゲのファンクも来るかなと思ったら(1曲ありましたけど)、ブーツィー・コリンズ参加曲を含めほぼ全曲ミディアムだったのは意外でしたね。


12位
モノンクル 「抱いてHold On Me」(single)

このアプローチは考えつかなった! しかも出オチじゃなくて、6分もあるのに展開が巧みでずっと楽しい。あと、角田くんがこういうふうにブリブリ弾きまくっているのは、わりとめずらしい気がします(たのしそう)。
今年は折坂悠太と中村佳穂の「ザ☆ピ〜ス!」もありましたけど、この時期のつんく♂の詞は本当に筆が乗りまくってますね。


11位
V.A. 『What A Wonderful World With Original Love?』
「It's A Wonderful World」(TENDRE)

オリジナル・ラブのトリビュート盤。中でもこの曲を特に推したいです。ひねりのあるカバーではないんですが、ソウル/ファンク/R&Bの歴史の中で、1994年の瞬間にはアシッド・ジャズ的だった楽曲が、2021年の最適解としてロバート・グラスパー以降の現代ジャズ/R&B的な音にストレートにアップデートされた、とでも言いましょうか。
Ovall × Original Loveの「接吻」も、とてもとても良かったです。


10位
Men I Trust 『Untourable Album』
「Oh Dove」

遅耳ながらMen I Trustのことは今年知って、旧譜もよく聴いていました。絶妙なちょうどよさ。聴く側の気分を選ばない音楽。


9位
Ben Goldberg 『Everything Happens To Be.』
「Fred Hampton」

トラッド寄りなジャズとアバンギャルドを行き来する塩梅が気持ちいいです。ベン・ゴールドバーグは、ネルス・クライン作品にも参加していたりする、西海岸のクラリネット奏者。私の大好きなギタリスト/コンポーザー、メアリー・ハルヴォーソンが(主にちらかし役として)参加してます。


8位
STUTS & 松たか子 with 3exes 『Presence』
「Presence I (feat. KID FRESINO)」

『大豆田とわ子と三人の元夫』は今まで見た連ドラで一番面白かったし、エンディングも毎話わくわくして聴きました。ってのを抜きにしたとしても、STUTSの現時点での最高傑作なんじゃないでしょうか。


7位
KID FRESINO 『20, Stop It.』
「No Sun」

日本のヒップホップにそこまで明るくないので、私が知らないだけかもしれませんけど、まず音がこんなにもかっこいい生演奏で(石若駿 ds、三浦淳悟 b、小林うてな steel pan、斎藤拓郎 g、佐藤優介 key)、しかもそれをただ下敷きにするのでなく、牽引して相互に作用するラッパー、およびそんな作品、ほかにあります……?
NHK「シブヤノオト」の生放送ライブは、内容のすばらしさに加えて、これがNHKで生で流れているという事実に「世の中捨てたもんじゃない」くらいのことを思いましたよ。


6位
鈴木真海子 『ms』
「untitled」

chelmico 鈴木真海子のソロアルバム。全体を覆う、けだるさ、怠惰、モラトリアムの焦燥と恍惚。今でも好きだけど、自分が25、6歳のときにこれを聴いていたらもっともっとどハマりしていただろうと思います。
Jacob Mannがトラックを手掛けた「judenchu」、アプレミディ〜オルガンバーの揶揄(?)みたいな「空耳」も聴きどころです。


5位
Altin Gün 『Yol』
「Maçka Yolları」

たまたま上位に「欧米で活動する非欧米出身者」を多く選んでいました。
こちらは、トルコ民謡をファンキーなポップスに翻案して演奏する、トルコ人とオランダ人の混合バンド。彼らが実際どんなスタンスなのかは存じませんが、音や映像からは、オリエンタリズムを逆手に取ってややファニーに見せ/聴かせつつ、西洋音楽と自身のルーツの折り合いにうまい落とし所を探り当てているような印象を受けます。かっこいいし愉快。

ところで、空耳感のすごさもちょっと見過ごせないレベルだったので、我慢できずに字幕をつけたりもしました。トルコ語と日本語って音が似てるのかな。


4位
Nala Sinephro 『Space 1.8』
「Space 1」

アンビエントとジャズの(サム・ゲンデル的なそれとはまた違ったやり方での)よい交差点。在イギリス カリブ系ベルギー人のハープ奏者、なんだそうです。曲によってアプローチがさまざまで、どれも良いんですけど、僕はこれのようにジャズ成分が薄いものの方に、特に魅力を感じました。


3位
Enji 『Ursgal』
「Gandii Mod」

甲斐正樹くんのツイッターで知った、ドイツ在住のモンゴル人SSW。声も曲もとてもチャーミングです。バックの演奏は完全にジャズ・ミュージシャンの仕業で、それはそれで悪くないんですけど、彼女の歌は、ジャズ要素のない音の上でも聴いてみたいですね。青葉市子とか湯川潮音とかを好きな人にも刺さると思います。Senti Toy 『How Many Stories Do You Read On My Face』をちょっと思い出したりもしました。


2位
Arooj Aftab 『Vulture Prince』
「Saans Lo」

※上の動画はアルバムとは異なる録音です。(アルバムは現在、サブスク、YouTubeから消えています。)

今年一番聴きました。パキスタン出身、ニューヨーク在住のシンガー。今作ではじめて知って、旧譜にも当たったんですが、正直いまひとつでした。いろいろなタイミングが重なったり、いろいろなことが結実した今作だったんだと思います。
Shahzad Ismaily、Vijay Iyerと組んでいるトリオもリリースが控えているらしく、そちらもめちゃ楽しみです。


1位
Pino Palladino & Blake Mills 『Notes With Attachments』
「Chris Dave」

ご存知 D'Angelo『Voodoo』のサウンドに大きく貢献したベーシスト ピノ・パラディーノ。フィオナ・アップルからジョン・レジェンドまでを手がけるプロデューサーにして、クラプトンから称賛されるギタリストでもありながら、個人名義での作風は実験的なブレイク・ミルズ。その二人に、この数年を代表するトリックスター(?) サム・ゲンデルらも加わって作られた、ヘンテコで、チルでもありアゲでもあり、気さくでも深淵でもある、未知の音楽。


以上、私的2021年の20枚でした。

SpotifyとAppleミュージックのプレイリストを置いておきます。
(※2位に選んだArooj Aftab『Vulture Prince』は、現在各種サブスクやYouTubeから消えているため、含めることができていません。)

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