日本のSTEM教育、特に女子の理数系教育促進について(放送用メモ)

東京FMのタイムラインで、日本のSTEM教育についてお話したときのメモ書きです。チキンなので生放送で話すときは、いつもこんな感じのメモ書きを手元に置いとくのですが、折角なので公開します。放送は1月10日までラジコで聞けるそうです→リンク

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STEM教育と賃金の話

• 米国の労働市場の傾向が日本にも当てはまってくるようであれば…
• 高卒大卒の賃金格差以上に、人文系とSTEM系の賃金格差は大きい
• とは言え、Social skillsのrate of returnは数学並みにデカくなりつつあるので、STEM+Social skillsが望ましいのかもしれない→関連論文
• STEM内でダブルメジャーをするのと、STEM+Liberal Artsでダブルメジャーをするのと、賃金に与える影響はほぼ同じサイズで、STEMのシングルメジャーよりも賃金が上がる→関連論文
• 専攻の違いが、職業の違い(例えば、STEMを学んだ人が高い賃金を払うGoogleに行き、福祉系を学んだ人が賃金の安いソーシャルセクターに行く)につながるが、それをコントロールした後でも上の話は通じた→STEM系で学ぶ内容そのものが、その人の生産性を向上させている


日本のSTEM教育の現状

• 基礎教育段階→国際学力調査のPISAやTIMSSを見ると、世界でもトップクラス。世界を見ると、男子よりも女子の方が科学や数学の成績の良い所もあるし、成績に差がない所もある。しかし、日本は男女間の学力差が大きいのが課題
• 大学段階―日本の男子は大学進学率は高くないものの、卒業率は高い。大学進学者の中でSTEM系へ行く人の多さは平均的。結果、当該年齢人口に占めるSTEM系学位取得者の割合は高い方になる。日本の女子は卒業率が並み程度だが、STEM系へ行く人が少ないので、STEM系学位取得者の割合は先進諸国で最低クラスになる
• 大学院―日本は修士課程の卒業率が平均以下。結果、STEM系での修士号取得者の割合も平均程度に落ち込む、女性は大学院修了率もSTEM系への進学率も低いので、STEM系での修士号取得率が先進諸国で最低
• 米国ではスキル偏向型の技術成長の進展で、大卒と大学院卒の賃金格差も拡大している。修士レベルのSTEM系人材の不足は経済成長の足かせになる可能性が高い&男女の賃金格差も縮小しづらい


日本でSTEM系人材を増やすためにできること

• 高校の文理選択と文部科学省の許認可行政がキーボトルネック
• 成績は進路選択で大きな要因となる。女子のSTEM系成績改善が必要。成長思考を重視した理数系教育や、少人数でインタラクティブな教育を導入することで克服できる可能性がある。
• 教員養成にも働きかけが必要。教員養成校の入試で理科・数学が必須科目ではないのは問題。女性の高校教員の割合が30%程度と、先進国では断トツで低い→https://synodos.jp/education/633/5
• 社会におけるジェンダーステレオタイプが強いと、女子は教育、特に理数系から逃げてしまう。また、理数系科目を学んで就職した後に、その職業をenjoy出来るイメージが湧かないと、これも女子のSTEM離れを引き起こす。社会の在り方と、企業の在り方の双方が問われる。
• ジェンダーバイアスが生み出される始めの一歩は家庭から。田舎に行けばまだまだ根強く見られる、女の子に教育はいらない、理系は男子、というのを解消していく必要がある。
・STEM系へ進学する女子向けの奨学金や女子工業大学の設立も手かもしれない。

サルタック・シクシャは、ネパールの不利な環境にある子供達にエビデンスに基づいた良質な教育を届けるために活動していて、現在は学校閉鎖中の子供達の学びを止めないよう支援を行っています。100円のサポートで1冊の本を子供達に届ける事ができます。どうぞよろしくお願いします。